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蒼炎のムト  作者: 金林檎
第一章 屍山血河と蒼き炎
3/4

第2話 世界の裏側の話か……え!?愛の告白じゃ無いの!?

どうも、金林檎です。

またこの作品に目を向けていただき有り難うございます。

それでは第2話をお楽しみください。


 昔々遠い世界の裏側で産まれた化け物は幾年の沈黙を破り動き出しました。

 

 この薄暗い自分だけの世界を一歩また一歩と歩き続けました。


 自分以外の何も無い暗闇の世界でどれだけ間歩き続けたのか、もう化け物本人も分かりません。


 そして幾万年と歩きたその先に化け物は小さな光を見つけました。


 それが異なる世界への入り口である事を、化け物は潜り抜けたその後に初めて気づきました。





■■■■





 夕焼けに沈む校舎の屋上に佇む一人の少女。

 その美しい白髪を風になびかせ、まるで宝石を連想させる紅い瞳は夕日の色に溶け込み幻想的に輝いて見える。

 屋上に着いた僕に気付いたのか、彼女はこちらに視線を向け口を開いた。


「…………来たわね」


 鈴のように美しいその声は僕の耳の中で心地よく響く。

 軽く感動している僕などに気を向ける事なく彼女は話し始めた。


「いろいろと邪魔が入ったけれど昨日の事で聞きたい事があるの。…………いい?茶化さないで答えなさい」


 茶化す?僕が?いつ?僕は何時でも大真面目なのだけれど。

 まぁ彼女の気が済むならここは頷いておこう、そうしよう。

 

「よろしい。じゃあ最初の質問、【珠界】で動ける事といい私の暗示あんじが効かなかった事いい貴方もしかして此方側こちらがわの人間?他の〝執行者エクスキューショナー〟の現地〝補佐官サポーター〟なのかしら?」


 ふむふむ。

 うん、さっぱり分からん。


「残念ながら僕は一般人だよ。ふくとぅす?れいしょう?ってのに襲われたのは昨日が初めてで、そのしゅかい?っていうので動ける理由は僕も分からないな」


「…………嘘はついてないようね」


 我が運命の人は僕の顔をジロジロと眺め、少し考える素振りして黙ってしまった。

 

 少し残念、もそっと声を聞いていたかったのだが。

 

 まぁそれもいいけれど何時いつ本題に入るのだろうか?

 聞いていいかな?

 聞いちゃお。


「ねぇねぇちょっと良いかい?」


「ん?ごめんなさい思考に集中してたわ。何かしら?」


「本題はいつ始まるのかなって」


「…………本題?今話ているじゃない」


「え?じゃあ僕への愛の告白は?」


「あ、愛!!?ちょ!貴方!私茶化ないでって言ったでしょう!?」


「茶化しじゃないよ!?いたって大真面目だよ!?」


「尚更悪いわよ!?そもそもなんでそうなるの!?」


「え?放課後屋上に手紙で呼び出しってもうそういう事でしょ??」


「違うわよ!?」


「違うの!!?」


 ショックなんだけど!?

 これから僕達の放課後ランデブーが始まると思ってたんだけど!?

 え?ホントにあの気持ち悪い怪物の話だけなの?

 マジで???


「貴方もっと危機感を持った方がいいわよ?本当に貴方が特殊体質ならもう〝原罪の魔(フクトゥス)〟である〝屍山血河しざんけつが〟に目を付けられている可能性が高いし、そもそも暗示が効かないなら〝執行者エクスキューショナー〟としては貴方を消すしかないのだけれど?」


 え!?そうなの!!?

 あ、でも何かそれっぽいかも?

 この手の話のお約束的な?

