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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
3章 とある勇者編
60/81

つかの間の一息

(レイ視点)

「突然なんですけど、そもそも俺達は何で魔王を倒そうとしているんでしたっけ?」

ジオとの戦いを乗り切って数日、依然敵地なので中々思いきって進むことができない中、ミカ君がそう訪ねてきた。

「そりゃあ、攻められているんだから戦うしかないでしょ。戦わなきゃ殺されるんだから」

「じゃあ何で攻められているんですかね?」

「さあ?もう何百年も前からずっと人間と魔族は戦っているからね、多分もう互いに引けないんでしょ」

「あ~、そういう」

どこか呆れたようにそう零すミカ君。まあ実際俺も馬鹿らしいとは思うが、あくまでこれは何も失っていないし責任もない俺だから言える台詞だ。大人から見たら下らない考えなんだろうな。

魔王も勇者と同じようにその家系は生まれつき優れた肉体と高い魔力を持っているらしい。魔族の寿命は人間の五倍、ざっくり百年周期で新たな魔王が生まれてくる。

その時の勇者が戦って、勇者が負けたら次の魔王が成長するまでに何とかして倒し勇者が勝ったらそれから数十年戦争は止まる。そんなことが俺が知る限り既に十回以上起きている、そりゃあ止め時も見失うよな。


「休憩終わりにしますよ~、訓練再開しましょう」

おっと、マグルさんに呼ばれてしまったので重い腰を上げて訓練に戻る。

先日、魔王の部下一人に翻弄されてしまいこのままでは確実に魔王には勝てないと考えた俺達は毎日毎日訓練の時間をとっている。魔王を倒すのが遅れてしまえば被害も拡大してしまうが申し訳ないがこれは必要経費だろう。

とは言えまあ何か月もかけるわけにはいかず、かと言って数日で大きく変わるものでもないので連携の仕方とかそんな程度だが。

しかしやはりミカ君の近距離戦での実力は凄まじい、今国の方で指揮を執っている騎士団長よりも更に数段は上だ。

単純に技量も身体能力も高水準、『不休』っていう特殊な技も持っているし最低限とはいえ魔法も使える。見た目は二十歳いっているかどうか、といったところなのにとんでもないな。

師匠であるクロンさんよりも強いんじゃないか?とも思ったが、ミカ君曰く仮に彼が一万人いたとしてもクロンさんには傷一つつけられないと言っていた。信じられないがそれが本当だとしたらマジで魔王よりも余裕で強いだろ。

しかしそんなミカ君でもジオには押されていた、それに魔王軍にはジオと並んで遠距離戦最強のギャン・ウォーンがいる。まあこっちとしても遠距離戦は望むところだが、ジオと同格に語られる以上そう簡単にいく相手ではないだろう。

一人ずつなら今の俺達だったら多分何とかなるだろうけど、仮に二人同時、最悪魔王も併せて三人で来られたらかなり厳しいだろう。

とりあえず今は、一番想定されるジオとギャンの二人がかりを警戒した立ち回りを考えている。三人がかりで来られたら、もうすたこらさっさと逃げるしかない。


「それにしても全然何も起きませんね、逆に怖いくらい」

そう零したのはフィラ王女、夕食を食べながら少々退屈そうにしていた。確かにここ数日何も起きていない、多少近くにいたゴーレムを倒したりはしたがそれだけだ。

思いっきり侵入したことがバレて、ジオを追い返したのでてっきりゴーレムの大群でも襲われるかと思ったがバレる前と今のところ大きな変化はない。

そうなるとこれから何か来るのではないか?と勘ぐってしまい胸中穏やかではいられない。とはいえ何かできるわけでもなく、ただ無為に時間を浪費している気がしてならない。

「大丈夫?思いつめたような表情してるけど、あんま考え過ぎると疲れるよ」

思わずしかめっ面をしていたらミカ君がそう声をかけてくれた。彼の場合、あくまでも旅人であるため仮に負けたとしても死ななければ大した問題はないので気楽なものだ。

とひねくれた考えが出なくもないが、それでも命をかけて戦うんだ。あまりにも落ち着きすぎて驚いた。

「凄いねミカ君、そんな冷静で。不安とか緊張とか全然してなさそうだけど」

「いやーまあ師匠に比べたら魔王なんて楽勝だろうし。それに俺もそこそこ年とってますからね、そりゃあ少しは余裕も生まれるもんですよ」

フフンと鼻を鳴らし、胸を張ってドヤ顔をするミカ君。今の発言一つですげえツッコミどころが沢山あるが、とりあえずいくつなんだろう?ぱっと見十代後半って感じだけど……。

