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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
3章 とある勇者編
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開幕、魔王戦

扉を開けるとこれまた典型的な魔王城の王の間って感じの場所だった。広く光源は周囲のロウソクだけで仄暗い、全体的に黒い素材で構成されてどこか荘厳さを感じる。

奥を見ればややデカめの玉座にザ・魔王という格好をした存在がいた。黒と赤で固められたデザインに派手さはないが見る者に威圧感を覚えさせる迫力があり、この状況においても慌てず騒がず落ち着き払った態度はなるほど王のカリスマとかいうのを感じさせる。

何よりも特に臨戦態勢に入っていないのにも関わらず自然と立ち上る魔力量、間違いなくあれが魔王だろう。だが俺が咄嗟に怯んでしまった原因はそこじゃない。

「女の、子?」

外見から得られる情報が全てではないけど、体格も顔も明らかにか弱い女子のものだ。ざっくりだが人間に換算すると十五かそこらって感じか?纏っている覇気に似合っていないにもほどがある。

強さというのは必ずしも年齢と比例するわけじゃない、種族や才能なんかによって簡単にひっくり返る。ウルが分かりやすい例だ、ウルも人間換算するとまだ十歳にもなってないのに俺は命属性を使ってもウルには歯が立たない。

だが精神的な強さに関しては経験、知識、性別などがものを言う。勿論本人の才能や性質による部分もなくはないが、基本的に年長者の方が子供よりも精神的には成熟してるし相応の風格を備えている。

そう、だからこそ違和感しかない。あんな女の子がこれだけの迫力を備えていることが。一応うちにはほとんど師匠に拾われた孤児しかいないし、壮絶な人生経験で荒んじゃった子もいるにはいるけどあれは何かそういうのとはちょっと違う気がするんだよなあ。

どちらかというとヴィラかな?年に似合わない大人っぽさで幼さを抑え込んでいるって感じだ。ヴィラと違う点と言えばあいつはあくまで貴族的、紳士的ともいえる柔らかな物腰と教養溢れる知的さを表に出しているのに対して、魔王の場合は王としての覇気とカリスマ、強者としての威圧感ってところか。

ヴィラの場合はあくまで受けた教育の結果でしかなくただ大人びているの範疇だったけど、あの子は違う、そもそも覇気やらなんやらなんてものは強ければ出るようなものじゃない。支配者としての器というなら、カリスマならば生まれつきのものもあるだろう。だが強者としてのそれは求めなければ手に入れられない。

そういうのは努力によって強くなった者が他者を竦ませようとする意志を持って初めて出せる。ウルやヴィラのように生まれつき圧倒的に強い子はああいうのは出しづらい、だって出す意味が無いから。

ただ高いスペックを持っているだけじゃ駄目だ、自らの『強さ』を理解し制御しそれを周囲を怯ませるために放出する。言うなれば自分の『強さ』の魅せ方というものを理解していなければならない、一種の技術と言える。

男女差別というわけではないが普通女の子が身に着ける技術じゃないだろ、どういう経緯や想いで今こうなってるのかは知らんが生まれつき強大な力を持っている奴の扱いはどこでも変わらないのかな……。

魔王の予想外の正体に虚を突かれて呆然としていると、魔王は玉座から立ち上がりゆっくりとこちらに歩を進めた。一歩一歩わざとコツコツと足音を響かせながら歩むさまはなるほど王として堂に入ったものだった。

「ようこそ勇者御一行、遥々魔界の荒野を超え、二人を退けてここまで来れたことは称賛してあげましょう」

ぱちぱちと可愛らしく手を叩きながら上から目線でそういう魔王。どこか芝居じみた言い方と尊大な態度は師匠を思い起こすけど、師匠の場合割とあれ素で楽しんでやってるけどこの子はなんだかな~。

