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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
3章 とある勇者編
74/81

生命至上主義

力が抜けて崩れ落ちた魔王の体を地面に当たる寸前に抱きとめて支える、女の子を地べたに着けるのは心苦しいがこのまま持ち続けているのもあれなのでとりあえず座らせる。

こうして改めて見るととても戦場に立つような子には見えないな。身長はいいとこ155かそこら、眠って脱力している顔はさっきまでの威厳溢れる感じで割り増しで見えていた時よりも2,3歳ほど若く見える。

強かったか、と聞かれるとまあうん、子供にしてはって感じだったけど……。ウルやヴィラのような天然での化け物クラスって程じゃないし、後半、特にあの闇属性魔法の術式のの乱雑さはぶっちゃけ魔力の無駄遣いって言っていいレベルだし戦い慣れているように思えたけど、実際は良い師がいただけなのかな。

まあ努力したのは伝わったけど、はっきり言って足りてないよね時間が。多分修行している期間は俺と同じくらいだろうし才能面はぼろ負けだろうけど、教わる人の実力に圧倒的な差がありすぎたな。命属性を使わなくても、魔法と気が使えれば俺一人で勝てた気がする。

まあそんなことは置いておいて、後始末をどうしようかという問題がある。というかまあ、この後言われるセリフは何となく予想がついている。勇者は悪い魔王を倒してめでたしめでたし、何かベッタベタな展開で進んでるけどまあその物語で言う倒すっていったら大体イメージされるのは……。

「じゃあ殺そうか」

ですよねー。一ミリも予想に反しなかったよ、恨みをぶつけるーとか言って拷問とかし出さないだけまだ温情か?こうなるだろうことが容易に予測できたから魔法は一切使いたくなかったんだよ。

「ちょっと落ち着こ?流石にこんな子どもを殺すのに心痛まないの?流石に速攻で殺すって判断になるのは軽率に過ぎるんじゃない?」

「魔王の首を取ったと実物持って公表するのが一番手っ取り早くこの戦争を終わらせる方法なんだよミカ君。確かに何も思わないわけじゃないけど人間の平和のためにはこれは仕方のない犠牲なんだ」

ここまで予想通りだと寧ろ引くよ?言うと思ったよ、人間の平和のために、だとか必要な犠牲なんだ、とか。思いたくなかったんだけどなあ、彼らが俺が思いつく程度の軽い台詞を吐くなんて。

残念だが、ここまで思考が凝り固まっていると言葉で説得するのは難しいだろう。理解力がないだとかそういう話じゃなく、理解しようと耳を傾ける努力すらしていない。これじゃあどれだけ理にかなった言葉だろうと彼らには一ミリも響かないだろうな。

何より、生命至上主義者としてこんなにもあっさり命を失わせる判断は正直イラッとした。もしかしたら優しい言葉だけで解決できるかもしれないけど、ンなこと知らん。実感としてこういうのは駄目だと学ぶべきだ。

「なら俺が敵に回ろうか。このままこの子を殺そうというのなら俺を倒してからにしろ、ってやつだ」

魔王を背後に刀を構えて俺はそう言った。


「……本気で言ってるの、ミカ君」

「もちろん。じゃなきゃ君らに刀を向けたりはしないよ、マジのガチの本気で君らを叩きのめしてでもこの子を殺させるようなことはしないよ。今までの君らとの関係性とか一切合切気にせず殴りに行くからよろしくね」

できるだけアルカイックスマイルを維持しながら努めて冷淡な声音で喋る。この場でただ俺が自分の主張を通すために強がっている、なんて勘違いをされては困る。俺は薄っぺらかろうと覚悟をもって行動しているんだ。

