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盗人の末路

 街に帰還した俺達は、冒険者職業安定所に依頼品を届けた。受付けで事務処理の後、無事に報酬が支払われた。


 その時、受付けに眼鏡をかけた老人が現れた。タイミング良く、俺達の依頼品の受取人だったらしい。


 眼鏡の老人は俺達に礼を述べ、早速木箱の蓋を開ける。中身が何か興味津々だったイバトとクレアが食い入るように見守る。


「······それ、卵?」


 クレアが間の抜けた声を出した。老人が木箱から取り出したのは、子供の頭と同じくらいの大きさの卵だった。


「これは聖龍の卵と言われておってな。ワシはそれを研究しておる学者なんじゃ」


 不思議がるイバトとクレアに、老人は親切に説明してくれた。


「······なる程。聖龍の卵か。それは高く売れそうだな」


 聞き覚えのある声が、突然老人の背後から聞こえた。黒いコートを着た長身の男が、老人から卵を奪い取った。


「ふはははっ!勝負は最後の最後で勝てば良いのだ!さらばだ愚か者共め!」


 クロシードはあっという間に冒職安の扉を開け出て行った。あの馬鹿魔族!まだ諦めて無かったのか!?


 俺達も続いて扉を開けて外に出る。クロシードの隣には、モナコがホケットの手を引き並んで走っていた。


 俺はイバトに追跡を命じたが、イバトは不思議そうに俺を見る。


「なんでエリクのおっさん?依頼は終わったし、あんな卵、もう関係ないじゃん」


 駄目だこのガキ!完全に勇者道から外れているぞ。俺はクレアに足止め出来る呪文が無いか問い質す。


「え、ええと。衝撃波の呪文が使えたような、使えなかったような?」


「いいからやれ!クレア!」


「は、はいい!」


 クレアが魔法の杖を振りかざし、その直線上に土煙が舞った。これは衝撃波の呪文!使えるじゃないかクレア!


 だが、その衝撃波は向きを変え、関係ない通行人を次々となぎ倒していった。じゅ、呪文の照準も制御出来ないのか?このポンコツ魔法使い!?


「あ、コケたよアイツ」


 俺がポンコツ魔法使いに失望していると、イバトの乾いた声が聞こえた。前を見ると、卵を抱えていたクロシードが倒れていた。


「い、いかん!卵が割れておる!」


 俺の隣で、学者老人が深刻そうな声を出した。俺とイバト、クレアは間抜けなクロシードの横に転がった卵を凝視する。


 卵は確かに割れており、中から何か小さい物が出て来た。


「ま、まずい!聖龍の小龍が!」


 学者老人が再び絶叫する。ここからだと小さいトカゲに見えるが、小龍はクロシード、の顔を見た後、モナコ、ホケットの順に顔を見ていた。


「なんて事じゃ!小龍は産まれて最初に見た者を······」


 学者老人の声が震えている。最初に見た者を親と信じ込むって奴か?


「ぎゃああっ!!」


 突然、クロシードの悲鳴が聞こえた。気付くと小龍がクロシードの足に噛み付いていた。


 小龍はその後モナコの胸に飛び込み頬ずりし、更にその後ホケットの頬をずっと舐めている。な、なんだこの光景は?


「聖龍の小龍は、産まれて最初に見た者を不倶戴天の敵とし。二人目に見た者を親とし。三人目に見た者を恋人として見るのじゃ」


 学者老人の言葉に、俺達は言葉を失った。


「あのクロシードっておっさん。本当に馬鹿だね」


 イバトの容赦無い言葉に、俺とクレアは心から同意した。夕焼けが雲の中に隠れる中、街の中で愚かな男の悲痛な声がこだましていた。

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