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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
3章 とある勇者編
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襲撃、巨大ゴーレム

(ミカ視点)

マグルさんが二人を叩き起こしている間に俺は向かってくる相手を確認する。俺は夜目が効く方ではないが、薄っすらとは輪郭が見えてくる。

しかし、ここまで遠くでも視認できていたし、この地面の振動からも何となく予想はできていたがデカいな。ざっくりとだが、身長五メートルぐらいかな?まさしく巨人と言えるぐらいの大きさのゴーレムだった。

にしても俺はあんまりデカブツ相手は得意じゃないんだけどなあ。師匠から殺気ガンガンぶつけられる手合わせはしてきたから対人戦は比較的得意だが、巨体を切り裂いたり何人もまとめて吹き飛ばしたり、そういった大規模な攻撃はさっぱりできない。

今回俺はあんま攻撃には参加しないで牽制役に徹していた方が良い感じかな?火力だけなら魔法特化の彼らの方が余程出してくれる。

一番の問題は視界の悪さだな、野営用に作った焚き火一つしか光源がない。俺はともかくとして他の三人には五メートル先の光景すら曖昧だろう。魔法で光源を確保するって言ったって燃え広がったら怖いしこのままでいる方が無難だろ。

「ごめん、遅くなった!大丈夫?」

「今はまだ、大体後五分ぐらいって感じですかね。足が長いせいか中々のスピードですね、初撃は何としてでも避けないとまずそうですかね」

でかいし速いし多分硬い。まともに食らえば即死はしないだろうが四肢のどこかは諦めなければならなくなるだろう、ひとまとまりになっているのはリスキー過ぎるな。

とりあえずいつもの陣形になって、俺の考えを伝えていたらようやくお出ましだ。


デカさ以外は至って普通のゴーレムだな、ずんぐりしたヒト型でこれといった武器は無し。材質は、茶色だし土かな?そこら辺にいる石のとは違うのは少し気になるが、寧ろ硬度が低いことを喜ぶべきか?

早速加速はそのまま俺に左ストレートをかまそうとしてきた、幸い動きは単純でノロいので避けることは簡単だったが地面が砕けて体勢が崩れてしまった。カウンターでうでの一本ぐらい持っていけるかと思ってたけど、思い通りにはいかないもんだな。

だが撃ち終わりは隙だらけだし反動も相当だ、的もデカい。魔法の準備には十分な時間だ、今なら一発ぶち込める。

「『バロメトリックソード(気圧剣)』」

マグルさんの魔法で右腕を切り飛ばす、最初にこれはデカい。片腕を奪えたのならバランスは安定しないだろうし、攻撃力は大きく削ることができた。これならそこまで警戒する必要もなかったかな?

そう考えながら追撃しようとした時だった、切断されたはずの右腕から新しい腕が生えてきた。

「はい!?」

反撃はないと油断していたこともあってかなり直線的に突っ込んでしまっていた、このままだとさっきの攻撃程ではないがかなり良いのをもらってしまうだろう。

仕方ないので『不休』を使って距離を取る、ゴーレムだからよかったもののジオさんクラスの相手だったらマジで致命的なミスだなこれ。

「すいません調子乗りました、まさか即行で『不休』を使わされるとは」

「いや、ミカ君が無事でよかったよ。それにしても、確実に腕は切れてたよね?」

それは間違いない。確かに腕は飛んでいたし、事実右腕はそこに転がっている。幻影だとしても、俺の場合目だけじゃなくて耳も鼻も効く。流石にとっさに出した程度の幻術じゃ誤魔化されない。

だとするとやっぱり再生したんだろう、でもどうやって?術者が近くにいるのならパパっと直すこともできるんだろうが、近くに気配は感じない。

トカゲのしっぽですら二週間近くはかかるのにギュワって生えてきたぞ、ギュワって。そう何度もできるとは思いたくないが、見た目のインパクト派手過ぎんだよなあ。後五、六回は普通にできそうな気がする。

まあ油断さえしなければ二、三十回は余裕でぶった切れそうだけど、ここで一番マズいのはクッタクタになるまで体力を削られることだ。

ただでさえ碌な道具もない野営だとよほど慣れていない限り寧ろ体力は消耗してしまう。そんな中でこの程度の相手に消耗するのは割に合わない。特に『不休』は足の負担がデカいからな、できればもう使いたくない。