「やめてよそんな馬鹿な事、何で君が魔王を守るのさ。それに三対一なんて無謀な事君がするわけないじゃないか」

「逆にこっちが言いたいね、やめてよそんな馬鹿な事言うの。冷静に頭を使いな、この状況、この間合い、実力差を考えて今どちらが不利だと言えるのか」

ただでさえ俺に近距離戦で追いつくのは三人じゃ絶対無理なんだ、更には術式を構築させる間もなくこの間合いなら全員まとめて意識を落とせるし、何よりもさっきの魔王との戦いで三人とも魔力はからっけつだ。もはやこの状況で負ける要素の方が少ない。

魔王戦で不休を連打させられたり足の骨でもやってたら初めてワンチャンってぐらい根本的に戦力差があるんだ、強いて言えばあの能力は未知数だけど魔法による削り合いならともかく反応速度と膂力がものを言う物理戦闘では碌に意味のないものだろう。

単純な破壊力だのエネルギーだのという話なら強力な魔法なら実現できるかもしれないが、単位面積当たりの圧力と効率なら物理を上回るのはどうやったって不可能だ。剣や槍といった面積の小さく威力の圧縮された攻撃ならあの防御もぶち破れるだろう。

「っ!それでも何としてでも俺たちは」


「やめとけやめとけ、お前らじゃどうやったってそこの銀髪には勝てねえよ人間ども。ここで更に俺が追加されたら勝ち目なんてもはやマイナスになるってわけだ」

突然軽い声がレイ君の言葉に割り込む。

「ジオさん」

「よう人間ども昨日ぶりだな、元気そうで残念だ。王様が負けちゃったのは予想内だったけど、ここまであっさりされてると中々辛いな。やっぱ数の差がデカかったかー」

マズいな、この状況でジオさんを相手にレイ君達を守り切るのはかなりキツイ。どれだけ体が治ってるのか分かんないけど、言い方あれだが足手まとい二人がいると勇者と俺でも流石に無理。

「ん?安心しろ銀髪、俺の目的は王様の命を守ることだ。できるだけそこの勇者とかは殺さないように気を付けるぐらいはしてやるよ、お前らの仲間割れを漁夫る気は毛頭ない。寧ろお前との目的と合致していると言える、何なら共闘しようぜ?そこのやつら一緒にしばこ?」

こっちの内心を把握されてんのはムズムズするが、確かにそうだ。ジオさんの言う事を信じるのならジオさんの提案に乗った方が互いに利がある。

部外者である俺にとって人間が勝とうが魔族が勝とうがどっちでもいい。そのことに関して口出し始めるとウルやヴィラのように別種族のことを全て否定することになりかねない、うちはそういうセンシティブな問題は一切気にしないようにしているのだ。

となるとジオさんとその上司である魔王に手を貸すのに何の問題がある?俺を捨てた村の老人並みに頭の固い彼らよりも、俺の信条を理解しようとしてくれたジオさん達側の方がよほど俺の好みだ。

とはいえ今の俺は師匠に薦められて彼らの助けをしてきた、師匠なら俺の判断で行動したのなら特に何も言わなさそうだけどかと言って何も言わずに勝手に裏切るのもあれだしなあ。何より彼らに対して情が無いわけじゃあないし、うーむ悩ましいところだな。

「分かった、魔王の命は狙わない。だから勘弁してくれ、そんなどっち側につこうか悩んだような顔をするのは。君がそっち側に行っちゃったらもうどうやったって勝ち目はないのはいくら俺でも分かってるよ」

おや、意外にもいきなり物分かりが良くなった。この状況で自分の不利を理解できないようなら本当に手を切っていた可能性は十二分にあったけど、冷静な頭を取り戻してくれてよかった。

命を無暗に奪わないのだというのなら特にこっちから手を切る理由も無くなったな、この後俺を騙して殺そうものならキレるが。良くも悪くも彼らの思考回路は単純だ、気軽に人を騙すようなマネはしないってことは信じてる。

「あれ、なーんだやめんの?せっかく後ちょっとでそこの銀髪を取り込めると思ったんだけどな、残念。あ、念のため言っとくけどここで俺を殺そうだのって考えるなよ頭空っぽ勇者。別種族の俺の方が自分の仲間のこと理解できているとか恥じた方がいいぞ?」

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