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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
3章 とある勇者編
69/81

目的

(ミカ視点)

「えっとその、大丈夫ミカ君?」

ジオさんを縛って力尽きたのでうつ伏せになっていたらいつの間に戦いが終わっていたのかレイ君達が来てそう言った。やっぱ間抜けな格好に見えるのか心配よりも呆れのこもった声だった。

「あー生きてはいます。ただ足がボロッボロでして立てそうにはないですね、というか立ちたくない。ただ今日一日休めればある程度回復できるとは思うので心配ご無用です」

実際のところ命属性魔法と気を使ってフルで治癒したから今の段階で立てるどころか歩けそうではあるけど、その分生命力も魔力もゴリゴリに消費しているから体がだるい。例えるなら血を抜かれた後に全力で遠泳したような感じ、なんかもう疲れとかのラインを超えたレベルの脱力感だ。

「うーん、勝ってくれたのはもう望んでもない戦果なんだけどね。なんだろうねこの締まらない感じ、というか本当よく勝てたね」

「ちょっと博打を打ちまして、切り札を一枚使いました。披露する機会がないことを祈ってます。そちらも全員無事で何よりです」

そう俺が言うとレイ君が表情を暗くする。

「ごめんミカ君、ギャンを逃がしちゃった。あと一歩ってところで仕留めきれなかった、深手ではあると思うけど魔王との戦いで出てこられる可能性は否定できない」

うんどーでもいい。いやどうでもよくはないけど、さりとてそこまで気に病むことでもないと思うんだけどなあ。骨をおりました~とか言われた方がよほど深刻だった。

「気にせんでもいいよ、命があって何よりだ。そもそもジオさんとは違って手の内が全く分からない人相手に勝てただけ十分十分」

これ言ったらマジで失礼だから言わないが、ハッキリ言って期待すらしてなかった。舐めていたってわけではないが、この間合いなら俺は三人相手でも十分戦える自信がある。そんな彼らが俺よりも強いジオさん並みの相手に勝てるとは思ってもみなかった。

それに、彼らが手を汚さなくて良かった。若い子が血に濡れるのは辛いからね、なんて師匠みたいにウザさ満点で言ってみたりして。まあ人を殺してほしくはないってのは本音だけどね。

「まあそんなことは置いておいてささっと本題に入りましょうか」


「よーう人間ども、正直忘れられてんじゃないかってドキドキしてたよ。流石の俺も野郎に縛られて(さか)るほど狂ってねえぞ?」

よく言われる話だ、戦いで一番重要なのは情報だと。まあ師匠の特訓の方針はその真逆だけど、とにかく相手の手の内が分かれば対策も立てやすい。

魔法使いタイプが厄介なのは手札が多いことがその強さの一因でもある。物理攻撃の場合、身体能力、クセ、流派などなどから次の動きを読むことができるけど魔法に関してはそれは通じない。

術式と込める魔力で極論無限の選択肢が生まれる、実際は事前の慣れとかで戦場での選択肢はそう多くはないだろうけどそれでも物理に比べて変幻自在、多様性に満ちている。どんな魔法が使えるのかを知っておくのは大きなアドバンテージになる。

城の構造を理解しておけば罠にかかる心配もなくなるし、ここで情報は手に入れておきたい。

「で、何が聞きたいんだ?殺さないと確約してくれんなら教えてやらんこともない」

絶賛命の危機とは思えない何ともふてぶてしい態度で言ってくるジオさんにレイ君の額に青筋が浮かぶ。剣の柄に手を置いて殺気を放っているが、余裕綽々と言った風に笑顔すら浮かべている。

それが強がりではなく、本当に何かしらの根拠があって自分が殺される心配をしていない気がして気になるけど、とりあえず答えてくれるっていうなら聞いておくか。

「じゃあささっと魔王の使う魔法と城の構造、あるのなら罠の配置も教えてもらえます?」

「構造ならいいよ、後で下手な絵でも描いてやるよ。罠は知らねえな、俺が知る限りはないけど王様が急遽配置している可能性もあるから間違ってても文句言うなよ。魔法に関してはよくわかんね」


あっけらかんと碌な事を話さなかったジオさんに全員呆然とする。この人、本当に状況が分かっているのか?それとも本気でほとんど知らないのか、いやそれにしたってそれ相応の態度をとるだろう。

