第3話 気になるあの子を実家にご招待
どうも、金林檎です。
また、この作品を読みに来てくださり感謝の言葉もありません。
それでは第3話をお楽しみください。
昔々の遠い昔、暗い世界の裏側から抜け出した一人の化け物は、この光に満ちた世界で不思議な生き物に出会いました。
彼等は言葉と呼ばれる独特な鳴き声で高度なコミニケーションとり、器用に動く前脚を駆使し様々な道具を作り操った。
見たこともない未知なる物を次々と見せてくれるその生物を化け物は甚く気に入りました。
姿形の無い化け物はいつしか、この不思議な生き物の姿へと変わり、共に生きる事となったのです。
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はい只今ムトを引き連れ、来ました我が家の玄関前。
目を白黒させ付いてきたムトは今だ状況を理解していないのか、はたまた理解して尚信じられないのか中々入ろうとはしてくれません。
じれったいのでムトの手を引っぱり、いざ参らん我が家へと。
「ただいまぁ!!母ちゃん!僕の嫁っ子連れてきたぜ!!」
「ちょ!何言ってんの健!?」
抗議の声を上げるムトに構う事なく玄関の扉を勢いよく開けダイナミック帰宅。
すると居間の方からドタドタと足音が聞こえてきた。
母ちゃんだ。
御母の体なのを感じさせない動きで玄関に滑り込む様に現れムトの両手を包み込む様にキャッチ。
「でかした我が息子!!まぁまぁまぁまぁ!!!なんて可愛らしい子なの!!お名前は?歳は?綺麗な銀髪ね?染めてるの?地毛?あら瞳の色も素敵よ?カラーコンタクト?自前?顔付きも日本人離れしているわ、もしかして外国の方?息子とは何処で知り合ったのかしら?お付き合いの決め手は?何処にお住まいなのかしら?その身のこなしからして格闘技の経験者?ご両親とは一緒なの?ご挨拶は家から?いいわ!凄くいいわ!!まさか娘が産まれる前に娘が出来るなんてもう最高!!あらあら!ごめんなさいね?ちょと興奮しちゃったわ。こんな玄関に立たせっぱなしで、ささ家に上がってちょうだい!!」
「あ、はい」
僕の母ちゃんの圧に押されムトは居間に通された。
ウキウキ気分の母ちゃんがお茶を汲みに台所に行ったのを見計らいムトは僕に話しを振る。
「ちょ、どうすんのよ健!貴方のお母様真に受けちゃったじゃない!早く誤解を解いてよ!」
「待ってムト」
「なによ」
「さっきのお母様はニュアンスが違うよ?お母様じゃなくてお義母様、でしょ?」
「あんた終いにゃはっ倒すわよ!?」
「ベットで?」
「ふん!!」
「あべしっ!?」
殴られた!?痛いよ!?たんこぶ出来てない!?
「で?実際どうすんのよ?この調子で貴方の家を拠点に出来るの?」
僕を殴って落ち着いたのか、ムトは今後の方針を聞いてきた。
「大丈夫大丈夫、僕に任せてよ!」
「…………ものすっごく不安なのだけど?」
デーンと胸を叩く僕を疑論な目で見るムト。
ちょとショックです、はい。
わちゃわちゃと僕達がそんなやり取りをしていると、お茶を持って母ちゃんが台所から戻ってきた。
「お待たせ〜?井上さんは甘いの平気?」
「え、ええ。好き嫌いはありません」
「このあいだ貰った羊羹切ってきたから食べて食べて?」
「あ、頂きます」
モキュモキュと羊羹を頬張るムトを横目に、僕は万を期して母ちゃんの説得に移る。
「母ちゃん聞いてくれ大事な話があるんだ」
モキュモキュと羊羹を頬張るムトを慈愛の目で見ていた母ちゃんは僕の真剣な雰囲気を感じとり目線をこちらに向けた。
若干名残惜しそうではあるが。
めっちゃ名残惜しそうではあるが。
うん。わかるよ母ちゃんムト可愛いもんね。
モキュモキュと羊羹を夢中で頬張るムトちゃんマジカワユス。
「なによ健?母ちゃんいま井上さんを観るのに忙しんだけど?」
「その井上さんの話なのだけど?」
「おい息子、それを早く言いなさいよ」
なんて分かりやすい母親なんだ。
流石僕の母ちゃん話が早くて助かる。
「実はね母ちゃん、井上さんは怪物から世界を守る正義のヒーローなんだよ!!」
「モキュモキュ、羊羹美味し、ん!!?健!!何言ってるのよ!!?あんた頭大丈夫か!!?」
「え!!?そうだったの!?」
「信じちゃったよ!?でも何故だろう確かな血の繋がりを感じる!!」
そりゃあ自慢の母ちゃんですもの、このぐらいの理解力は当然ですよ?
