表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
3章 とある勇者編
58/81

魔王軍元帥ジオ

(ジオ視点)

俺は目の前のガキの強さに内心、舌を巻いていた、こんな二十歳いっているか否か程度のガキがこんなにも俺の攻撃をしのげている。俺の部下なんて十手防げればラッキーな方なのに、こいつは初見で既に何十回も俺の攻撃を見切っている。

だがまあそれでもたかが人間ごときに負けるはずがない、どっかの博士曰く魔族の平均寿命は人間の五倍、生まれつきの魔力身体能力は人間のそれよりも遥かに多い。ま、俺は魔法なんてほとんど使わないが……。

今もそう、こいつは何か反撃することができずに少しづつ追い詰められていく。右手の剣を上から叩きつけることでガキの刀を防御に使わせ、隙ができた胸を左の剣で貫こうとする。

「『不休』」

その瞬間、明らかに重心が崩れていたガキの体がいきなり後方へと飛び俺の剣の間合いから外れる。

なんだあ今の?明らかに普通じゃねえだろ、今の動き。足は伸びきっていて明らかに踏ん張れる体勢ではなかった、万が一少しは力をいれられたとしても重心は思いっきり崩れていてあそこまでの速度を出せるはずがねえ。

自身の状況がどうであれ急激に加速する技?もしそうだとしたらこいつを仕留めるのはほぼ不可能だぞ、なんてそこらの雑魚なら諦めるところだろうが知性の塊である俺はその程度の事で諦めるほど単純じゃない。

何故わざわざピンチになるまで今のを使わなかった?ノーリスクで使えるのなら連発できるだろうし、無理矢理にでも距離を開ければ他の奴らとも連携の一つや二つできたはずだ。っつーことは使用にはデメリットがあるはずだ。

流石に今ここでこいつらを全滅させることは無理だろうからな、めんどくせえしさっさと逃げるのもアリっちゃアリだがそれもそれで癪だな。見逃そうとした奴ら相手にしっぽ巻いて逃げるとかくっそイライラする。

それにここで何の情報も得ずにこっちの情報だけ晒したとなると次回は結構厳しいだろうし、何よりもあのジジイにシバかれる。あのジジイの拳骨、俺の倍以上生きているくせにバカみたいにいてえんだよな。どうなってんだよ、あれ。

しゃーねえ、今はさっきの技の正体を探るためだけに集中するか。どのみちあれの攻略法を探さねえと次回以降もこのガキを仕留める事は出来ねえんだ、面倒くさいがいつかやんなきゃなんねえ事だし仕方ねえか。

となると、まずは使わせないと話にならねえな。まあピンチになったから使ったんだからとりあえずとにかく攻めてまたピンチにすれば勝手に使うだろ。その時に全身を観察して、その後の動きを見比べればいい話だ。

完璧な作戦だ、一部の隙もねえ。流石俺だ、これこそ天才のなせる業だな。

「『溶解の蒸気(メルトスチーム)』」

「あん?」

後ろでおっさんと一緒に引っ込んでた女が何か唱えたかと思ったら俺の周りに白い煙が出てきた。つーか熱っ、超高温の水蒸気ってところか、味な真似してくれんじゃねえか。

いや失敗失敗、距離を離されたのに考え事し過ぎたか。俺と人間どもの間にこの蒸気がある以上、無傷で近づくのは難しい。そして俺には碌な遠距離攻撃の手段がないから魔法のいい的だ。ここは引くしかねえか。

なーんて思われてんなら心外だな、俺は両手の剣を振り回し僅かだが蒸気を吹き飛ばしながら蒸気の中を突っ切って魔法を撃ってきた女を狙う。

「「「「なっ!」」」」

確かに多少熱いが所詮は人間のガキ程度の魔力だ、この程度ならわざわざ中に居続けない限り大したダメージにはならねえ。視界が悪くなっていた分、さっき俺と切りあっていたガキの反応も遅れている。今ならサクッと一人ぐらい仕留められるだろう。

「『不休』」

そう思っていたんだが、まーたさっきの技を使ったようで急加速して俺と女の間に割って入って俺の攻撃を受け止める。

「んっとに厄介だなあ、その技!」

「お褒めにあずかりドーモ!」

少々勢い任せで攻撃をしたのもあって、踏ん張れる体勢ではなく弾かれてまたもや距離を離されてしまう。

これでまた魔法をバンバン撃たれてしまう状況にされたのはムカつくが、まあいい。今ので魔法役を潰せなかったのは残念だが、こっちにも十分収穫があった。

「その技、足の筋肉を一気に圧縮してエネルギーを蓄えることでどんな体勢にも拘らず加速できるっていったところか?便利だなあおい」

「ゲッ、バレた!」

露骨な反応ありがたい、おかげで俺の推測は間違っていたなかったことがわかった。やはり俺は天才だな。

あの技を使った瞬間、足のふくらはぎ辺りがギュッと圧縮してそれが元に戻った時加速が生まれていた。理屈は何となく分かったが、やり方に関しては予想すらできねえ。予想以上にこいつやるな。