 そっかぁ、でもまぁ。


「君に殺されるなら本望かも?」


 つい本音がポロッと出てしまった。

 

「ッ!貴方は!…………どうして」


 そんな僕を彼女は何故かキッと睨み、胸ぐらを掴み詰め寄る。

 その紅い瞳には薄っすらと涙がにじんでいた。


「…………ごめん。君が僕を助けてくれたのにね。今のは不謹慎ふきんしんだったよ」


 素直に謝る僕を見てハッっとなった少女は気不味そうに手を離し呟いた。


「…………本当に何なのよ貴方は」


「貴女の運命の人だよ?」


 へい!ウェルカム!!僕の胸は空いてるぜ!?


「……………………話しを戻すわよ?いいわね?」


「あ、はい」


 あの目は知ってる、今朝の東城くんと同じだ。

 マジなヤツじゃん。


「貴女が此方こちらの人間じゃ無いのはわかったわ。記憶を消せない以上機密保持の為一般人の貴方を消さないといけないのは間違えじゃ無いの」


 嘘ですやん。

 やっぱり死ぬの僕?


「早とちりしないで、殺す積もりなら暗示が効かないと分かった時に既にしてる」


 そうかな?普通にテンパってたような?

 

「それじゃあ僕はどうなるのさ?」


 頭にクエッションマークを浮かべる僕を見て彼女はニヤリと笑いこう言った。


「貴方、私の〝補佐官サポーター〟になりなさい。拒否権なんてないわよ?断れば規定に則り貴方を消すわ」


「了解したぜ、ボス」


 迷いなく即答する僕の顔を彼女はポカンと見つめた。


「その順応の早さは何なの??私が言うのもなんだけど貴方それで良いわけ?」


 困惑する彼女に向けて、僕はサムズアップと共に答えた。


「いいよ」


 こちとらもう添い遂げる覚悟だよ舐めんな。

 

「そ、そう。まぁ、話が早くて助かるわ」


「で?説明してくれるんだよね?昨日の事とか僕達のこれからとか」


 役所にはいつ届けを出すかとか、結婚式場を何処にするとかさぁ!?


「…………何かとでもない勘違いをしている気がするのだけれど。どのみち貴方は私の〝補佐官サポーター〟になる事を了承したのだから嫌でも関わらせるわよ?いいわね?」


「ああ!大丈夫だよ!!」


 子供は2人は欲しいなぁ、家は地元に建てるのがいいよね?実家が近いと安心だし!


「じゃあ説明するわよ?」


「おなしゃす!」


 ばっちこいすっとこどっこい!!


「貴方は楽園エデンを知っているかしら?」


「エデン?あのアダムとイヴ的な?何だっけ?りんごを食べたら追放されたとかだっけ?」


「そう、原初の人間アダムとイヴは一匹の蛇に騙され、禁断の果実を口にし無垢むくを失った。それが人間にせられた原罪」


 そうそう、そんな話だったね?

 うん、漫画で読んだことがある。


「その罪を理由に人間は楽園エデンを追放された。そして人間以外にも楽園エデンを追放された者がいる。それが人間に禁断の果実を食べさせた存在〝蛇〟」


「あ、蛇も追放されたんだ。まぁ考えてみれば元凶だし当然ちゃ当然か」


「そう、けして許される事のない悪行。その報いで〝蛇〟は知性を消され、四肢を切断され手足のないただ地を這うだけの存在へと変えられ、この世界におとされた」


 うへぇ、悪い事はするなっていう教訓話かな?

 神話なんてどれもこんなもんだけどエグい事するな。

 まぁ我が国の昔話も負けちゃいないか、怖いよねカチカチ山のタヌキ。


「ここからが本題。〝蛇〟は知性を消される刹那せつなに切断される手足へとそれを移した。世界創生以来初めて生まれた悪という概念と共に打ち捨てられた〝蛇〟の四肢は消滅すること無く、無数に分裂し世界へと散らばった。無数に散らばった四肢の欠片は〝蛇〟の知性と悪性を元とし〝悪魔〟とは別の魔なる存在〝原罪の魔(フクトゥス)〟へと姿を変えた」


 やっと出て来たな原罪の魔(フクトゥス)

 それが昨日襲って来た奴らの親玉か。


楽園エデンにとって本来既に裁かれた筈の〝蛇〟が抱えていた罪が〝原罪の魔(フクトゥス)〟に形を変えて今現在も存在し続ける事は決して許されない。よって〝原罪の魔(フクトゥス)〟を討つ為に楽園エデンより派遣されたのが私達〝執行者エクスキューショナー〟なの」


「え?君って楽園エデン出身なの?まさか天使様?」


 急報!急報!我が運命の人は天使様だったもよう!!