「でも一般人には秘密の存在だから、いろいろと大変みたいでさ暫く家に居させて欲しいんだ。いいよね?」
「当然良いわよ」
母ちゃんの気持ちの良いサムズアップを頂き、僕はムトにドヤ顔を披露。
「ね?大丈夫だったでしょ?」
「待って、ねぇ待って?本当にそれで良いの?一般的に考えて可怪しくない?」
「家だと普通なんだけどなぁ〜」
「…………私が間違えてるの?これが今の普通なの?」
頭を抱えて悩み出すムト可愛い。
あと相当気に入ったのか、決して羊羹を離さないのもグッとくるね。
可愛いね。
「さて、と言う訳だから母ちゃん、僕達は今後の作戦会議をするから僕の部屋に行くね?」
「しっかりやんなさいよ〜」
「おけまる〜」
今だ呆然としているムトの手を引き部屋へと連行。
「ムトぉ〜。お〜い大丈夫かぁ?」
まだ意識がぼんやりしているみたいだ。
しょうがない。
「えい」
ムトが手に持った羊羹を僕がムトの口に運ぶと再びモキュモキュと食べ始めた。
「モキュモキュ…………っは!?ここは!?」
どうやら羊羹を食べて落ち着いたのか、ぼんやりしていた意識が戻ったようだ。
ぼんやりしていたムトも可愛いかったのでちょと残念。
「ここは僕の部屋だよ?それよりもさ〝原罪の魔〟探すんだよね?当ては有るのかい?」
「え、ええ。ごめんなさい少し取り乱したわ。普段は〝原罪の魔〟の気配を辿れば直ぐ見つかるはずなんだけど、流石は〝屍山血河〟ね。気配どころか存在の痕跡すら見つからない。悔しいけどさっそくお手上げ状態よ」
「その〝屍山血河〟ってのは普通の〝原罪の魔〟とは違うみたいだね?どういう奴なの?」
「〝屍山血河〟バスディ。ここ五百年の間我々〝執行者〟が討伐する事が出来なかった強力な〝名持ち〟の一体ね。百年前に〝将軍〟率いる〝執行者〟の討伐部隊三百名を鏖殺し、屍の山を築き上げた事から付いたあだ名が〝屍山血河〟。現在確認されている〝原罪の魔〟の中でも五指に入る正真正銘の怪物よ」
「めっちゃヤバい奴じゃん。そんなのがこの街に居るの?うっわ怖っ」
「その割には余裕そうに見えるのだけれど?」
「え?だってこっちにはムトが居るもの。その〝屍山血河〟がどれだけの怪物かはいまいち分からないけど、ムトが凄く強い事を僕は知ってる。だから大丈夫。そうだろう?」
「…………ええ。その通りよ。大丈夫任せなさい。だって私は」
僕が彼女に向ける信頼に応える様にムトは蒼い炎を纏わせ宣言する。
「〝蒼炎〟のムトなのだから」
僕は何の心配もしていない。
あの時見た彼女の強さを僕は疑わない。
真っ向勝負ならどんな怪物だろうとムトに敵う奴なんていない。
だからこそこの街に隠れ潜む〝原罪の魔〟見つけ出し彼女前に引きずり出すのは〝補佐官〟である僕の役目だ。
「よし。じゃあさっそく捜査開始だね。ムトはこの街での戦闘は僕を助けてくれた時以外あるの?」
「〝霊障〟相手なら5回ほど戦り合ったわ」
「ごめん、その〝霊障〟って何?〝原罪の魔〟とは違うの?」
「〝霊障〟は〝原罪の魔〟が使役する使い魔のようなものよ。元々は〝悪魔〟の外法を流用した技術で作られた疑似生命体ね。〝原罪の魔〟は失った知能を取り戻す為に人間を襲い彼等の持つ〝知恵の実〟を簒奪するのだけれども、効率よく人を襲う為にこの〝霊障〟が使われるの」
「ショッピングモールで襲って来た奴ら、めっちゃ強かったんだけどアレで小間使いなの?ヤバくない?」
「〝屍山血河〟の〝霊障〟は特別なの。本来の〝霊障〟ってあれ程強くないし知能もあまり無い、ただ人を襲う怪物なのだけれど。〝屍山血河〟は膨大な数の人間を捕食しているからか、使い魔である〝霊障〟にも〝知恵の実〟の影響が強く出ているの。並の〝執行者〟さえ上回る程の戦闘能力があるわ」
「どうりで強い訳だ。熊ぐらいなら僕でも倒せるけどアレには勝てる気なんてしなかったしね」
「ええ。一般人の敵う相手では無いわ。例え熊を倒せるからと言っても…………え?熊?え?熊を?」
「?…………あ、流石にヒグマじゃあ無いよ?母ちゃんじゃあるまいし。僕だと素手じゃツキノワグマが精々だよ?」
「え?……え?人間ってそんなに強かったかしら?」
ムトは何をそんなに不思議そうにしているのか、僕なんてムトに比べれば塵芥、クソ雑魚ナメクジもいいとこなのに。
「まぁいいや。それでムト〝霊障〟と戦ったのは何処なの?何か法則性が見つかるかも知れない」
僕はいそいそと地図を広げショッピングモールにバツ印をつける。
「そうね。図書館と市民プール、市役所に銀行あと駅前ね」
「ほいほい」
言われた順にバツ印をつける。
ざっと見特に法則性は見当たらない。
「うん分からん」
「そんなあっさり言わないでよ」
「いや、分かんない事が分かった。これで一歩前進だよ?大丈夫さムト〝補佐官〟の僕を信じてよ」
「で?〝補佐官〟の健はどうすんのよ?」
「ふふっ、まぁ見ててよ」
そう僕は取り柄のないただの平凡な一般人だけど、コネクションには自信があるんだ!!
僕は懐からスマホを取り出すと着信履歴のトップに輝く大親友に着信コール。
ワンコールで即座に繋がるシンパシー。
「あ!もしもし東城くん?ちょと助けて欲しんだけど」
「死ねこの浮気者」
「なんでさ!?」
開幕一番に強烈な言葉を頂きスリップフォーエバー。
どうやら今日の東城くんはご機嫌斜めのようだ。
やっべ、どうしよう?
最後まで読んでいただき有り難うございました。
また次回もよろしくお願いします。




