動き出す魔王軍
(ジオ視点)
「あーもう!ギガス君がやられた!」
ジジイが城を離れたんで存分にサボ、いや城周辺の警戒に集中していた最中、王様の叫び声が聞こえ急いで玉座の間に駆けつける。
「どうしました王様?ネズミかなんかでもいました?」
「勇者達のところに送ってたギガス君がやられちゃったんだよ!しかも初回で!」
「なんと、そいつは驚きだ」
ギガスゴーレム、王様の作ったゴーレムの中でも最高傑作の一つ。普通の数倍の巨体に複雑な行動をこなす高度な術式、なにより圧倒的な再生能力。量産型ではなく王様が丹精込めて作った特注品だ、やられる事自体は想定内だがまさかこうもあっさりとはなあ。
「うーん、いくら前線が心配だったからって自動操縦は舐め過ぎたかなあ?でもな~私が操作しててもどうにかできてたかな?記録見てみる限りちょっと想定外のやられ方してるんだよねえ」
「ほえー、どんな感じだったんです?派手に内側から爆破、とか?」
「浮かしてそれを跳ね上げて落っこちてドカーンバラバラ」
わーお、そりゃつまり一発であのゴーレムの再生能力を上回ったってことだ。あれの再生能力の正体は普通なら素材としては質の低い土だからこそ。確かに防御力の面では雑魚オブ雑魚、ただ破壊するだけなら大して難しくねえ。
だが体の大部分が残りさえすれば再生はできる、だからこそ王様は多少消費が大きくなろうとあれだけの巨体に設計した訳だが……。
「よーするにあの巨体に隈なく攻撃を加えられて、かつ粉々にできるぐらいの火力はあると」
「そーゆうこと、言うまでもないだろうけどボサッとしてたら吹っ飛ばされるかもってことだね。ま、そこら辺は試す前から分かりきっていたことだけどね」
そりゃそうだ、腐っても魔法に関しては人間の中でもトップの奴らが来てるんだ。これで火力すらないんだったらとっくに魔族は人間を滅ぼせている、寧ろ吹き飛ばすどころか跡形も残らず消し飛ばしたとしても特段驚かないな。
初見かつ不意打ちだったとはいえあわや俺一人に全滅させられそうになる程度に体術面ではすっからかんな奴らだ、逆にそれぐらいできて当然だろ。実際王様はできるわけだし。
「とはいえギガス君を初見突破されるとはね~、二日ぐらいは粘れると思ったんだけど。まさかこんなに早く攻略法を見出されるとは思ってもみなかったよ」
「なんか情報は得られたんです?流石にただ強い魔法が使える、だけしか分からなかったってのは勘弁願いたいんですが」
「そこは安心して。ギャン爺が帰ってきたら改めて説明するけど、彼らの状況判断能力みたいなところとかざっくりとした実力は掴めたから。それに何よりも勇者に能力を使わせられた、仲間にも説明してたし多分間違いないと思う」
そいつは朗報、一番の危険要素を早々に知れたのかなりデカいな。ありゃ本人の身体能力や魔力を全て無視してくるらしいからな、あれの対策をしないのが一番分かりやすい負け筋だったがとりあえずその心配はなくなったな。
にしても何でこんな簡単に手札を晒した?少なくともあの銀髪のガキは戦闘中でもペラペラ喋るだけの余裕と冷静さがあった、俺やジジイ相手でもないのに切り札使うようなバカな真似するか?
せめて他の魔法なりなんなりを使えばいいものを。それだけ切羽詰まった状況だったか、それともただの俺の過大評価か。
それか勇者の独断か?
