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蒼炎のムト  作者: 金林檎
第一章 屍山血河と蒼き炎
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第1話 教室の中心で愛を叫ぶ

どうも、金林檎です。

本日は2話連続更新です。


 昔々遠い世界の裏側で一人の化け物が産まれました。


 何も無い世界の裏側に何年、何十年、何百年、何千年。

 長い長い時間の流れの中、化け物は其処にたった一人で佇み続けました。


 幾千年ただこの暗い世界に有り続けた化け物はふと、動き出そうと思いました。


 この思いつきこそが寂しさと言う感情である事を化け物が知るのは、まだ少し先の話。






■■■■





 ハローハロー本日は晴天なり本日は晴天なり。


 何時もよりスッキリとした朝の目覚めは心地よく、今日は一日吉日だと暗示させてくれる。

 何故か胸の高鳴りが収まらない。

 だが決して悪い気持ちでは無い。

 今日の自分は昨日までの自分とは一味違う。

 そんな根拠の無い自信が胸の奥から次々と湧き上がる。

 

「僕は一体どうしてしまったのだろうか」


 気分が良い。

 最高だ。

 そんなふわふわとした気持ちで学校へと向かう。


 今朝は何故か父ちゃんと母ちゃんに抱きついてしまった。

 後 妹の名前を早く決めてくれと駄々をこねた。

 ホントどうしてかは分からないが何故かそうしなければならないと思ったのだ。


「……ん?んん?」


 通学中に横切ったショッピングモールがやけに気になった。

 何故だろうか。

 嫌な事があったような、はたまた最高に良い事があったような。

 記憶の片隅に薄いもやがかかったようだ。

 だが気にしない。

 ()()()()()()

 気分は依然として最高のままだ。


「皆のもの!おはようなのだー!!」


 ルンルン気分でクラスの皆にご挨拶。

 そんな僕をジト目で見る無礼者が一人、僕の親友である東城くんだ。


「相変わらずだな健の字。今日は一段と五月蝿いから少し黙れ」


「ねぇねぇ聞いておくれよ東城くん!今日の僕は最高にハッピーなんだよ!なんでか分かるかい!?何故か僕は分からない!!」


「聞こえないのか?いいから黙れ」


 ご覧の通り凄く仲良しなんだ。

 今日の最高の気分を彼にお裾分けしたいのに、奥ゆかしい東城くんは遠慮してしまった。

 僕達の仲なんだし遠慮なんてしなくていいのに。


「おい健の字、気付いているか?」


「ん?なんの事?」


「…………いや何でもない、忘れろ」


「え〜気になる〜」


「黙れ」


「ほ〜い」


 東城くん様子が可怪しいな?あ!僕もか!?あははは!!

 そんなこんな東城くんとおしゃべりしていると、教室の廊下側が賑やかになってきた。

 なんだろう?


「あ!井上さんだ!おはよう!」「久しぶりじゃん体はもう大丈夫なの?」「顔色は良さそうだね?良かった!」「ノートとってたよ!後で見せてあげるね!」


 そうそう井上さんだ。

 暫く入院してたんだったけ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「チッ、気に食わねぇ」


「ん?どうしたの東城くん?」


「五月蝿い死ね」


「辛辣ぅ!!?」


 何だか今日の東城くん何時にもましてツンツンしてるな!?

 デレは無いのかデレは?このツンデレくんめ。


「……ねぇ、そこの貴方」


「うお!?びっくりした!え?井上さん?」


「ああん?何の用だ?やんのかコラ」


「そして東城くんは何で喧嘩腰なの??」


 ツンツン期なの?


 おっと井上さんを待たせてちゃったら悪いよね。


「…………」

 

「ごめんごめん、で?どうしたの…………ん?」


 あれ?井上さんを見てると何かが引っかかるな、なんでだろ?

 何故かその何かを思い出さなければいけない気がする。


「もう大丈夫そうね」


 井上さんは僕の顔を覗き込み、

 不意に井上さんが僕の頬に片手を添えた。


「…………ぁ」


 その瞬間、僕の脳裏に衝撃が走る。

 

 ()()()()()!!


 僕は昨日の事を、あの運命の出会いを思い出しのだ!!

 僕は頬に添えられた彼女の手を力強く握った。


「!?」


 驚いたのだろう、彼女の涼しげな表情が一瞬強張る。

 そんな事などお構い無しに僕は溢れるこの素晴らしい感情を力いっぱいに叫んだ。


「これは運命だ!!結婚してください!!僕が必ず貴女を幸せにしてみせます!!」


「ふぇ!!!!??」


 咄嗟に出て来た声はなんとも愛らしいものだった。

 なんてこった可愛いぞ僕の運命の人!!

 たまらん!!