逃げたところでなあ、ゴーレムが疲れるわけないし目的地がはっきりしている以上仮に振り切ったところで意味がない。勿論夜の戦闘を避けるだけでも意味はあるだろうが襲撃のタイミングは向こう次第なんだ、次回も夜に来られたらそれまでだ。

「とりあえずもう一度腕や足を飛ばしてみましょう、それで再生の原理を暴いて攻略法を考えましょうか」

そう言って俺は急ブレーキをかけられる程度のスピードでゴーレムに突っこんでいく。すると殴りかかってきたが軽く避けて隙を作りそこに魔法を撃ちこんでもらう。

今度は片足が斬り飛ばされるがやはり数秒もせずにたちまち再生して元通りになってしまう。今度は欲張らずに観察に集中していたが、これといって何かを消耗している様子もない。

マジでどういうタネだ?流石に一、二回で完全に理解できるとは思っていなかったが再生前と後で変化がなさすぎる。これじゃ何回やっても分かる気がしない。

そうしてウンウンと頭を抱えていると、ゴーレムが殴りかかってきた。十中八九自動操縦(オート)とはいえ目の前で隙だらけの姿を見逃してくれるほど馬鹿ではなかったか。

考えに集中していたとはいえこれならサラッと避けられる。斜め前に跳んでカウンターで足一本ぐらい切っとくか、大した意味はないだろうけどモノはなんでも積み重ねだ。

と、思っていたんだが……。跳んだ先の地面がまるで落とし穴の如く崩れ、俺の体は重力に従いそのまま落ちていった。

「へ?」

突然信じられないことが起きたショックで一瞬思考が空っぽになる。嫌な浮遊感になんでとかどうやってとかいう疑問符すら湧かず体勢を整える前に地面に激突する。

「ふぎゅ!」

いたた、顔打った。そこまで深くなかったのは幸いか、思いっきり顔面からいったのに鼻血すらでていない。ダメージとしてはほとんどゼロと言ってもいいだろう。

「ミカ君大丈夫!?何とかなりそう?」

「ああ大丈夫です、大して深くもなかったんで。心配しないでください、すぐ戻ります」

「いやそっちもだけどそれ以上に上が……」

上?そう言われてようやっと真上を見上げて気づく、ゴーレムが俺がいる穴に向かって大きく腕を振り上げていることを。


しまった!何考えてんだ俺は!戦闘中に思考を止めるなんて命知らずの馬鹿でもやらないことだろ!異常事態に陥ったせいで完全に脳がストップしていた。

ゴーレムの巨体を考えれば余裕で俺の所まで攻撃は届くだろう。体勢は崩れてレイ君達からは良い的だろうが、少なくとも俺は大ピンチだ。

レイ君が慌てていた事を考えると多分俺が落ちたことで魔法の準備は一旦リセットされたと考えるべきだろう。つまるところあの攻撃を『止める』術はない。

仮に腕や足を切り落とせたとしても、それでもその時には既に拳は穴の真上で待機していることだろう。

一応奥の手はいくつかある、無属性魔法なら今からでも余裕で間に合うだろうし『気』を使えば攻撃をはじき返すことすら可能かもしれない。が、奥の手とは切りたくないからこそ奥の手なのだ。

師匠が何度も言っていたように俺達は部外者だ。俺のような現地レベルを大きく超える事のない人間がただ戦うだけなら許されるが、全く未知の技術を使用するのは完璧にアウトだ。

高等技術をホイホイ使えるようになってしまえば最悪の場合どうなってしまうか、それは『デリュージ』の件でしっかり叩き込まれた。

防御用の魔法ならその制約外ではあるものの、そもそも俺が魔法を使える事はあまり教えたくない。

俺はあくまでも修行のために来ているのに対し、彼らは自らの身を、そして人間を守るために戦っている。魔王を倒した後、俺が危険分子として処理される可能性は否定できない。あまり手の内を晒したくはないが……。

出し惜しみして命を失うのはもはや馬鹿を超えている。しゃーない、適当に氷属性の魔法で壁でも……。

そう思った瞬間だった、レイ君の叫び声が周囲に響いた。

「能力発動!」


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