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モナコの神託

 仕事を終えた翌朝、俺は宿を出て軽く散歩をしていた。朝一番でこうして歩きながら、今日の自分の体調を確認する。


 冒険者と言う危険な仕事は、こうした小さい事の積み重ねが、いざと言う時に差として表れる。


 そんな積み重ねを知らないイバトとクレアはまだ夢の中だ。幸い体調に問題は無いようだ。


 街を半周し、そろそろ戻らないとうるさいガキ達が腹が減ったと不平を言う頃だ。その時、俺の耳に聞き覚えのある声が入ってきた。


「今、神託が降りました!あなたの無くした銀の手鏡は、タンスの後ろに落ちているでしょう」


「まあ。タンスの後ろに?帰ったら見てみるわ」


 ······俺の視界に、昨日喜劇のような追走劇を繰り広げた連中が映った。背の高い木の下でモナコが椅子に座り、中年女性の前で大仰に手をかざしていた。


「さあ。的中率抜群の占いは如何ですか?たった銅貨二十枚ですよー」


 ホケット少年が街を行き交う人々に声をかける。ホケットの肩に乗っている小龍が珍しいのか、人だかりが出来ていた。


 その様子をクロシードが偉そうな態度で眺めていた。顔のあちこちにあるひっかき傷は小龍にやられたのだろう。


 小龍の客寄せ効果があったのか、モナコの占いは盛況だった。客の波が引いていき、稼いだ金を何もしていないクロシードが集め、何処かに走って行った。


 恐らく食料を買いに行ったのだろう。ホケットもそれに追随し、モナコは疲れた様子で自分の肩を叩いていた。


 俺はモナコに近づき、疑問を口にした。


「君は何で、あんなろくでなしに従っているんだ?」


 昨日争った相手からの突然の質問に、モナコは驚いた表情をした。


「え?あ、わ、私は元々クロシード様の一族に仕える家系ですから」


 一族か。あの頭が悪そうな男が家の財を食い潰した。容易にそう想像出来た。住む家も失い、唯一従ったのがモナコと言う訳か。


「君は神託と言っているが、本当にそんな能力があるのか?」


 もしそれが虚言なら、今日占いをして貰った客達は大挙して苦情を言ってくるだろう。


「はい。私の家系は代々、神託を操る能力があります」


 モナコは黄色い長髪をかきあげ、自信に満ちた表情で答えた。その割には、クロシードが役立たずと言っていたが?


「クロシード様には、不幸になるような神託を告げています。私はクロシード様が苦労するお姿を見るのが何より好きなんです。うふふふ」


 モナコの歪んだ笑顔に、俺は背中に冷たい汗が流れた。そう言えばこの女、クロシードに杖で叩かれ、嬉しそうにしていたな。


 や、やはりこいつ等に関わっては駄目だ。俺はそう考え、踵を返した。


「あの。昨日ご迷惑をおかけしたので、無料でお教えしますが。貴方と一緒にいた二人の子供と早く別れた方がいいですよ」


 モナコの言葉に、俺は不覚にも足を止めてしまった。


「あの二人と居ると、いずれ貴方に大きな災厄が降りかかります」


 俺は一度だけモナコを振り返った。その時の彼女は、形容し難い不思議な空気をまとっていた。


 




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