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老いゆく聖竜

 地底人一族は、南方の国の密林地帯の民らしい。地下に都市を造り、そこで生活を送っている一族だ。


 陽の光を浴びない為に肌は異常に白い。暗闇の生活の為に、視力は退化して目は見えない。


 だが、心眼と呼ばれる能力が備わっており、目が見えなくとも気配や音を感じ、健常者と変わらぬ動作が可能だと言う。


 滅多に地上に姿を現す事が無いらしい。では何故聖竜を追い、この国まて来たのか。


「南方の国と我が国は同盟関係にあります。南方の国より警告が寄せられたのです。地底人一族が世界の支配を目論み動き出したと」


 ユリサの話はいよいよきな臭くなって来た。イバトとクレアは口をポカンと開けながら聞いていた。


 南方の国には聖竜の住処と伝えられる聖なる森と呼ばれる所があるらしい。コルカも同じ事を言っていた。


「地底人一族がその伝説を信じ、聖竜を血眼になって探していたそうです。目的は聖竜の力を武器として利用する為です」


 俺はコルカの話を思い出した。コルカが聖なる森で聖竜と出会った時、側には同じ四手一族の男が死に瀕していたと。


 まさか。その四手一族の男は地底人一族に殺られたのか?


「······コルカさん、と言うお名前でしたね?四手一族は聖竜の守護者と伝説にあるそうです。各地の目撃情報には大蛇を連れた魔族は四本腕との情報もありました。貴方が連れているのは大蛇なのですか?」


 ユリサの質問に、コルカは上部二本の腕を組みながら押し黙る。


「コルカさん。事は世界の破滅に関わってくる事です。真実を仰って下さい」


 ユリサの再度の要請に、コルカは慎重に口を開く。


「お前の国は聖竜をどうするつもりだ?まさか動物園にでも入れる気か?」


 コルカの鋭い指摘に、ユリサは一層苦しそうな表情になった。


「······正直に申します。我が国は聖竜を兵器として利用するつもりです」


 ユリサの返答に、俺はどこか現実味の無い錯覚に陥った。正直頭がついて行かない。さっき迄、畑荒らしの犯人を探していただけだった。


 それが突然世界の破滅の危機と言われても質の悪い冗談にしか聞こえなかった。だが、俺の頭は自分の意志とは無関係に冷静に判断を下す。


「······コルカ。ユリサ達はこの国の最大の武力を抱える軍隊だ。逆らう事など出来ない。知っている事を教えてくれ」


 俺は努めて温和な口調で四手一族の男に話しかける。コルカは俺を一瞥すると、下部の二本の腕も組み始めた。


「······付いて来い」


 コルカに促されユリサは洞窟内に足を踏み入れた。俺達もその後に続く。


「······これが聖竜!?」


 身体を巻き眠る白い竜に、ユリサは両手を口に当て感嘆の声を漏らした。たが、俺は竜の体を見て妙に思った。


 この竜、前に見た時より小さくなっていないだろうか?


「この聖竜はもう老いた竜だ。ゆっくりと。だが確実に死に向かっている」


 コルカの言葉に、俺達は一斉に四手一族の男を見た。


「聖竜はその生命力と体の大きさが比例する。この聖竜は日々弱っている。体も徐々に縮まっている」


 老いゆく聖竜を語るコルカの両眼は、どこか憂愁を含んでいるように見えた。






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