「昨日の怪物の事とか!どうしてあんな化け物と戦っていたのかとか!あの蒼い炎は何なのかとか!その他諸々気になる事は山積みだけど!そんな事よりも結婚しよう!学校を卒業したら直ぐにでも!!」


「ま、待って!貴方どうして昨日の事を覚えているの!?確かにちゃんと消した筈なのに!」


「そんなの愛の力に決まっているだろう!!!?」


「ええぇぇぇ!!!!???」


 世界の中心ならぬ教室の中心で愛を叫んだ。

 そのには騒然とするクラスメイト。

 顔を真っ赤に染め上げる運命の人。

 そして拳を振り上げる大親友の姿があった。


「ふん!!!」


「あぱらちみやさんみゃく!!??」


 痛い!凄く痛い!!

 僕は般若のごとく表情をする東城くんに抗議の声を上げた。

 だって凄く痛いいのだもの。


「な、なにするのさ東城くん!?」


「五月蝿い黙れ」


「理不尽!!?」


 何がそこまで東城くんを怒らせてしまったのか?

 謎だ、僕は運命の人に求婚していただけなのに。


「おい井上」


「……え?あ、はい」


「この馬鹿とどういう関係なのかは詮索しないが、積もる話は後にしてくれ。見たら分かるだろ?今のコイツは正気じゃねぇ」


「た、確かに。いえ、でも結婚とかは、どうしたら?」


「はぁ、てめぇまで混乱してどうするよ」


 我が運命の人の人との会話に一区切りさせると、東城くんは僕の首根っこを持ってそのままズルズルと引きずって席に戻った。


「東城くん東城くん、僕はまだ運命の人とまだまだ語り合いたいのだけど??」


「……………………もうすぐホームルームだ。黙って席につけ」


「むむ!!それもそうだね!分かったよ東城くん!!」


「チッ、分かればいいんだよ分かれば」


 運命の人とのひと時も大事だけど、親友との学園生活も大事にしないと。

 ()()()()()()()()()()()


 そんなこんなで午前の授業も終わり、待ちに待った昼休み。


「一緒にお昼しよ「ふん!!」ブハッ!!?」


 運命の人をお昼に誘おうとしたら東城くんに殴られたでござる。

 何故だ、解せぬ。


「ゲホッゲホッ、なにするのさ東城くん。僕はただ彼女をお昼に誘おうとしただけなのに」


「今日は私と食う約束だろうが。それに井上も井上としての生活リズムがあんだろ?放課後まで待て」


「ブーブーブー」


「黙れ殺すぞ」


「殺害予告!!?」


 放課後までおあずけとかそりゃないぜ。

 駄目だ我慢できない。

 こうなったらこっそりと抜け出して運命の人の下へ行くしかないよな!!?


「東城くんお昼の前に僕お手洗いに言ってくるね?」


「殺す」


「え!!?」


「殺す」


「追い打ち!!?」


 ゴクッ、あれはマジな目だ。

 どうしよう?


「大人しく放課後まで待て馬鹿」


 もぐもぐとお弁当を食べながら東城くんは僕から目を離さない。

 クッ、残念だけど運命の人とのランデブーは放課後までおあずけか。


 あ!唐揚げ取られた!!?


「東城くんそれ僕の唐揚げだよね!!?」


「五月蝿い黙れ」


「理不尽再び!!!!?」


 どうしたのさ東城くん!今日の君は暴君のようだぜ!?


 あ!今度はタコさんウインナーが!?


「美味いな」


「えへへ、そう?実はそれ僕が作ったんだ」


「作った?飾り包丁をしたってことか?」


「ううん、豚の腸詰を一から作ったの」


「……………………マジかよお前変態だな」


「全国のウインナー生産者に謝ろうか!?」


「お前が謝れ」


「なんでさ!?」


 理不尽が過ぎないかい東城くん!?


「……………………なぁ健の字。悪い事は言わねぇからあの女は辞めとけ、後悔するぞ」


「え?なになにヤキモチかい東城くん?」


「そうだよ」


「……………………ほえ?」


「お前は私が養ってやる永遠な、だからあの女は諦めろ」


「フッ、だが断る!!」


「殺す」


「だからなんでさ!!?」


「お前を殺して私も死ぬ」


「まさかのヤンデレ!!?」


 偶になるヤンデレモード東城くん!!

 ヤバいぞこりゃ僕の命が危ない!!

 もしかしたら昨日よりもピンチかも知れない!?

 なんで!?今常パートだよね!?


「も、もちつこう東城くん!!」


「餅ついてどうすんだよ、まったく私は忠告はしたぞ?後はどうなっても知らないからな」


「有り難う東城くん!!僕達幸せになるね!!」


「……………………やっぱり殺すか」


 東城くんが最後にボソッと物騒な事を言っていたが聞こえていない事にした。


 午後の授業も終わり、やっと来ました放課後です。

 今日の出来事でクラスメイトからは何故か英雄扱いを受け、親友から命を狙われる事になってしまったが気にしない。


 何故なら僕は今から運命の人に会いに行くのだから。


 そっとポケットから何時の間にか僕の机に入っていた手紙を取り出す。

 そこには見事な達筆でこう書かれていた。


【放課後校舎の屋上で待っています】


 もしかしたら今日は人生最高の日になるかもしれない。


 そんな思いを胸に僕は屋上に続く階段を駆け上がった。

 


最後まで読んでいただき有り難うございます。

次回も是非読んでいただければ幸いです。


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