デリュージについて
「はいはい、とりあえずデリュージの情報から話していきますかね」
今、俺達はフリエさん助けるための情報を知るために家で師匠の話を聞いている。俺達は今知らないことが多すぎる、悔しいけどノアさんが言っていたとおり、まだ『根性だけではどうにもならない状況』だ。だからこそ情報が欲しい。彼らをどうにか出来るような、フリエさんを助けられるような……
「まあ始めにあいつらの正体から教えると、あいつらは俺と同じで元々この星じゃない別の星から来ててね?まあだからこの星には存在していない技術なんかも簡単に使えるわけよ」
「はい師匠、まず俺と同じってところに突っ込んでいいですか?」
「ダメです、はい次いくよ」
ま、まあ確かに今はそんな場合じゃないしな。でも師匠が何者かこんな形で知れるなんて……今までも意味わかんない技いっぱい使ってたから何者か気になっていたけどまさか宇宙人だとはなあ……
「まあそれであいつらの使った技術なんだが……十中八九『糸』と『衝撃』っていう無属性魔法だろうなあ」
「無属性魔法?聞いたことないです、そんな魔法。シルド君は?」
「いえ、見たことも聞いたこともないです。そんな技術があるんですか、と」
「魔法をどうやって発動させるか。それは分かってるよね?」
「当然。まず使う魔力の量を決めて、そこから使いたい属性に変化させその後細かい術式に使う魔力を決める、ですよね?
例えば『ファイアーボール』なんかはまず火属性に変化させ、そこから『火の玉を出す』という術式に魔力を振り分ける。そして『射出する』という術式に魔力を込めるわけだな。火属性の部分により魔力を込めればより熱を出し、『火の玉をだす』部分に込めればより火の玉はでかくなり、『射出する』部分に込めればより早く撃てる。
「うん大体大丈夫だね。他にも詠唱で発動とかあるけど、まあそれはまた今度で。無属性魔法の場合その属性に変化させる、という手順を行わず一つの術式だけで魔法を発動させているわけだね。」
え?そんなの普通……
「そう、威力や効果はかなり低い。けど大きなメリットが二つ。一つ目は状況によって振り分ける魔力を変える必要が無いってことだね。使う魔力を決める→発動、という風に発動までの手間が属性を使う魔法に比べてかなり早い。二つ目は見えないってこと。魔力なんて所詮目に見えないぼんやりとしたエネルギーだからね。属性を一切変えずに魔力をそのままエネルギーとして使う無属性魔法も見えないってことだね。無属性魔法はまあ汎用性特化って訳だ。とっさに出せるし見えないからよけにくいし」
師匠の口調で軽く思えてしまうが相当厄介だな。発動が他の魔法に比べてかなり早いんなら魔法の撃ち合いではまず勝てない。近接戦をしようにも近づけず一方的に撃ち込まれる可能性がある。どうやって戦えばいい?
「そして最後にあいつらの目的なんだが一言で言うと上手くいけば戦わずに済むかもしれないんだよね」
はい?え、じゃあ今どうやって戦おうかとか考えていた俺の努力は一体?
「あいつらの星は発展し過ぎた兵器を使ったせいで生物が住めなくなったから滅びたんだよね。だからこそある程度発展した文明を壊すことで滅びないようにするためだ。別に無差別に殺したり支配したいわけじゃない。だからフリエちゃんを使う必要性はないはずなんだよ」
なら話し合いでフリエさんを返してもらえる?戦わなくてもいい?
「ああ、もちろん戦う可能性もバッチリあるから対策はちゃんと考えておくように」
……釘を刺されてしまった。
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「お兄ちゃん、やめとこうよ!そんな危ないことする必要ないって。ノアって人もフリエさんを殺すなんて言ってないしあえて危ない事をする必要はないよ!」
ここで救出するのに反対したのはシアだった。シアはそもそも俺以外とは関係が薄い、だからわざわざ助けに行くことに必要性を感じてない。
さっきまではデリュージの目的についてもなにも知らなかった。だからフリエさんを利用して危ない事をするかもしれなかったから特に何も言わなかった。
でも少なくとも好んで殺したりはしないような連中だってことが分かった。ならシアとしてはもしかしたら戦うかもしれない奴らの所になんか行きたくないようだ。
「でもシア、半年ぐらい眠らせるとは言ってたんだ。フリエさんを傷つける可能性はある、なら助けに行かないと」
「それでもお兄ちゃんが行く必要はないじゃん!フリエさんは貴族なんでしょ?ならお家に報告してさ、騎士さんにでも助けてもらえばいいじゃん。わざわざお兄ちゃんがやらなくてもあの人は助けてもらえるよ。」
「でも多分騎士団とかが動くには時間がかかる、その時間を彼らが待っててくれるなんて限らない。もしかしたら今も危ない目にあってるかもしれない。だからこそ俺が今すぐ行かなきゃいけないんだよ」
友達がもし辛い目にあっているんならすぐにでも助けなきゃ、ここで逃げるのだけは絶対にダメなんだ。
「まあ安心するんだねシアちゃん、俺がいれば絶対にミカは死なない。保証するよ」
そうやって俺がどうやってシアを説得するか悩んでいた時、いきなり師匠がシアを説得しだした。
(シア視点)
私はクロンさんの話を聞き終わった後、あの女を助けに行こうとしてるお兄ちゃんを何とかして止めようとしていた。
もし誘拐犯達が頭のおかしいヤバい連中だったら、助けに行かなくても危ない目にあったかもしれないけどクロンさん曰くちゃんとした目的をもっていて助けに行かなかったからって大惨事になる訳じゃない。
ならお兄ちゃんが危ない目にあう必要はない。あの女も命の危険がある訳じゃない、なら別に逃げたって何の問題もない。
それにライバルが一人、半年ほどとは言え消えてくれるんだ。私としてはむしろ歓迎ものだ。
「まあ安心するんだねシアちゃん、俺がいれば絶対にミカは死なない。保証するよ」
そんな時、いきなりクロンさんが話かけてきた。
「ミカが危険な目にあうのが心配だから止めてるんでしょ?なら大丈夫、絶対に死なない死なせない。安心して送り出して構わないよ。」
「でも本当にあなたがいれば大丈夫って保証はあるんですか?確かに私やお兄ちゃんよりは強いんだと思います。でも本当にあいつらを何とかできるんですか?」
「ミカが俺のことを信頼している、それだけじゃダメ?愛するミカの言葉が信頼できない?」
うっ、それを言われると痛い。お兄ちゃんが信頼しているんだから私も信頼しなきゃていうのはある。
「でも……」
「君が心配しているのは本当にミカのことだけ?違うでしょ、もしフリエちゃんが帰ってきたらミカが取られるかもっていう心配もだよね。なんせフリエちゃんは君よりも長くミカと関わっているからねえ」
「っ!」
誰にも聞こえないようにささやくように言われたその言葉を聞いて私は自然と数歩クロンさんと距離をおく。
「ライバルが減って大歓迎~とか考えているんなら止めておいた方がいい、ミカはそういう考え方を最も嫌う。ばれたら嫌われる、で済んだらいいけど……」
一つ一つ私の嫌がることを言っていくクロンさんに私は顔を歪ませるが、何も言えない。図星なので一切反論もできない。
「それでも止めるんなら取引だ。もしこのままミカが助けに行くのを許して、更に君もついてきたらなぜ俺が君とミカとの結婚を認めないかの理由を教えてあげよう」
圧倒的に不利な状況に更にずっと知りたかった情報という極上の餌まで差し出された私に選択肢はなかった。
「分かりました、私もついていきます。」




