事件はいつも突然に
「誘拐、犯?」
突然聞こえてきた声の方へ顔を向けるとそこには白い『なにか』があった。
蛾などがつくる繭のような、はたまた白い布をただ被ったような。
一言では形容し難い『なにか』がそこにあった。
声の高さから男性だと分かるがそれ以外は何もわからない。目も髪も口も体型も何も……
「初めまして少年少女諸君、まずは自己紹介をしよう。俺はノア、『大洪水』っていう組織の69代目当主だ。以後よろしくね」
組織?意味が分からないがとりあえず警戒は解かない。
「とりあえずそこの、フリエ・アイズちゃんだっけ?俺と一緒に来て学園やら研究所やらを壊すために半年ぐらい眠っててもらえない?」
「嫌です」
「だよねー、だからちょっと手荒に行かせてもらうよ☆」
そうして、フリエさんに手を伸ばすノアって人。俺は慌ててその間に入ろうしたが、まるで蜘蛛の巣にかかったように全く体が動かない。
周りを見ると、他の三人も同じように顔を歪ませているが一歩も動けていない。
「『糸』、はい拘束完了。じゃあこの娘はもらっていくよ」
くっそ、今までたくさん修行したのにいざって時には役に立たないのかよ!
「まあ、そんな顔しないで。ミカ君だっけ?俺と君とじゃ生きてる年数も知っている知識の量も大きく違う。この結果は当然のことだよ。ってええ!?」
俺は足に生命力を集中させて体を無理矢理動かす。当然その分他の部分は弱くなっているので腕や首が悲鳴をあげるが構わず突き進む。
俺の体がどうなろうと知ったことか、そんなことよりも友達を失ってたまるか!
「こりゃ驚いた、結構ガチガチに縛ったのにそれでも動くなんて、凄い気合いだね。でも根性だけではどうにもならない状況もあるんだよ少年」
彼が指を鳴らすといきなり顎に殴られたような衝撃が襲ってくる。
生命力を足に集中させていたのでその衝撃に耐えきれず俺は簡単に意識を手放してしまう。
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最後の瞬間視界に映ったフリエさんの顔がとても記憶に残った。
今にも泣きそうで怯えているような……仲間にそんな顔をさせないたまえに強くなったはずなのに、どうしてこうなったんだ?何が悪かったんだ?一体何が……
「おい、さっさと起きろバカ弟子!」
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目が覚めたら見慣れた天井が目に入ってきた。ここは、俺の部屋?
「その思考の先はあまり良くないな、少なくともお前には似合わない。」
隣を向くとそこで師匠がリンゴを剥いていた。ってあんたが食うんかい。
「お前ら『デリュージ』に会ったんだろ?まあ運が悪かったな、あいつらは今この星にはない技術を持ってるからな。少なくともタネを知らなきゃ初見じゃ絶対に勝てんぞ」
まるで彼らを知っている風に話す師匠に俺は疑問を持つ。
「師匠は彼らのことを?」
「ああ、ノアが69代目当主って言ってたでしょ?俺は初代なんだよ。だからあいつらが何なのか、何が目的なのかも知ってる。」
師匠が彼らの初代当主?いや、そんなことはどうでもいい。フリエさんを助ける方法を知らないと……
「師匠、当然教えてくれますよね?彼らの居場所、彼らの技術とやら、フリエさんの助け方を」
「うん良いよ。でもその前に一旦下に行こうか、2人にお前が起きた事を伝えなくちゃ。凄い心配してたよ?」
そっか、シルド君とシアが……なら早く顔を見せないと。心配してくれてたんなら安心させなきゃ。
俺は部屋を出て急いで階段を降りる。
(クロン視点)
ムムム、まさかミカがあそこまで脆いとはな。何となく察してはいたが、『失う』ということにあれだけ抵抗が無いとはなぁ。
ただ友達が攫われた、それだけであんなにネガティブになって……世界を恨みかねなかったぞ。
純粋過ぎなくらい純粋で気持ち悪いくらいに優しい、それがこういう形で弊害として出るとは。
万が一、本当にあいつが何かを『失った』時、ちとやばそうだ。
今後はちょっと本気を出してあいつをサポートしていかないと……最悪この数兆年、いやそれ以上の努力が無駄になりかねない。
今後はあいつに付きっきりだな。全く、まだ生まれてたった20年なのに苦労が絶えないなあいつは。
まあだからこそ面白いんだがな。




