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捜鷹記  作者: 檻の熊さん
16章

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雨の降る道、鴨のいる道

ここからしばらく「長い」のです。

 ステロイド筋症(ステロイドミオパチー)というのは、ステロイドの使用によって始まる筋力の低下など、筋肉のトラブルを言います。私の場合、原病(げんびょう)すなわち元となった病気が皮膚筋炎ですから、そっちのトラブルでも腕が重くなったりしゃがみ立ち(しゃがみだち)が下手になったりします。この異常は患者にも医師にも区別がつかないものであるらしく、医師は血液検査で調べた炎症系のパラメーターを監視することで、再燃の指標とします。この中にフェリチンという物があるのですが、私の場合、半年以上の間1200~1800ng/mL台くらいをウロウロしておりまして、この数値が「危険である」ということで何度も入院を勧められたのです。

――――――このくらいの数値であっても、鷹狩は出来たぞ。

 むしろ猟期の間の方が数値が下がっていたのはどういう事なのか、検査所によって数値に高低があり基準値が違うとか、色々疑問はありますが、ネットで探してみた信憑性に欠ける数値は、私の1/3くらいの数値の方たちの5年生存率が40%に届かないくらいと、割とシビアです。10人いたら3人くらいなら生き残っているとか、5人だったら気が付くと1人になっていたとか、そういう事ですね。理屈だけなら、私は退院後半年した頃、真砂(まさご)を失った頃に死んでいなければならなかったらしい事もうかがえます。いいえ、私、「()()()()()()()()()()()」ので、死んでいる暇なんかありませんでしたよ。生存期間は明記されておりませんでしたが、だいたい今の半分以下くらいまで数値が下がれば、当分の間「安全域」まで逃げる事が出来たという事になるらしいです。もちろん、全く下がる様子がありません。

 私の場合、抗MDA5抗体の抗体価は急性間質性肺炎で入院した当初index値が1,000か2,000を超えていたらしいのですが、渡された検査結果の中にその数値が書かれたものだけが残っておりません。酸欠で死にかけていたときに、口頭で聞かされた話なので、ちょっと怪しいんです。それでも十分に高値なんですが、残っている数値の書かれた検査結果によると、その2ヵ月後には()()()()800の700台、その後は300~400くらいを横ばいになるまでズドンと落ちて安定しました。仕方がないのですが、病院を変わった関係で分からなくなってしまったのです。いえ、あまりにも高値で、フェリチンの減少の話をしているんだと勘違いした医師が居た程度に高い値だったのです。とはいえ、こういう落ち方をする患者は、良い時は良いらしいのです。そんなこんなで、気が付けば入院から1年が経ちましたから残りは4年くらいのつもりでおります。私の場合、「還暦(かんれき)を目指して生きてみよう」というのは、具体的な数値目標になりました。


 「ぐだぐだと、何を回り道みたいに書き続けているんだ?」と思ったかもしれませんが、まあその、2週間ほど待たされていた間、消化器内科を再診するまでの間ですね。こんな事をしながら考えながら、過ごしておりました。どんよりと陰鬱な雨天、鷹を飛ばせずに放り餌にした朝、昼からの外出、かつてのオオキンケイギク街道、何だかニョキニョキと伸びている謎植物たちの()()()、渇水を洗い流す勢いの雨量、まだ残っているオオバンたち、久し振りに水田地帯に現れた猟期よりも見かける鴨の群れ、静かな時間、道々そんな感じで、病院です。

 物語ならば、医師の登場シーンは大事ですから、受診した医師の人相風体(にんそうふうてい)を「風采(ふうさい)の上がらない中、瞳にだけは奇妙な怜悧さをうかがわせる」とか、何か格好良く描写してみせたりするんでしょうが、私が診察を受けた人たちは凡人ばかりです。その辺に居る普通の人たち、あえて言うならモブです。特別なんのドラマもありませんで、「じゃあ、この日に予約入れておきますので」で、終了です。いえ、4()8()()()なんですがね。()()()()切除してもらう事になりました。理由は、「癌化のリスクがあるから」だそうです。もちろん、病理検査は行うことになりました。

 つまり、ニンゲンの病院とはこんな感じで、()()()()()()()ペースで仕事が消化されます。私は大学病院に入院した際に26日という異例の短さで退院してまいりましたが、「検査を消化する事が出来てしまった」のが、その理由でした。入院して1週間ほどで、当時の私は内視鏡関係の検査を全て済ませてしまいましたが、実際にそういう説明を受けたのですが、「3ヵ月くらい入院しているのが普通だ」というくらい、諸々が終わるのに時間がかかるのです。

挿絵(By みてみん)

渇水は大変でしたね。ではみなさん、アテブレーベ・オブリガード。


参考文献

多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025, 診断と治療社,2025

←とうとう買っちまった.ガイドラインであってマニュアルではありません.「詳しいところはそこに書いている参考文献を読め」というスタイルの,そういう本があるんですが,ぶっちゃけ詐欺みたいに思う人もいる本です.これ1冊では治療はまかなえません.「ここから」色々と勉強するための本です.


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