「だが、そんなに無理矢理体を動かせるぐらいのエネルギーを生み出すってこたあ、それ相応の負荷が足にかかるだろその技。足の筋肉を圧縮した後、それを一気に開放するなんて事したら一回使うだけで足をつったような痛みがあるはずだろ?」

「うええ、そこまでバレてんの?勘弁してよ」

弱点が分かったのは良いんだが、う~む……。一回使うごとに足にダメージって逆に言うとそれだけなんだよなあ、さっきすぐに二回目使ったところを見るに少なくとも後数回で倒れてくれるほどダメージは大きくなさそうだしなあ。

「あ”~考えんのめんどくせえ。一応最低限のノルマはこなしたし、これでいいや。今日はもう帰る!」

一度防がれたのなら次は簡単にはいかないだろう、何より俺はまだ残り二人が何できるのかさっぱり分からん。これ以上やりあったら流石の俺でもノーダメージとまではいかないだろうし、ここらで切り上げるのが賢い者の行いだろう。

頭を掻いてもう戦わないアピールをしても人間どもは警戒を解かず俺を睨んでいた。チッ、ちゃっかりしてやがる。これで気を抜いたら一人ぐらい、と思ったんだがそう上手くはいかねえか。

これ以上できる事はねえしさっさと帰るか、一応念のため追跡を振り切れるように全力ダッシュしながら帰路をたどった。


(レイ視点)

「はああ~~~」

ジオの姿が豆粒みたいに小さくなって初めて大きく息を吐き全身の力が抜ける。決して舐めていたわけではないが、想像以上に恐ろしい相手だった。ミカ君がいなければ俺たちを全滅させるのに一分とかからなかっただろう。

単純に相性の問題もあるだろうが、それでも何にもできなかったってのは心にくるな。正確には後のためっていう言い訳はあったが何もしなかった、だから罪悪感もある。ミカ君一人に危険な役目をおしつけてしまった事に。それに

「ミカ君、そのごめんなさい。最初助けてもらったのにお礼を言うどころか疑ってしまったり、一人だけで戦わせてしまったり……」

俺が謝ると、ミカ君はまるで何で謝られたのか理解できない、というような顔をして数秒後ようやく理解できたように指を鳴らした。

「ああ、お気になさらず。近距離戦は俺の役目ですから、寧ろ碌に連携できない事とか手札を晒すよりも特に何もしないで警戒させていた方がありがたかったです。その分、遠距離戦では頼りにしてますよ」

お、思ったよりも理論的に返された。これで善意だけで返されたのなら俺ももっと愚痴っただろうが、ミカ君はあくまでも必要だったという理屈で返したため俺もこれ以上何も言えなかった。

「ミカ君って、思ったよりも考えてるね」

「え、それって何も考えていない馬鹿みたいに思われていたってこと?」

「ああごめん、いやそうじゃなくて。頭が悪いかどうかはともかく、何となく理屈よりも感情優先するタイプなのかなって思ってたからさ。そうやって返されるのちょっとビックリして」

しまった、つい本音がポロッと出てしまった、気分悪くさせちゃったかな?と思ったらカラカラと笑いを零すミカ君。

「フフッ、いや間違ってないよ、自分で言うのもなんだけど俺っていざって時、感情優先で行動しがちだし。けどそうならずに冷静でいられるよう師匠に色々と叩き込まれてね、やりたい事をなすためには力が必要だ、武力知力財力権力問わずってね」

「ん?その口ぶりだとミカ君は何かやりたいことがあるってこと?」

「まあそう大したものではないけどね、できるだけ死なせたくない、できるだけ殺したくない、それだけだよ。俺は生命至上主義者なんだ」

言い方はちょっと仰々しく感じるが、つまるところ命を守るために強くなったってことか。凄い良い事だ、とても主人公的だな。

なんか、彼には変に疑うだけ無駄なような気がする。仮に裏切ったとしても命は見逃してくれるでしょ。

今の俺はそんな風に気軽に考えていたのだが、ミカ君の言った事は大袈裟でも誇張表現でも何でもないということを知るのは少し先の事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