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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
3章 とある勇者編
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対決、魔王軍の双璧

(ミカ視点)

あのデカいゴーレムを倒してから更に数日、ようやく魔王の城が見えてきた。正確に言うと一面大体荒野だし上の部分は見えてはいたが、上から下までようやく全部見えた。

ここに来てから二週間弱ってところか、風景にほとんど変わり映えがなくて割ときつかったな。修行みたいに同じことを繰り返すのは比較的得意だけど、流石に飽きた。

にしても、今までとは違って岩がたっぷりあるね。今までのなーんにもない荒野だと戦略的にも果てしなく使いにくいだろうからね、多少の改良はしたってことか。

俺は五感全て働くように鍛えられているから不意打ちの心配はない、と思いたいが気は抜けない。嗅覚や聴覚では認識しにくいものは当然感知しにくい、例えば魔法による長距離高速狙撃、とか……。

「……ッ!」

そこまで思考がたどり着いた瞬間、視界内に高速で迫りくる炎球が存在するのを認識した。

氷器創成は間に合わない、レイ君達に伝える余裕はない、がまあその程度で防ぐ手段がなくなるほど俺の手札は少なくない。最近触ることもほとんどなかった鞘付きの刀で弾く。

レイ君達が驚いて色々話しかけられているが今ちょっと気にかけられる場合ではない、周囲の警戒に全力で集中を割く。

しかし、それらしいものは一切感じない。そもそも相手がどんな奴なのかも理解していないから探しづらいというのもあるんだけど、シンプルな話匂い消しを使われてたりジッと息を潜ませられてたら分からないからな。

ただこの感じ、イヤーな感じだなあ。全く違和感がない、というか何もない状態との違いがない。いや別に透明化みたいな能力がある、みたいな話じゃないだろう、俺の感知範囲内にいない可能性があるってことだ。

気を使わない今の俺のそれは大体一キロ前後、その中にいないってことは最低一キロ以上離れたところから攻撃が届くってことだ。

威力自体は大したことないし、何より防御面では無限に使えるレイ君の能力があるから不意打ちでやられなかった以上消耗戦で負け筋は薄いのだが、問題は攻撃されたという点だ。

遠距離狙撃できるだけの魔力量、精度、効率的な術式、そして俺達は今監視されているという事実は重い。一瞬でも気を抜いて全魔力を使って爆撃でもされれば大ダメージは避けられない、そんな状態でジオさんがくれば100パー詰む。

っとに嫌らしい一手だな。このまま周囲を警戒させられるだけでこっちは疲労困憊かつここ一帯を抜けるだけで何日もかけられるだろう、そんな状態で魔王を倒すなんて夢のまた夢だ。

そう思っていたんだが、誰かがあまりにも無造作に俺の感知範囲に入りこっちに向かってきた。いや、この匂いは……。

「よーう人間ども。久しぶり、てほどでもないな。元気そうで残念だ」

案の定、ジオさんだ。何でこの有利な状態でわざわざ姿を見せたんだ?分からない、一体何が目的なんだ?

「クッ、ハハハハハ。そのサッパリ微塵も理解できませーんって顔、中々面白いな。安心しろ、別に罠にかけようってんじゃねえんだ。寧ろてめえらに僅かな希望を与えてやろうって話だぞ?」

「……そんなの信じられると思ってるのか?」

「信じないならそれでいいぜ?てめえらが自分から自滅の道を進むっていうなら、それはそれで俺らには都合がいい」

余裕綽々といった感じで答えるジオさんにレイ君は二の句が継げなくなる。こっちがあのままの戦法をとられ続けたらこっちに勝ち目はないと分かっているからだ。


「おうおう、物分かりが良さそうで結構結構。ここで魔族の提案なんて聞けるか~なんてほざいていたら確実にお前らは死んでいたからな」

軽い冗談じみた言い方だが全て事実だ。仮に今この瞬間俺たちが下手な口を叩いたら、この人は即座に首を取りに来るだろう。そんな命のかかったことを軽く言えることが俺たちとはくぐった修羅場の数が違うことの何よりの証左だった。

それは単純な実力だけじゃない。何というかその、そう底知れなさ。師匠からも感じる、全然手札を晒していないことからくるであろう余裕のようなもの、それをジオさんからも感じる。

「まあ仰々しく言ったがそう大した話じゃねえよ?俺がこの銀髪とバトッってる間、お前らはジジイの相手をしてろ、ってことだ」

?????