 繰り返す我が運命の人は天使様だったもよう!!

 

「いえ、私達〝執行者エクスキューショナー〟は〝天使〟ではないわ。アレは天の意識を伝える〝代行者〟根本的に上位存在よ。対して私達〝執行者エクスキューショナー〟はあくまでも〝原罪の魔(フクトゥス)〟を討伐する為に生み出された〝原初の人間(アダム)〟の模造品、戦闘能力は特化しているけれど存在強度だけで見れば人間よりも劣るのよ。だからこそ私達〝執行者エクスキューショナー〟の存在は人間には秘匿しなければならないの。個々の強さならいざ知らず、〝原罪の魔(フクトゥス)〟と違って私達は実体を持っているから、総合的に我々は人間には勝てない、魔女狩りなんてされたらひとたまりもないわ」


「あぁ、だから僕を消すって話になったのね。あれ?でも〝補佐官サポーター〟ってのは?」


「〝補佐官サポーター〟は私達〝執行者エクスキューショナー〟に協力する人間達の名称よ。〝原罪の魔(フクトゥス)〟に襲われた生き残りや親族が殺された者達が〝原罪の魔(フクトゥス)〟の討伐を願い、自分達の意思で我々に協力しているの。主に拠点や情報の提供や戦闘のサポートね」


「なるほどね、それで僕は君の〝補佐官サポーター〟になれば身内だから情報漏洩対策で消される必要が無くなる訳だ。あれ?これって僕約得では?」


 と言うかこれはもう婚約では?

 やっべテンション上がって来た!


「はぁ、貴方分かっているの?〝原罪の魔(フクトゥス)〟との戦いに巻き込まれるって事なのよ?」


「君と一緒に戦うって事でしょ?燃えるじゃんよ」


 萌えるじゃんよ。


「うっ、貴方はいちいち茶化さないと気がすまないの?」


「茶化して無いんだが???」


 まがうこと無き本心だが?


「…………もういいわ、勝手にしなさい」


 照れ隠しなのか彼女はそっぽを向いてしまった。

 耳が赤いですぜボス?

 可愛いなぁ〜もう。


「改めて君の永遠の補佐官パートナー平泉ひらいずみけんだ。末永く宜しく」


 僕はそっと手を差し伸べ握手待機。

 そっぽを向いていた彼女は少し深呼吸をするとこちらに振り向き手を握ってくれた。


「〝蒼炎〟のムトよ。この街に巣食った〝屍山血河しざんけつが〟を討つまで宜しくね健」

 

 ムトちゃんか、うん!いいね!

 神秘的でいて可愛らしいいい名前だよボス!!

 平泉ムト、いやムト=ヒライズミかいいじゃんよ。


「さっそく補佐官パートナーからの提案なんだけど良いかなムト?」


「……いいわ〝補佐官サポーター〟の提案を聞きましょう健」


「んじゃ遠慮なく。まずは基本に忠実に拠点の提供って事でさ、家来ない?」


「…………はぁ!!?」


「言い直そうか?同棲しようぜムト!!」


「健!!貴方ホントどういう神経してんのよ!?」




 出会って2日目でドキドキの同棲編スタートだぜ!!




最後まで読んでいただき有り難うございます。

楽しんで頂けたでしょうか?そうであれば金林檎は嬉しいですね。

それでは次回も良ければ宜しくお願いします。

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