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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
3章 とある勇者編
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トリック

ゴーレムの拳が無慈悲に俺にたたきつけられるその直前、いきなりその拳は砕け散った。しかもただ砕けただけではない、拳の先から肩へと衝撃が流れたかのような綺麗な砕け方だ。

それだけじゃない、破片の一つも俺のところに落ちてこない。まるで傘でもあるかのように。

レイ君の能力に関しては大方予想はついたが、今はそんな事考えている場合じゃないな。せっかくレイ君が札一個切ってくれたんだ、さっさとこんな狭い所から抜け出さないと。

チラッとゴーレムの方を見てみたがやはり当然のように再生していた。体感だが再生速度も変化なし、残念だが収穫はなしか。

「何ともない、よねミカ君?もしかしてどっか痛めてたりする?」

「いえ、問題ありませんよ。それより助かりました、今のが能力ってやつですか?」

まだ俺が十代、元の空間で孤児院にいた時に師匠に聞いたことがある、勇者って何が特別なのか。思わせぶりなことをホイホイ言っていた癖に大したことは教えてくれなかったが、とりあえずあくまで勇者自身に聞けば分かる範囲までは教えてくれた。

一つは高い潜在能力(ポテンシャル)、勇者の血族は九割以上の確率で百年に一人級以上の天才らしい。精神面はともかく、少なくとも剣術や魔法といった戦いの分野でのセンスだけなら実際レイ君だってセンスだけを見れば十分そのクラスだ。

俺の三分の一ちょいぐらいの年なのに俺やジオさんの攻撃を理解できているだけで相当だ。ジオさんは種族的に元々高い身体能力と膨大な経験、努力があるはずだ。

俺だって年や才能はジオさんには及ばないが、自称とはいえ世界最強に三十年以上修行を受けてきたんだ。並の達人よりはよほど高いという自負がある。

なによりここ数日の修行だけで目に見えるほどの成長を遂げている、シャレじゃなくレイ君もかなりの天才と言っていいだろう。

そしてもう一つ、こっちの方が遥かに重要だ。それは能力というものの存在だ。

それが一体何なのかはサッパリ教えてくれなかったが、なんかとても凄いらしい。やっていることは魔法に似ているが、個人によってできることが決まっているらしく、また魔法とは部分部分で性質が違うらしい。

だが能力の最も特徴的な点は無限に使える事ができるらしい、という事だ。

人は何か行動を起こした時、それに見合ったエネルギーを消耗している。走ったり殴ったりするには体力を使うし、魔法を使うのなら相応の魔力を消費するわけだ。だが、能力はその原則に従わない。

能力によっては再充填時間(リキャストタイム)があるものがあるらしいが基本的に能力を使っても使用者は何も消耗しないらしい。それはつまり無限に何かをし続けられるという事でもある。

この話を聞いた時、よくあるおとぎ話で勇者が他の仲間が倒れ伏していたとしても勇者だけが戦い続けられる理由が別に覚悟だのなんだのの力じゃないと知ってとてもガッカリした記憶がある。そりゃ能力を使えば他の人よりはよほど消耗は少ないわな、ってマッチポンプじみたものを感じたものだ。

ちなみにどうして無限にし続けられるのかは知らない、教えてくれなかった。

「俺の能力は透明な壁を出せるものだよ、大きさや出せる範囲、硬度は決まっているけどとっさに出せるし防御手段としてはそこそこだと思うよ」

やっぱり『シールド』みたいなものか、流石に魔法の方のやつよりは汎用性は低いと思うけどさっきのゴーレムが砕けたのを見ると出力は余裕で魔法のより上だろうな。まあ『シールド』は無属性だししゃーないが。

にしても、魔法特化二人に無限防御、撃ち合いに関しては負ける気がしないな。ただ魔王の方も半端ない魔法使いらしいから油断はできないが……。

「ん、無限?」

そこで一つの疑問が浮かんだ。あのゴーレムの再生能力も無限ではない、そんなわけない。あまりにもサラッと再生されたから抜けていたが、そもそもこの世に無限の魔力なんてものはない。

