クロンの空間
「どういう事?、その、神より上位の存在って」
「さぁ?」
……。はい?
「いや、さぁって……」
「そう言われましても、ただそう教えられただけで何も説明がなかったんですよ。正直、ただ言っただけで僕も説明は一切できませんし」
少し不貞腐れたように言うヴィラ、今まで貴族のような大人びた様子のヴィラが見た目相応の態度になったのは少しホッとするものがあった。
とはいえ、そっか。師匠が一体何なのか分かるかと思ったんだが、そうそう上手い話はないか。
「ああでも、空間を作ったとかいう話はわかりますよ。」
期待してから落とされたので若干へこんでいると、ヴィラが気になっていたもう一つの事は教えてくれるみたいだった。
「特殊六属性の一つ空間属性、自分の空間を創る魔法です。父様は自らが創った空間に宇宙を丸ごと詰め込んでいると言っていましたね」
特殊六属性っていったらあれか、俺が使える命属性魔法と同じ枠の魔法。習得に何百年ってかかるとか言ってたっけ。ああ、でも師匠は最低一万年は生きてたっけ?別に使えたって不思議じゃないか。
「それって宇宙が丸ごと入るっていうのは普通じゃない、よね?」
「勿論です、僕はまだ空間属性は使えないけど千年以上生きている兄様は惑星一個ギリギリ入る程度だって言ってましたね」
う~ん、千年生きて惑星一個って事は師匠ってどんだけ生きてんだ?ただ空を見上げるだけで星の数なんて1000じゃきかねえぞ。
あとワープみたいにここに来れたのはそういう種ね、実際に距離を無視したわけじゃなくて師匠の創った空間に入ったってことか。
俺は全然この魔法について知らないけどそれでも汎用性が馬鹿みたいに高いのは分かる。単純に手荷物を減らせるってだけで野営には便利だし遠征をする時、持ち物を増やせればいけるところは格段に広くなる。
是非とも俺も覚えたいところだが、最低数百年って話だったから手を付けるにしてもかなり先だな。
「それにしてもミカ兄様は父様からほとんど何も教えられてないんですね」
「そうだねぇ、師匠が凄すぎて一々疑問を持つのもめんどくさくなって全然質問とかしなかったからなあ」
歳を重ねると現実になんの疑問も持てなくなっちゃって、歳は取りたくないものだねぇ。なんて馬鹿なことを言っておいて……。
改めて考えると結構ヤバいな。命の恩人とはいえ、正体一切不明の人に付き従うとか怪しいとかってレベルじゃない。明日師匠に会ったら色々聞こう。
「あ、そういえば聞き忘れてましたけど兄様の種族って何なんですか?匂いは人間ですけど」
「うん人間だよ。別に二人みたいにとんでも種族じゃなくてか弱い人間です」
「なのに不老?」
「らしいね」
「何でです?」
「俺に聞かないで。師匠に聞いて」
加護がうんたらかんたら言ってはいたけど誰からとかどんなものなのかとか何一つ解説がないからな。こうしてみると俺は自分のことも全然分かってないな。まあ、だからって別に不安とかは全然ないが。今んとこ大した問題なんてないしな、なんかデメリットがあるのなら違ったかもしれんが。
っていうか不安要素っていうんなら師匠に付き従ってることがデカすぎる、あんな意味不明の化け物に比べたら俺の秘密なんてないも同じだ。
「ヴィラ~、おにいちゃ~ん。お腹が空いた、そろそろごはんたべよ?」
今までじっとしてたウルに呼びかけられて窓の外を見る、夕陽で空が橙に染まっていた。
その事を認識した瞬間、ウルのお腹は大きな声で空腹を主張した。
その大きな音にニンマリとしながら俺は台所に向かう。
「そういえば食料はちゃんとあるの?」
「ありますけど、詳しいことはまた明日でいいですか?長話してちょっと疲れちゃいました」
流石に何時間も話してりゃ疲れるか、別に反対する理由もないので続きは明日にして俺は料理を作り始めた。
後、二人共野菜は食べられなかったので俺に全て押し付けられたとさ。
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翌朝、朝飯を作った後昨日の話の続きをヴィラとしていた。
「ざっくりと説明すると、昨日言った通り父様はこの空間に宇宙を丸ごと詰め込んでるんですが。いくつかの星に役割を持たせてるんです。例えばこの星だったら居住区用の一つですね」
え、一つ?そんなに師匠が連れて来た孤児って多いの?
「数も確かに多いんですが、それ以上に僕たちは孤児なんですよ。分かっているとは思いますが僕やウル姉さま、ミカ兄様は正直かなり恵まれている部類です。特定の種族を憎んでいたり、制御できないほどの力を持ってるなんて当たり前のようにいますし、隔離とかしなきゃいけない方なんていくらでもいるわけです」
そりゃそっか、元居た孤児院ですら俺よりドギツイ経緯な子はいっぱいいた。宇宙を丸ごと詰め込んでるんなら土地は腐るほどある訳だし分けるのに星一個使うって贅沢なこともできるわけか。
まあ流石にここまで説明されれば予想もつくが食料を生み出すためにも別の星を使っているからここには他の孤児しかいないってこったな。
「所でそういう食料とかは師匠に渡されるの?」
「いえ、流石に何もできない子供なら父様自ら料理して渡しますが、そうでなければ自分で取りに行き自分で料理しなければならないです。その他洗濯裁縫などの家事も自分でやんなきゃですね」
まあ今まで通りだな、教えられてからずっと俺が家事してたし。寧ろ師匠が料理してくれたことなんて両手で数えられるぐらいしかないし別に困りゃしないし。
「ああ、でも学校はありますよ。来たい人だけ来ればいい、覚えたいことだけ教えるって方式ですよ。最低限の知識は望んでなくても教えてくれますが、知らなきゃ知りたいって考える事すらないですし」
学校あるんだ、どうやって、は実際に学校に行った時でいっか。いっぺんに教えられても絶対に覚えきれないしな。




