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クロン〜チートすぎる生物〜  作者: 黒白灰色
1章 とある若きA級冒険者編
30/81

クロンの技(アルカ視点)

剣を打ち合う、シン君以上の剛力で弾かれる、不知火で後ろに下がり体勢を立て直す、一瞬で追いつかれる、剣を打ち合う。

このループが延々と続く。

このループをどうにかして抜け出さないといずれ斬られるが、迂闊な事をすれば大きな隙を晒す事になる。


どうするか悩んでいる間にも容赦なく爺さんの剣は襲ってくる。

クッ、腕を薄く斬られた。

大した傷ではないがどんどん追い詰められている証拠だ。

ええい男は度胸!ここは賭けだ。


俺は剣を弾かれ、あえて後ろではなく前に突っ込む。

こっちの攻撃は当たりさえすれば充分な効果があるが爺さんの攻撃は間合いの内側に入ってしまえば簡単には剣を振れないだろう。

そうして懐に入ろうとした瞬間、右側から寒気がした。

とっさに剣を立てて防御すると今までとは比べ物にならない衝撃が俺を襲った。

とっさの事に反応出来ずあっさり吹き飛ばされ地面を転がる。


「悪くないアイデアだったけど手加減できてるって事(イコール)油断してるって事じゃない。

殺そうと思えば直ぐに殺せる程余力を残しているって事なんだよ。」

今のは、俺が懐に入るよりも早く打ち合って振り切った腕で剣を振ったのか?

意表を突いて動き鈍るかと思ったが全くそんな事は無かった。

あらゆる基礎能力が高すぎる、特攻して隙を創ろうとしてもあっさり対応されるどころか寧ろこっちの隙を晒すようなもんだ。

全身が悲鳴を上げる、痛みが俺に頭を回す事を許さない。

どうやって一太刀入れる策どころか次の打ち合いをどうやって凌ぐかすら思いつかない。

そしてこんなにも俺は隙だらけだというのに爺さんは油断して隙を晒す事さえしてくれない。

ーー考えていたより遥かに俺と爺さんの間にある差が大きすぎる。

手加減されてこのザマとは、本当に爺さんを殺し切れるのか不安が俺を覆い尽くそうとしてくるーー

嫌、今回俺を助けてくれた人達にこんな心持ちじゃ申し訳無い。

どんなにボロボロになっても必ず爺さんを殺すんだ。


「良いね、良いね。

決死の覚悟で向ける俺への殺意、今までそれを向けた奴は何人もいたけど、そんなに恨み云々悪意ゼロで向ける奴はそうはいない。

まるで勇者様のようだ、かっこいいぞアルカ。

きゃー素敵♪」

だからこそ、と一拍置いて

「お前も知らない俺の技を一つ披露してあげよう。

ハーフエルフのお前の数百年、たったその程度の時間じゃ決して俺に辿り着く事などできはしないという事を教えてあげるよ。」


************************************

青年が一人いる。

彼の膝を震わせながら立ち上がるその姿はさながら勇者。

場所が違えば英雄となり人々の希望となり得る存在だ。

しかし相対するは国を落とす怪物、人も物も何もかもを破壊する悪魔の如き力、決して青年では立ち向かえる相手ではない。

力の差を見せつけられ、ボロボロになりながらもなお立ち上がり剣を持ち立ち上がる事を決して人は勇気とは言わず蛮勇と呼ぶだろう。

けれども青年の持つ情熱はまるで業火の如く。

まるでこの世の全ての苦難を退けてしまいそうな強い覚悟。


しかしそれでもその怪物には、

“クロン”に青年のその情熱は届かない。

なぜなら“彼”は…

************************************


爺さんが空高く跳び剣を振り下ろさんとする。

爺さんの技、全く得体が知れない。

だが空中なら軌道が変えられない、絶好のカウンターチャンスだ。

どんな技でも打たせなければ何の意味もない。

ただ正面から行くと爺さんの反射神経ならカウンターだろうと魔法だろうと簡単に防がれそうだ。

だから、後ろから攻める!


爺さんより高く跳んで背後に並ぶ。

「なっ!」

「『ファイアボール』!」

爺さんが珍しく驚きの声をあげ、俺の魔法が直撃する。


だがそれは俺がシン君にやったような冷静に考えれば簡単に分かる露骨な罠だった。

勝負の決着を焦り、わざわざ身動きの取り辛い空中戦を自分から選び分かりやすく剣を振り下ろそうとする。

そんな素人が陥りやすそうなミスを爺さんがする訳もないのに体の痛み、そして数秒前の言葉でそんな行為が技かと考え待ち焦がれた爺さんの隙だと誤解してしまった。

そんな誤解の代償は…


「『陽炎』」

やったという手応えの変わりの脇腹の鋭い激痛だった。


「ガハッ!」

地に落ちる瞬間目に入ったのは空中を浮かぶ爺さんの姿だった。


************************************


「気持ちは分かるよ。あんな状況なら絶好のカウンターチャンスだと思うのが普通だ。

だからこそそうなってしまうのが普通の状況で冷静になれる頭が身についていて欲しかったんだけどねえ?」

地面に這いつくばる俺を見下しながらそう語る爺さんの言葉が嫌に遠く聞こえる、視界もボヤけてる、喉が渇く、体が寒い。

出血がやばいな、こりゃ内臓までイッたか?

「さっ、きの、は……どう、なって」

「ああ、さっきのは『陽炎』、『不知火』の一段階上の技って認識で良いよ。

空を蹴り天を移動する技『空足(からあし)』、これと『不知火』を組み合わせて使う歩法でね?

いかなる場所、状況、体勢だろうと一瞬で加速できて相手にそれに気付かせない、

俺の創った技の中でも傑作中の傑作、お気に入りの技だ。」

血を吐きながら話す俺に意気揚々と語る爺さん。

剣は、離していない。今なら…

「よっと」

苦し紛れに振った剣もあっさり躱され無様に地面にへたり込む。

「いやー、頑張るね〜。

傷もっと開いてマジで死ぬよ?

ってあれ?なんで傷治ってんの?」

こっそり傷を治していた事を見破り不思議そうに話す。

「忘れた爺さん?俺の能力は〘攻撃した場所の生命力を“奪う”〙だよ?」

「あ、なるほど、奪った生命力もお前が自在に使えると。

なんだそっか〜、そんな便利な能力覚えるんたら『気』でも教えときゃ良かったかな?」

でもこれ以上俺には何も出来ない、無理に戦って死んだら意味がない。

奪った生命力の貯蓄も今の回復で使い切ったし、次は間違いなく死ぬ。

「時間稼ぎは充分かな。」

俺は傷が完全に治ったのを確認してから周りの味方を探し叫ぶ。

「誰か!時間稼ぎを頼む!これから儀式に入る。」

そして俺は爺さんに背を向け逃げ出した。

いつもの2、3話分纏めて書いてみました。

ペースが遅れてこれと変えないのどっちが良いですか?

もし良ければ感想書いて頂けますか?

そこ!露骨な感想稼ぎとか言わない!

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