まあ師匠の場合自己補完できる範囲がバカみたいに広いから出力次第では実質無限に魔法を使うこともできるらしいけど、流石にあのレベルの再生を自己補完できる程度の魔力で行われてたらそれはフリエさんすら上回る魔力量だ。流石にそこまでの魔力を持っているとは考えたくない。

だが少なくとも今は魔力量云々に関しては考えなくていい、問題を後回しにした感じが凄いけどとにかく今はいいんだ。重要なのはその素材をどこから得ているか、だ。

魔法で物質をゼロから作り出すのは馬鹿みたいに消耗する。ただ生み出すだけで相当魔力を使う癖に、維持するのにも魔力を食う。そこから更に術式を増やすわけだから燃費は基本クソ悪い。

魔力を切ったらそのまま即消えるし、一瞬だけ生み出して~ならともかくゴーレムみたいに常時出し続けるのはまず無理だ。でなければ斬り飛ばしたゴーレムの腕は消えるはずなのに、今もそこに転がっている。

俺の『氷器創製』も周囲の水分を凍らせているだけ、要するに何か素となる材料があるはずだ。

そしてそもそもあのゴーレムの材質は土、じゃあ周辺の土を使って再生しているってことだ。なるほど考えてみればわざわざ石や金属系より硬度の劣る土を使っているのか不思議だったけど簡単に再生できるようにするためか。土なんて足元に腐るほどある、魔力はともかくその素材ならばほぼ無限と形容しても過言ではないだろう。

じゃああの落とし穴も理屈は単純だ、表面の土を使わず僅かに地下の土を使って再生しただけ。てっきりゴーレム越しに魔法を使ったのか、と思ったけど十中八九ただそう術式に組み込んでいただけだろう。

そうなると少々厄介だな、相手の魔力の上限が分からない以上動かなくなるまでぶっ壊し続けるっていうのはスマートじゃないな。さっきみたいなことが起こりうる以上、軽々と力押しをするべきではない。

まあ相手の魔力量を確かめるためにやるのも悪くはないが、そもそもどういう術式で作られているか分からないからかなり振れ幅がデカくなってしまう。わざわざ冒すリスクに見合うリターンとは言えないな。

ならあのゴーレムを倒すには……。

「分かりました、攻略法」


「それじゃあ手筈通りにおねがいしますね!」

相も変わらず単調にぶん殴ろうとしてくるゴーレムを前に俺はそう叫ぶ。

俺の立てた作戦を実行するためにはまず初めにこいつの攻撃を避けて隙を作らなきゃいけないが、この時落とし穴にハマらないようにする対策をするには俺が魔法を使わなきゃいけないのでハマったらやり直しするという作戦ですら案で乗り切ることになった。

俺の狙ったパンチを横跳びで避ける、幸いにも落とし穴は無かったので即座に懐に入って片足を切り飛ばす。そうなったら当然体勢が崩れるので、レイ君にもう片方の足を切ってもらうことで一瞬だがゴーレムの体は宙に浮く。

「『氷杭(ひょうくい)×4』」

そこに間髪入れずにマグルさんが氷の杭を生み出して手足を固定し、空中に浮いたままの状態にする。

地面の土を使って再生しているのなら答えは単純、空中にいる状態で粉々に吹き飛ばせばいい。ヒト型に形状を固定して別に変形とかしない事からあのフォルムが一番安定していているんだろう。

なら全身まとめて砕けば魔力は安定できず再生はできないはず、そして全身くまなくという意味では液体は最適だ。

「『逆さ滝』」

王女様がそう唱えるとゴーレムと地面の隙間からまるで火山が噴火したようにドバっと水が吹き上がる。

というか実際ドバァンって凄まじい音がしてゴーレムが空高く打ち上げられる。衝撃が全身に拡散したせいで砕けるところまではいかなかったが、しっかりヒビが入っている。

数秒後、地面に叩きつけられてバラバラに砕け散る。いくつかの破片がもぞもぞと動いたが、すぐに止まって動かなくなった。

危ない場面はあったが何とか全員無傷で巨大ゴーレムを倒すことができた。

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