「俺だけがジオさんと戦う?」

「そうお前だけ」

「……何で?」

「まーちょっとした事情があるんだが、まあどうでもいいじゃん。どーせお前らに選択肢なんて残されてねーんだから」

「ッ、わざわざミカ君だけを危険に晒させるとでも?今の俺達なら四人がかりならお前だろうと確実に倒せるぞ」

「好きにすりゃいいが、それならお前ら全員も詰むことを忘れんなよ?あんまり言いたかねえがあのくそジジイはフレンドリーファイアすることに一切の躊躇いはねえからな。確実に俺を倒せようがてめえらも()()(),倒されるってことを忘れんなよ」

嫌な関係だなあ、なんてふと馬鹿げた考えが浮かんでしまう程にその言葉はあまりにも軽かった。腐っても仲間なのに仲が悪いっていう弱点を自ら語っているはずなのに、口調は子どもをあやすようなものだった。あまりにも自然過ぎて俺の感性の方がおかしいのかと思ってしまう。

「それに比べると俺を今ここで銀髪が押さえておけば、お前らはジジイを倒すために動けるから少なくともこっちは邪魔されない、ギャンブルとしては丁度いいじゃねえか。別に次のために確実に俺だけは倒しておく~なんて言うのは勝手だがジジイだけじゃなく王様も残っているのを理解してしているか?」

いやー天才は一々説明してやらないと他の奴らは考えを理解できない、つらいわー、などと呟いているジオさんだが、実際その言葉は的を射ている。ぶっちゃけ俺は部外者だから事情にそんなに詳しくはないが、俺達は魔王を倒そうとする勇者御一行だ。人間の中ではトップクラス、いや最高位といっても過言ではないだろう。そんな俺達を失った状態で魔王どころか片腕となる部下を残していては人間側には勝機はなくなるだろう。多少無茶でも何としてでも今ここで部下二人を倒しておかねばならないだろう。

まあ師匠なら一人で魔王軍を全滅させることもできそうだけど、あの人にその手の期待は無駄だろう。どこまでいっても俺と師匠はここに住む人々にとって部外者だ、俺のような未熟者が手を貸す程度ならともかく師匠が手を出せば文化も歴史も色々なものが滅茶苦茶になってしまう可能性がある。師匠もその辺りは気を付けているだろうし、そこまで酷いことにはならないだろうけど動かないべきなのは間違いない。そこに関して俺が文句を言える筋合いはない。

話が逸れたが、要するにジオさんの言う通り提案に乗るしか俺達に選択肢はない。相手の掌の上っていう状況は不安しかないが、仕方ない。

「大丈夫大丈夫、君らがそのくそジジイさんを倒すまで時間稼ぎぐらいはこなしておくよ。何なら倒しちゃえるかもしれないしね」

……はっきり言おう、これは噓だ。レイ君達にプレッシャーをかけないための噓。正確に言うと噓じゃないな、あくまで誤解させるために言い回しを変えただけだ。

あくまでも俺は時間稼ぎに徹せばいい、と勘違いさせたが本当はそんなことはない。そのくそジジイさんがどれぐらいの強さなのかはよく知らないが、ジオさんと同等と考えるとかなりの消耗は免れないだろう。

そんな時に援軍に来られても、元々そこまで近接戦闘が得意ではない彼らは瞬殺されてしまうだろう。けど、そんな事考えて駆けつけるのを避けてくれるとは思えない。

勿論心配して急いで来ようとしてくれるのは嬉しい。それは彼らの優しさでもある、未熟であると断じることは俺にはできない。

なら話は単純だ、レイ君達が来る前に俺がジオさんを倒すしかない。最低でも相討ちぐらいに持ち込まないと……。

手札を二枚は切ることを覚悟しないとな。

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