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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
3章 とある勇者編
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襲撃はいつも突然に

「とりあえず俺は別行動取るんでシクヨロ、何かあった時のために一応通信用の魔法道具渡しておくから」

ミカ君にそれらしき物を渡すとクロンさんはさっさとどこかへと歩き出した。存在感のある彼がいなくなってしまったことで俺達の間に気まずい空気が漂う。

「ひとまずお三方は何ができるんです?ちなみに俺は基本的に物理特化だと思ってくれれば十分です」

「俺は大体支援型ですかね。まあ一応剣術も使えますが、あくまで付け焼き刃なのでそこまで期待しないでください」

「私は全属性の魔法を一通りそこそこの練度で扱えます。大体の事はできると思いますが、何かに特化しているわけではないので器用貧乏ぐらいの感覚で十分ですよ」

「えっと、私はその水属性魔法が得意です。ある程度火力も出るので任せてください」

ミカ君の提案で俺たち三人ができることを改めて確認したところ、最後のフィラ王女の話を聞いてミカ君がよく分からないという顔をしていた。

「水属性?基本五属性は火、氷、風、土、雷でしたよねってああ!火と氷を組み合わせて使っているってことですか」

「ご名答、フィラ王女は生まれつき火と氷属性の適性がとても高く同時に発動させることもできるんですよ。詳しいことは今は省きますけど、消費が大きい分性能の高い魔法だと思ってくれれば」

「なるほど、びっくりするほど遠距離に特化してますねこのチーム。特に折角の支援型が近距離戦に割り振られているせいで本領発揮できないとか、いっそ笑えてきますね」

軽く笑いながらそうつぶやくミカ君だが、残念なことに全くシャレになっていない。自惚れのように聞こえるかもだが、今までの戦い方だと俺独自の強みというのがほとんど潰されていた。

本来ならば近接役を支援しいざという時に後方を守る、というのが俺の戦い方だったのだがチームの構成の偏りに仕方なく碌に魔法を使うこともできない近接で戦っていたのだ。だから先ほどあんな無茶苦茶な要求をしてしまうのも仕方ないのだ……。

そんな風にさっき抱いた自己嫌悪に言い訳がましい事を考えていると、突然ミカ君の顔が歪み不快感が露わになる。

何か気に障る事でもしてしまったか?純粋な性格をしていそうな顔をしているし、もしや俺の心情が表情に出てしまっていたか?と困惑していると突然腕をガシッと掴まれた。かと思った瞬間、俺は後ろにぶん投げられて空中にいた。

大した勢いではなかったかので即座に体制を整え綺麗に着地することができたが、攻撃されたのは事実。剣に手をかけながらミカ君を問いただそうとすると、直前まで俺が立っていた場所が爆発した。

粉塵が晴れると、そこにはミカ君ともう一人、二本の剣を持った誰かがいた。

「ひい、ふう、みい、よ、あれ?五人いるって話だったんだがな、もう一人どこ行った?数え間違いか?」

僅かに白の混じった黒髪はボサボサに整えられておらず、口元には不均等に伸びた無精ひげがあり、その黒目は猫のように鋭い。そんな粗野で荒々しい印象を受ける男だが、最も特徴的なのは頭に着いたヤギのようなその巻き角だろう。

