シアの実力
現在森の中、大熊討伐の依頼を受けてここにいる。
正直俺はシアの実力なんてまるで分からない。
師匠なら一目みたら相手の実力が分かる、みたいな技があっても不思議じゃないが残念ながら俺はまだフリエさんみたいな駄々洩れの魔力ぐらいしか分からない。
相手がどのくらい強いかなんてよくわからないし、師匠みたいに隠していたさっぱりだ。
前置きが長くなったがそんな訳で俺はシアの実力は知らないので内心ハラハラしている。
そもそも最後に会ったのがシアが四歳の時だ、「大丈夫、任せて♪」とは言っていたもののまず戦えるのかすら分からない。
そんなこんなでずっと頭を悩ませていたらいつの間にか獣の匂いが漂ってきた。
大熊はざっくり大きさは四足歩行の状態で3メートル程ぐらい、茶色い長い毛に鋭い爪、そして大量の涎を垂らしていた。
そんな馬鹿でかい大熊にシアは何のためらいもなく一人で近づく。
「シア!一人で大丈夫!不安なら俺に任せていいからね!?」
無防備に歩くシアに俺はつい不安気に呼びかけてしまった。
そんな俺の心配などどこ吹く風で間合いを詰めていくシア。
シアの得物は短刀、間合いはかなり短い。対して大熊の腕は2メートル近く、正面から挑むには無謀にも思える絶対的な間合いの差。
しかしシアはそんなの気にせずに歩を進め熊の間合いに入っていく。
熊が腕を振り上げシアの命を取ろうとしたその瞬間、文字通りシアが目にも止まらない速さで熊の懐に潜り込み熊の喉を掻っ切る。
綺麗に頸動脈を切れたのか噴水の様に熊の首からち血が溢れ出す。
倒れる体に押しつぶされないように即座に移動して初めて殺気を納めこちらに近づくシア。
「どう?私も成長したんだよ?お兄ちゃん。」
「うん、びっくりしたよ。今のは『気』?出来るようになってたの?」
いや~、本当にびっくりした。まさかシアも出来るようになっていたなんて…やっぱりシアも才能あったか。
「お二人さん、『気』というのは自らの生命力を操る技術でしたでしょうか?と。」
「よくご存知で。うちの村では一つの流派として受け継がれているんです。
平均的に見て他よりは早く習得出来る傾向にはありますけど、それでも25歳ぐらい…」
「お兄ちゃんは村を出る時にはもう使えてたけどね」
俺は生まれつき何となく生命力を感じ取れた。村の爺さん婆さん達に聞いても流石に何もせずに感じ取れるのは今まで一人もいなかったそうで、不思議がられてたなぁ。
「え、ミカ君もその気ってのを使えるの?今までそんなところ見たことなかったけど…」
「まあ、気もメリットばっかじゃなくてデメリットもありますからね。」
気は一見消費も一切なく身体能力強化をしている様に見えるけど、実際のところ体の中の生命力をやりくりしてるだけだ。
確かに消費なく一部は強化できているが逆に他の部分の耐久力や能力は確実に落ちている。
今のシアみたいに一部を特化させてどうにかなる自信があるなら使うが、そんな保証がなければ強化出来るのは本当に極々僅かだ。
二人が気づいてなくても全然不思議じゃない。
シアみたいに身体能力の強化に使うのならともかく俺は少し応用した使い方してるからな、分かる方が普通じゃない。師匠みたいに…
「まあ、とりあえずシアが十分に戦える事が分かって良かった。これで安心だね。」
「?安心ってなにが?そういえばわたし達特に説明がなくこの依頼に来たけどどうしていきなりこんな依頼に来たの?シアちゃんの力を確認するだけなら、模擬戦だろうとなんだろうと色々あるのにどうしてわざわざ命の危険を冒してまで冒険者の依頼に連れて来たの?」
「う~ん、師匠に言われたから連れて来たんだけど…」
考えてみればそうだ、わざわざこうする必要は全然ない。なんで敢えて依頼に行かせたんだろう?
まあいっか、帰ったら師匠に聞こう。
「とりあえず帰りましょうか、師匠に聞いたらきっと分かりますよ。」
「そうそう、やる事終わったら早く帰らないとこ~んな誘拐犯に狙われちゃうからね~。」
その声はいきなり頭上から聞こえてきた。
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(クロン視点)
「や~っとこさ餌にかかったか。」
あいつらどうせ、俺の存在気づいてないくせに変に慎重なんだよなぁ。
何度も何度もわざと隙を見せてやっとこさ食いついたか。
お陰様でもう五年だぞ五年!あのバカの幼馴染が来たせいで更にフリエちゃんは奥手になってめんどくさいし、こちとら三年前にはもうあの二人が恋仲とか諦めてるのにそのチャンスがないしあ~めんどくせー。
やっとだ、やっとこさこのごたごたが終わりミカを連れて帰れる。
長かった、もうフラグとか知るか。全て叩き壊してさっさと帰ってやる。