「まあある意味魔王としてのお約束として、仲間にならない?世界の半分、四人だから一人につき八分の一を与えてあげるよ」

「ふざけるな、今日ここでお前を倒して俺たちは人間の平穏を取り戻す!」

三文劇か何かかな?え、魔王の外見に違和感を覚えているの俺だけ?ちょっと脳死過ぎないレイ君、事前に知っていたのかもしれないけど一切触れないのはどうかと思うよ?すっごく真剣な表情ですっごく浅いことを言うレイ君に心の中でそうツッコミをいれる。

この空間にはアルコールでもあんじゃねえの、ってくらいに流れに酔ったようなベッタベタな展開に現在進行形で困惑中である。俺が十五の時でももうちょっと思考力はあったと思うんだが、これって師匠の教えが良かったせいなのかそれとも単純に彼らがおかしいのか分かりづらいところだよなあ。

「そう、それは残念。では戦いましょうか」

そう言うと魔王の魔力が膨れ上がっていく。総量としては、フリエさんよりは少ないけどヴィラと同等ぐらいか。師匠直伝の術式使ってるヴィラに比べれば全然マシだろうけど、流石にちょっとこの量は予想外だ。

こんな空気の中で説得がどうとか言ってる場合じゃないな。心苦しいけどしゃーない、一発殴って止めるか。全く嫌な役目だ。

「『土くれの軍勢(ソイルアーミー)』」

魔王が杖で地面を突くとその周囲から次々とゴーレムが生み出されてくる。ひーふーみーよ、合計で八体か。大きさはここに来るまでに何度も戦ったものとそう大差はないけどスペースの限られる屋内であんなデカ物がいくつもあるのはちょっと面倒くさいな。

まあとりあえずバラしていけばいいか、物理でどうにかできる以上堅実に減らしていけば繰り返すほどにこっちが有利になる。そう思ってゴーレム集団に向かっていきまず一体の両足を速攻で斬り飛ばす、が残りの七体は俺に構うことな通り過ぎた。

「なっ、まさか!」

「前衛を抑えている間に後衛を叩く、戦略として基本のきでしょ?」

まったくもってその通り、四対一だからって油断してた!あれだけの魔力なら多少の数の差なんてゴーレムを作れば簡単にひっくり返せるしそれを使っての戦略もただの力押しじゃない、なるほど王様として兵法の一つや二つ収めてるってことか。

すぐさま反転して戻ろうとするけどご丁寧に三体を足止めとしてこちらを向いて待機していた。何って嫌らしい、この量だと即座に無力化できたとしても残骸が邪魔になる。

平面な床だからこそ簡単に加速がつき魔法型には不利と言えるがデコボコになればスピードは落ちるし空中での移動も必然的に増える。足元のアドバンテージがひっくり返されてしまう。

「大丈夫!ミカ君は魔王を止めて!」

「っ!分かった、死なないでね!」

ハッキリ言って心配だ。別に彼らを足手まといとして見ているわけじゃないけど、いまからあれを吹っ飛ばせる火力を叩き出せるのか、と言われると怪しいと言わざるを得ない。

だが信じるしかない、これ以上こいつらに構っていては続けて魔法を撃たれてドンドンジリ貧になっていく。不安だが彼らを信じてサッサと魔王を叩く以外に選択肢はない。俺は身体を翻して前を向き魔王に向かって駆け出した。

「『雷の砲撃(サンダーシェリング)』」

「ッチ、こんの!」

杖をこちらに向けてバチバチとスパークが迸っているのを見て咄嗟に持っていた刀をぶん投げて杖に当てる。その直後ブリューナク程じゃなくても太い雷の束が俺達を僅かに逸れて城の壁を貫いた。

こいつ、ゴーレムで足止めしている最中に俺ごと高火力でレイ君達を吹っ飛ばそうとしやがった。俺の場合は位置関係で照準が見やすいし身体能力的にも避けやすいだろうけどレイ君達はゴーレムに気を取られて撃たれた事にも気づかずに消し飛んでいただろう。自分が一人であることを徹底的に有効活用して広範囲、高威力の魔法を連発するつもりのようだ。

「あらら、ずらされちゃった残念。まあこれで決まってもあっけなさすぎるし別にいいけどね」

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