「舐めてるんですか?仮に本当に口を割らないのだとしたら今この場で殺されるって考えつかないんですか?」

「お前は殺さないよ、絶対に。そこの勇者どもが殺そうとしてもお前は止めるね間違いなく」

「――ッ!?」

何だこの人、俺が絶対に殺さないと確信を持っている。いや実際殺す気なんてこれっぽっちもないからこそ驚いた、この人はどこで勘づいたのか知らないが俺の価値観に気付いている。

殺気を出して相手を脅すコツは師匠から教わっていたんだけど、それに引っかからないなんてこの人意外と観察力すごいな。なるほどこれが自信の由来か、確かに俺じゃこの人は殺せない。

拷問とかして無理矢理引き出すにしてもそもそも痛みに慣れている兵士に拷問をやるには特別な技能がいるし、俺には噓を見抜くだけの観察眼はない。ある意味毒にも薬にもならない程度の情報は疑う必要がないだけまだマシでもある。

「はあ、分かりました。ただ魔法に関しては分からないってどういうことですか?あなたの性格上、上司の実力を確かめる程度のことはしそうですけど」

「おっ、銀髪分かってるね!野郎に心情理解されても気色悪いが、まあジジイみたいに会話の通じない変態に比べたら百倍いいわ。んで王様の魔法だっけ?教えても無駄だもん、あえて教えない優しさってやつだよ」

「はあ?」

「王様の魔力だと術式三つかそこらでジジイの魔法と同じぐらいの威力を出せるからな、そもそも定型の魔法なんて使わんよあの人。細かい魔力操作なんてしても効率度外視で高火力がポンポン飛んでくるしむしろ変に対策しない方がいいと思うぞ」

お、おう。意外とまともな理由だった、つーか普通にありがたい情報だ。対策の打ちようがない、という一見絶望的な情報だけどそういう相手だと理解しておくだけである程度の心構えはできる。常識の範囲外の相手だと分かるだけ十分だ。

「んじゃーもう帰っていい?聞きたがってたことは全部話したろ、さっさと俺を解放しろー」

何やら寝言が聞こえるが完璧に無視してレイ君達と今のうちに対魔王戦での戦術を話し合っておく。正直今までの戦術の延長ぐらいしか考えつかないだろうけど、やっぱり事前に考えておくってのは精神的に安心感がある。


ゴキッ、ゴキッ!

そうして話している最中、背後から低く鈍い音が響く。とてつもなく嫌な予感がしながら恐る恐る振り返ってみると、ジオさんの腕が蛇のようにしなやかに曲がりながら縄の縛りを外している姿があった。

「な、なんで……」

「ん?ああ、俺実は元々暗部的なあれの訓練を受けてたんよ。才能的にはピカイチだったんだけどな、忠誠心とか覚悟とかなんかそんな感じのモノが足りないんでクビになって普通の所属に移動になったのよ」

暗殺者とかには関節を外して身軽にするような技能があるらしい、要するにそういうことだろう。殺されない自身は俺の性格だけじゃなかったか、あの程度の拘束は彼にとってないも同然ってことか。

「まあそういうわけだ、自力で帰らせてもらうわ。安心しろ、王様との戦いに茶々入れるほど俺は野暮じゃねえんでな、思う存分戦ってやってくれ。手加減してやってくれると嬉しいよ」

そう告げてジオさんはスキップで城の方向へ戻っていく。あまりにも軽く、そして唐突な話しぶりに俺達全員呆気に取られてしまい追撃することはできなかった。

************

(ジオ視点)

いやー負けた負けた、手札はまだあったとはいえ真っ当な一騎打ちでやられたのは流石に天才の矜持が傷つくなー。まあかといってリベンジマッチとか面倒臭すぎてやる気しねーけど。

そんなことはどーでもいいや、やっぱりあの銀髪はヒトを殺せないな、それを見抜くとはやはり天才だな俺。というか実際隠す気があったのか?わざわざ魔法で作った刀の刃を潰しておくとか、自分殺したくないでーすって言っているようなもんだろ。

俺がズバッと指摘した時なんか驚いた顔してたけど、あの状況で仮に俺を倒せなかったら、と考えてなお俺を殺そうとしないなんて逆に油断を誘うアピールかと疑ったもん俺。

まああいつがどうしてンなこと考えてるのかとかは一ミリも興味がねえな、予想通り計画の役に立ちそうってことが分かったのは大きな収穫だ。これはもう将来高待遇確定といっても過言じゃねえな。

「フンフンフフ~ン♪」

思わず鼻歌を歌ってしまうほどに気分がいい。俺は天使のごとき慈悲の心を持っているからねえ、血を見なくて済みそうというのは心躍るものさ。


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