↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あざらし子ちゃんが好きすぎるっ。  作者: 黒舌チャウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/14

ep.9  エサやりとステップと

 ある日の休み時間。


 オレは、廊下の窓から外を眺めていた。



 今日は何をするにも手に付かない。授業もまったく集中できない。



 いや――そもそも、この日は全国の日本男子諸氏が同じ心持ちだろう。



 今日は、バレンタインデーなのだ。



 毎年「今年は、もしかしたら……!?」と淡い期待と共に一日を過ごし、無惨に散っていく日。

 心の装甲は年を追うごとに厚くなっていくのに、装甲の隙間を縫っては襲う寂寥感に身も心も包まれる日。



 それでも――男たちは夢を見ずにはいられない。



 バレンタインデーだから。




 だが、オレが集中できずにいる一番の理由は、白井さんにある。



 今日――


 白井さんの座席の方からずっと、甘い匂いがしているのだ……。

 そして、白井さんの髪からも甘い匂いが……。



 嗅いでない。断じて。


 漂ってくるだけだっ。

 漂ってくるのを嗅いではいるけど、それは生命維持活動の副産物としての発見であって、決して白井さんの髪を嗅いだりなど――



 いや……この際、そんなことはどうでもいい。



 これは…………「何か」を作ってきたに違いない……!



 「何か」ッ!


 今日という日に「何か」といえば、もうそれは……!



 ふっ……。勘違いしないでもらいたいな。

 期待しているわけじゃないさ。

 そこまで身の程知らずじゃあない。



 でも、ほら。

 我らがジャパンには義理チョコという、素晴らしい文化があるのをご存じか?


 

 ――男子への義理チョコで、手作りなんかしないって……?


 やめてよ。


 そんなこと言わないでよね。


 

 やっぱりそうかな……?





「……ん?」



 瞳から浮かんだダイヤモンドを目尻からそっと拭っていると、いつの間にか真瀬が横に立っていた。



「………………」



 真瀬は、口にくわえた「チロノレチョコ」を突き出すようにして、オレを見上げている。



「………………」



 真瀬を見つめたまま顔を近づけると、真瀬が目をつむって――



「――ペンギンのエサやりかッ! 親鳥、小っちゃ! 雛鳥、でっか! 雛のほうがでかい種類もいるけども!」


「ふふ」



 これも、こいつとの「お約束」だ。



「はい、シロー。あげる」


「いつも、かたじけない」



 別の「チロノレチョコ」をポケットから出してオレに渡すと――真瀬は、口にくわえていた「チロノレチョコ」を頬張りながら、ぺたぺたと去っていった。


 

 中学の三年間。最小価格ながらも、真瀬から義理チョコをもらっていた。


 正直、労力とは見合わない気もするが――この一粒があるのとないのとでは雲泥の差。

 いつも、ありがとう。真瀬。





「…………ん?」



 真瀬からもらった「チロノレチョコ」を食べようとしていると、すこし離れたところにいる白井さんに気付いた。



 白井さんの手には、個包装の飴。


 いつもポケットに入れている、ミルクキャンディー。


 飴の種類まで白井さんらしい。かわいい。



 しかし――



 飴を手にした白井さんは、いつもと様子が違った。



 ……なんというか……変なステップを踏んでいる。



 前に踏み出したかと思いきや、くるりと反転して……。

 かと思いきや、また反転――

 今度は前に進んで、後ろに下がって……また反転――



 よく見れば、白井さんの白玉のような顔が耳まで赤く染まっている。



 あれほどまでに熱心にダンスの練習を――



 あいにくダンスの心得のないオレは、ただ見ていることしかできないが……がんばれ、白井さん! かわいい!



  

「…………あっ……」



 オレに気付いた白井さんが小さな声を上げ、顔を覆いながら去っていってしまった。



 しまった。見過ぎた。



 ひとりで練習しているところを見られるのは、確かに恥ずかしい……。


 オレとしたことが……。





「……ん? あれは……」



 白井さんのいたところからさらに後ろに、姫滝の姿が見えた。 


 姫滝は白井さんの姿を目で追った後、一瞬こっちを見て、大きなため息をついて去って行った。


 心なしか、姫滝の頬もすこし赤くなっていたようにみえたが――




 それにしても……やはり白井さんの「何か」は気になる……。


 

 まぁ……あれだよ……。

 きっと、姫滝と友チョコだよ。


 

 義理チョコなんて贅沢は言わない。友チョコでもいい。むしろ、友チョコをください。


 あれ? 「義理」と「友」って、同じなのか?



 いや、待て。

 「男子への手作り義理チョコ」はあり得ないが、「男子への手作り友チョコ」は何となくある気がする。



 ………………。


 ……あぁぁっ!!

 

 そもそもオレって、白井さんに友達として認識されているんだろうか……!

 考えてみれば、話せるようになってからまだ半年も経ってないし。

 話す内容だって、どれも大したことのないものばかり……。



 「頭数(クラスメイト)D」ぐらいの認識なのかもしれない。



 「友達になろー?」

 「いーよーっ」


 みたいなことでもあれば、話は別だが。


 

 あの無垢な心から生まれる単純で確実な約束を――

 いつの間にか身につけた、空気を読む力と「思春期」が失わせた素直さを――


 

「どこに忘れてきちまったんだろうな……」



 ――夕日(昼)に孤独な微笑みをさらして、「チロノレチョコ」を口に運ぶ。



「……ほろ苦いぜ」



 お安いチョコの味は、しっかり甘かった。




 


 

横書きで書いているので、「チロノレチョコ」が降りてきた時は「天才かっ!?(´゜∞゜` )」と思ったんですけど、縦読みだとわかりにくいですねw (´・∞・` )わほ


そして、ガン〇ムネタで通してきた本作についに別作品が…!(´゜∞゜` )お気づき?


「頭数D」。

当初普通に「クラスメイトD」と書いてあったんですが、読み直してる時に急に降りてきてしまって(´=∞=` )

「文字」と「数」で、いい感じ!(´゜∞゜`*)天才かっ!

と、ひとりで盛り上がりました(´=∞=` )暑さで疲れてるんですね



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。