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誘拐された少年

 必死な形相で走るモナコの後ろから、何かが地を這うように追いかけてくる。俺は目を細めその物体を確認すると、思わず声を荒げてしまった。


「イバト!クレア!走れ!羽根百足が来るぞ!」


 銅化級魔物、羽根百足。犬くらいのサイズの百足に、飛べもしないのに羽根が生えている魔物だ。


 攻撃力はさほど脅威では無いが、羽根から出る鱗粉に触れると、耐え難い痒みが全身に発症し、それが一週間続く。


 下手に攻撃を加えよう物なら、確実に鱗粉を食らってしまう。俺の説明を受けると、イバト、クレア、そしてクロシード迄も素直に逃げ始めた。


 こうして俺達三人の人間と三人の魔族は、横一線に並び羽根百足から必死で遁走した。


 どれ位走っただろうか。精も根も尽きた頃、ようやく羽根百足を振り切った事を確認した。


 気付くとクロシード、モナコ、ホケットも仰向けになって力を尽きていた。イバトは見動き一つ出来ないクロシードから、依頼品の木箱を労せず奪還する。


「ホケットと言ったか少年?もし君がこの連中に誘拐されたのなら、俺達と一緒に来るか?」


 俺はモナコの隣で倒れている少年に声をかけた。もし誘拐されたのなら、街の憲兵に少年を引き渡す。


 これは冒険者として、最低限の義務だった。


「ありがとうおじさん。でも、僕が居なくなると、モナコとクロシードが困るんだ」


「どう言う事だ少年?」


 俺の疑問に、ホケットは順序よく説明していく。ホケットはある武装集団の首領の息子らしい。


 ホケットが伝説の勇者だと言うモナコの神託を信じ、クロシードはそのホケットを誘拐した。


 世界の何処かに勇者や魔王の資質を持つ者を育成している組織があり、クロシードはその組織にホケットを高く売りつけるつもりだったのだ。


 だがホケットは普通の人間だった。クロシードとモナコは武装集団から狙われる身となり、ホケットを放り出したくとも出来なかった。


 武装集団に見つかった時、ホケットを人質にする為だ。そんな邪な考えを持つクロシードから逃げる機会を、何故自ら捨てるのか?


「······うん。モナコとクロシード。頭が悪すぎてなんか放っておけないんだ」


 ホケットは上半身を起こし、地にへばりついているモナコとクロシードを見た。俺は汗を拭いながら、ホケットなりに旅をする内に思う所が出来たのだろうと考えた。


 俺はホケットに銀貨三枚を渡し、これで飢えを凌ぐよう伝えた。ホケットは笑顔で礼儀正しく礼を述べた。


 俺達三人は、再び街に向かって進み始めた。


「エリクのおっさん。何であいつ等に施しをするの?そんなの一時凌ぎで、ちゃんと働かないと何の解決にもならないじゃん」


 イバトが一度後ろを振り返り、不満そうな顔で俺に抗議する。


「イバト。お前の言う事は正しい。だが、俺達は情って厄介な物を持っている。あんな少年が自分を誘拐した連中を見捨て無いと言っているんだ。多少の援助をしても罰は当たらんさ」


 罰と言う言葉を聞いて、イバトは表情を歪めた。


「罰って何だよ?エリクのおっさん。もしかして神様の事を言ってんの?神様なんて人と魔族が造りだした幻想だよ。そんな存在、初めからいやしないよ」


 イバトの言葉に、俺は一瞬驚いた。十五歳の少年が、神の存在を否定したのだ。以前から感じていたイバトの他人に対しての冷たさ。


 そして神の存在を否定するこの言葉。イバト家族は住んでいた村で疎まれ、人里離れた場所で暮らしていたと言った。


 それが原因で他人に対して不信感を持つようになったのだろうか?そんな事を考えている内に、太陽は西に傾き始めた。


 クレアが街を囲う壁が見えたと指さした。俺達は無事に、依頼品を届けられそうだった。


 


 

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