今考えてみれば奴らの連携は割とゴミだった。その点だけなら俺の部下どもの方がよほど上手かったぐらいだ、前衛はあの銀髪だよりでしかなく巻き添えを気にして碌に魔法を使わず一塊になって立ち回りもクソもねえ。
勿論俺が強すぎて奴らの連携を乱しまくった、っていうのも十分あり得るがそれにしたってへぼ過ぎる。数が多いのが人間のめんどくせえところなのにその点を何一つ活かせていなかった。勇者とその仲間なのに、だ。
となると考えられるのは二つ。一つはあいつらに協調性なんて欠片もねえ魔族みてえなワンマンプレイ主義なこと。もう一つは連携の特訓なんてしたことのねえ即興パーティーなことだ。
前者の可能性はかなり低い。だって俺の動きを目で追えない程度の奴らがどうしてそこまで傲慢になれんのか逆に知りたいぐらいだ。俺は敵の間抜けさを信じて動くほどバカじゃねえ。
なら後者、やつらは極々最近あのメンバーになったってこった。具体的に言うと大方あの銀髪は他の三人に前衛が心もとないからとスカウトを受けた、とかそんなところだろ。
んまあそんな細かいことはどーでもいい、重要なのはたぶん銀髪とその他で意思の疎通なんかは取れてない可能性があるってことだ。まあ俺とジジイほどじゃないだろうがな。
あいつがどんな立場だったのかにもよるが、上手く使えば王様の真の目的に大いに役立つ可能性が……。
「おーいジオ~、もしもーし。大丈夫?いきなり真面目な顔しちゃって似合わないよ?」
おっとっと、王様から呼びかけられたことで考えるのを止める。確かに俺は天才かつ思考力に溢れているが、グダグダ長々と物を考えるのは確かに似合わなかったな。これで俺が実は視野が広く、頭のいい忠臣だとバレちまったらあまりにもカッコよ過ぎて王様が俺に惚れちまうかもしれねえ。王様のことは割と気に入ってるが女としてみると正直鼻で笑うレベルっつーか、ガキに興味なんて湧くわけって感じだからな。
「とりあえずギャン爺にはもうこっちに戻ってくるように連絡しておいたから、それまでの間警備よろしくね。私もそれまでは彼らにちょこちょこちょっかいをかけておくから」
「りょーかいです、そんじゃあ失礼します」
玉座の間を後にして長い廊下を歩く最中、さっきの続きを考え始める。
仮に奴らの関係がどれだけ浅いものだったとしても少々時間をやりすぎたな、一週間以上もあれば最低限の型ぐらいは固めてくるだろう。となると、いっそ奴らを分断した方が都合が良いか?
どーせ俺とジジイで連携なんざ欠片もできやしねえ、寧ろ積極的にフレンドリーファイアを狙ってくるかもしれねえ。あのクソジジイに背中を預けるような真似はマジで危なそうだ。
ああ、そんな分かりきっている話じゃなくて……。まあ戦闘面で関係の浅さを弱点だと認識するのはちとリスキーだな。初めて見た時はただのポンコツでしかなかったが、あの小僧も一応勇者なんだ。急成長の一つや二つしていると考えておくべきだろ。
んまあ、そんなことはどーせ王様とジジイが考えておくだろ。そこらへんの理詰めは俺には似合わん。俺は天才だからな、何でもフィーリングでできちまうせいで頭より体が早く動く方が良い結果を生み出せちまうのが辛い所だ。
問題は全く別の所、理屈じゃちと説明しづらい部分だ。俺が今考えていることはあのクソジジイにゃ絶対理解できねえし、そもそもされたいとも思わねえ。あのダイヤモンド脳みそで俺の餅のような柔らかーい思考を理解するなど天地がひっくり返ってもあり得ねえし、何よりあいつの思想からして邪魔される可能性の方が遥かに大きいだろう。
だがもし俺の勘が当たっているのだとしたら……。
「クックック、おお偉大な我らが王よ、などとほざきたくなるな」
と、柄にもない台詞を言ってしまう。まだ俺の予想が正しいかなんてはっきり分かってねえのにな。
思わず笑ってしまうほどに今の俺の思考は中々に滑稽だな。こういうの、たしか捕らぬ狸の皮算用っていうんだったか?
とりあえずはあの銀髪がどんな奴か理解しておかないと利用できるかどうかすら怪しいってのにな、マジ受ける。
「ま、今は茶菓子の一つでも見繕ってみるかな」