「ミカ君何歳なの?あ、俺は十七だけど」

「四十五です」

…………

「え?」

「四十五です」

「うそでしょ!?」

「マジです」

同年代だとばっかり思っていたのにまさか俺よりも全然年上だった。どうしよう、今までため口だったの失礼だったかな?とも思ったが明らかに気にしていなさそうな顔をしているのでまあ多分大丈夫だろう。

「ああ、言ってなかったですけど俺不老長寿らしいんですよ。理由は知りません、俺も最近ようやく自覚しました」

「えっと、そういう種族だってこと?」

「いえ、俺自身も両親も至って普通の人間ですよ。ただ何か加護を持っているだのなんだのって話はされましたけど」

突拍子もない話だけど妙に納得できる、人間なのにあれだけの強さを持っているんだ。見た目通りの年齢であれだったら寧ろそっちの方がビックリだ。

にしても見えねー、そりゃあ見た目よりは大人びた雰囲気がないわけじゃないけど年齢に比べたら全然だ。失礼だけど精神的にあんまり成長していないってことなのかな?

「一応念のため言っておきますけど精神年齢は肉体年齢に大きく依存しているらしいんです。俺は不老なんで成長期が終わってからは精神的な成長は極めてゆっくりになるんですよ、別に俺が子供っぽいっていう訳じゃないですから!」

「あ、はい」

圧がすごい、もしかして気にしていたのだろうか?まあそういう事情があるなら気にしないでおくか、特にミカ君自身も年上扱いされることを望んでもいないようだし別に気にしなくても大丈夫だろ。

しかしミカ君が強い理由が分かったところで、悲しきかなミカ君が四十五だとしても魔族の方がどう考えたって年を取っているし魔族の方が生まれつきの実力も高い。結局ミカ君が一人でジオに勝てる可能性が低いのは変わんない。

言い方はクズ過ぎて申し訳ないが、魔王に勝てさえすれば彼がどんな事情を抱えていようと関係ない。勿論今彼が困っているのなら助ける気で入るが、そうでないのなら彼の事を考えるのは魔王を倒した後で良い。

……阿呆なこと考えてないで寝るか、せっかく見張り番をミカ君が請け負ってくれたんだ。キチンと体を休めないとな。


(マグル視点)

「おや、どうしましたマグルさん?眠れませんかね?」

二人が眠りについたのを確認してミカ君にの傍に寄ろうとすると、こちらを見ずに話しかけてくる。私に意識を向けながらも周囲の警戒を怠っていない。

「少しばかり気になったことがありましてね、ぜひお聞きしたいと思ったのですよ」

「はい?なんでしょう、何か変な所でもありましたかね」

一切思い当たる節がないような態度で首をかしげるミカ君、こんなに自覚がないってことは私の考えていることは見当違いなのだろうか?

いやしかしこればかりはどうしても確認しなければ、こういう嫌な役目は年長者である私がやっておかねばね。

「申し訳ないのですが、あなたのその余裕は年齢によるものだけではないと感じましてね。ただ苦境に慣れているというよりは絶対的な信頼を寄せている何か、命を失うことはないという保証のようなものがあるのではないですか?」

そう聞くと目を見開いて驚いた表情をするミカ君。

「否定はしませんが、それでどうします?手札は全部晒しておけと?言っちゃあれですけど俺もあなた方のできることなんてほとんど知らないですし、不公平じゃないです?」

「いえいえ、手札を隠すのは別に構いませんよ。相応の事情もあるでしょうしね、ですが……その保証がどういったものか程度の事は教えていただいてもよろしいですかね。まさかとは思いますが、魔王軍と内通している可能性も無きにしも非ずなので」

まあ仮に内通していたのだとしたらジオとの戦いで我々を守るなんて事はしないだろうが、我々を裏切る可能性ならいくらでもある。そういった部分は早々に潰しておいた方がいいだろう。

「ふむ、話は理解しましたがちょっと待ってもらえます?お客様が来たようなので」

そう言いミカ君が指を指した先に、暗くて分かりづらいがヒト型の何かが近づいてきているのが見えた。

「とりあえず二人を起こしてください、お話の続きはあれの後ってことでよろしくお願いします」

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