「魔族か」

「そういうお前らは人間か、いつか来るだろうなとは思っていたが予想よりも早かったな」

頭を掻きながら面倒くさそうに話す男、その容姿と態度に覚えがあった。何よりも今の魔界に残っている魔族の中で戦える奴と言ったら一人しかいない。

「魔王軍元帥ジオ・ナーズ」

「ウエッ、何で俺の名前まで知ってんの?きもっ。せめて美女なら嬉しかったが野郎に名前知られてても何も嬉しくねえぞ」

飄々と軽口を叩くジオだがその立ち回りには一切の隙がない、偽物だとかそういう類ではないであろう事は確かだ。

拷問部の人達が捕虜から聞き出した情報だと、大した魔法を使わない代わりに双剣の達人であり魔王の護衛として残っているもう一人と合わせて魔王軍最強の一角らしい。

以前なら勝ち目はなかっただろうが今はミカ君がいる、二人の実力差次第だが即全滅という事態は避けられるだろう。

「めんどくせえなあ。オラ人間ども、今すぐ帰るってんなら見逃してやんぞ。今なら俺の道案内付きだ、お得だろ?」

どう来るか、と考えていたらジオの口から放たれた言葉は意外過ぎるものだった。

「王様の命令でなあ、殺さなくてもいい奴は殺すなとのお達しなんだよ。てめえらを皆殺しにするのもかったるいしな、さっさと逃げ帰ってくれるのが一番ありがたいんだがな」

?てっきり見敵必殺の構えで来ると思ったんだが意外にも理性的に会話を持ち掛けてきた。少々驚いたが残念ながらその条件は到底受け入れられるものではなかった。

「悪いが無理だね、すぐに侵攻を止めてくれるっていうなら喜んで今すぐ帰らせてもらうが?」

「そりゃ流石に無理だな、今や魔族という種族はてめえらと戦わざるを得ないんでな」

まあ当然こうなるよな、結果は最初から分かっていたので特に残念がったりしない。人間と魔族は戦い続ける、これはもう歴史が証明してきている。結局のところ今代の魔王も今まで数多くいた魔王の中の一人でしかない、変に期待するだけ無駄だろう。

さて、思わぬ強敵だがそれでもこいつも魔王の部下の一人に過ぎない、こいつを倒せないと魔王を倒すことなんてできないだろう。このチームになってからの初の戦闘だ、連携が取れるかどうかは怪しいがそれでも四対一だ。流石に負けるはずが……。

そんな甘いことを考えて油断していたのは致命的だった、軽く跳ねていたと思ったら即座に後方役二人の元に駆け出した。しかも早い!この速度だと防ぐのが間に合わない、クソ!もういきなり奥の手を使わないといけないのかよ!

そう思ったらジオの進行方向にミカ君が割り込んだ、ジオが双剣を叩きつけようとするがミカ君が氷の刀で受け止める。

「いきなり後方を狙うなんて美学がないですね、堂々と正面突破を目指してみたらどうです?」

「ほ~う、言うじゃねえかクソガキ。なら止めてみろよ」

そうして切りあい始める二人、俺程度の剣術や身体能力では足手まといにしかなれない。仕方ないので念のため後方の二人の護衛をすることしかできない。

一応やろうと思えばできる事はあるのだが、消耗も大きいし何よりも確実にここで仕留めきれるか分からない以上以上安易に手札を晒すのは得策じゃない。無力感に歯噛みしながらも俺は何もできなかった。


(ミカ視点)

困った、この人俺より強いわ。身体能力はギリ互角って感じだけど技術、というよりセンスが俺よりも遥かに高い。ぶっちゃけ師匠曰く俺の才能なんて生命関連だけで、戦闘、魔法に関してはほとんどないらしい。

まあ実際のところ気や命属性魔法を使えばどうとでもなるんだけど、師匠からそういうのあまり使わない方が良いって言われてるんだよなあ。なんでも自分の素の力を正確に把握するためにパワーアップは気軽に使うべきじゃないとのことらしい。

ついでに気は他の部分を弱くしちゃうし、命属性魔法はそこそこ消費が大きいから気軽に使うもんじゃないしで使用にデメリットもあるから理にかなってはいるんだよな。勿論それでもレイ君達の命がかかっているわけだし、いざとなったら使けどね。

しっかしまあ援護が何もないのはキツイな、数の利を何一つ活かせていない。出会って数分で連携をしろっていう方が無茶だし、俺ら二人して基本的に近距離戦しかできない脳筋だから誤射が怖いっていうのもあって仕方ないんだが。

だがそれを抜きにしてもマジで強いなこの人、双剣って相当難しいはずなのにそんな様子を一切見せずに一手一手確実に詰まされていく。右からの剣を防いだと思ったら左から剣が迫り僅かに隙を見せたら両方の剣を叩きつけてくる。

こっちから攻める隙が全然ない、一撃一撃は速度も威力もないからこそほとんど傷を負うことはないけど、その分ゆっくりと少しづつ死が責めってくる感覚がある。

なんて事を考えている間にも着実に俺は追い込まれていき、

「あ、ヤベ」

嫌にゆっくりとがら空きの俺の胸に突き立てられんとする剣が見えた。


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