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あざらし子ちゃんが好きすぎるっ。  作者: 黒舌チャウ


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ep8.  おば…おねえさんと犬

 ある日の休日。


 オレは、推している漫画家の新刊を買いに、駅の近くの本屋を目指していた。



 鯖虎(さばとら)ツナ先生の『俺だけなにかとお願い事が叶う神社で「宝くじ当ててくれたら、死後神様にお仕えします」とお願いしたら、1等5億当選したその日にダウナー系女神様に召された話』の最新刊が発売されるのだっ!



 筆遅で有名な、ツナ先生。

 この日をどれほど待ったことか……。




 ルンルンでチャリをこいでいると――



「あっ、センセー! チャウ理ちゃんですよっ!」


「ホントだっ! かわいい! チャウぅぅんっ!」



 車道を挟んだ先にある、町の電気屋さん「穴杯(あなさかずき) 務《つとむ》・エレクトロニクス」の前で騒いでいる、おば…おねえさんが見えた。

 おば…おねえさんは、モフった犬を連れているようだ。



 どうやら、おば…おねえさんは「穴杯(あなさかずき) 務《つとむ》・エレクトロニクス」のショーウィンドウに置かれたテレビを観ているようで――



「舌黒(ぜっこく)チャウ理ですっ。チャウぅぅんっ」



 画面には、両手でハートマークを作り、あざとかわいく微笑むアイドルが。



 舌黒(ぜっこく) チャウ理ちゃん。


 セカンドシングル「完《きゃん》☆壁《ペキ》・需要(ニーズ)」の「鼻ペチャダンス」が、SNS「PigPork」で大バズりした五人組アイドル「1(わん)ドール」のメンバーだ。


 その「あざとキャラ」と、バラエティ番組でみせる「放送作家がついているのではっ?」と思うほどの絶妙な返しで、最近人気急上昇中。



 ちなみにオレは、クールな見た目と圧倒的歌唱力でありながら実は天然おてんば、「西比利庵(しべりあん) 蓮姫(はすき)」ちゃんを推している。



 もちろん、白井さんとは比ぶべくもない。

 当たり前だ。間違えないで頂きたい。

 蓮姫ちゃんは確かに好きだが、白井さんへの好きとは次元が違う。

 蓮姫ちゃんは確かに美人で才能あって性格もかわいいが、白井さんはすべてにおいて別次元に――


「センセー、もういきますよ。帰ってお仕事しないと」


「待ってよ。今、チャウ理ちゃんがすごくかわいいところなんだからっ」



 ……そういえば。


 あの、おば…おねえさん、さっきから誰と話してるんだろうか。



「そんなこと言って。お仕事したくないだけですよね」


「はぁぁっ? 違いますけど。チャウ理ちゃんが観たいだけで、本当はいますぐにでも仕事したい気まんまんですけど」



 スピーカーで通話してるにしては、やけにクリアに聞こえる。音量が異常すぎる。



「もぉぉ。いいから、帰りますよ」


「やぁぁだぁぁっ。帰りたくないっ」


 

 モフった犬が、おば…おねえさんの脚をぐいぐい押している。


 端から見れば犬が飼い主にじゃれているだけだが、会話の内容が加わると、まるで……。



「……こうなったら、力ずくで……! チャウ・フィールドダァァシュッ!」


「だからお前はアホなのだぁぁっ!」


「わーっ!」



 飛びかかったモフ犬が、おば…おねえさんに転がされている。


 これって……いや、まさか……。




「あれ? あれって、チャウチャウ犬じゃん。めずらし」



 振り返ると、チャリを押した姫滝がいた。


 いつの間に。



「姫滝か。チャウチャウ犬っていうんだな、あの犬。――いや、それより…」

「熊田は何してんの? こんなとこで」


「え? ああ、本屋に行くとこなんだ」



 いや、姫滝。あの、おば…おねえさんと犬がさ――



「あー……えっちぃ本、買いに行くんだ?」


 

 行くかっ!

 オレはダウンロード派だっ!



「いや、『俺、召さ』の新刊」


「……『〇れ〇さんの〇感』? なんか……まんますぎてエグくない?」



 言ってない!

 いろいろすごいな、むしろ。



「――『俺だけなにかとお願い事が叶う神社で「宝くじ当ててくれたら、死後神様にお仕えします」とお願いしたら、1等5億当選したその日にダウナー系女神様に召された話』だ」


「あー……そういうタイトルの……。まどかに言いつけちゃおうかなぁ」



 しっ…白井さんにだけは…ッ!

 いや、だから違う!



「日常系ラブコメ漫画だ! 健全な!」


「あははははっ! うそうそ、知ってるよ。鯖虎ツナの、でしょ?」



 むむ?

 姫滝もファンか? やるな。



「姫滝、そういうの読むんだな。意外だ」


「そっちジャンルは普段読まないけどね。以前(まえ)、熊田が読んでるの見て面白そうだったから」



 姫滝といる時に読んでたこと、あったかな?



「あ……じゃなくて。さっき、あのモフった犬が…………あれ?」



 振り返ると、おば…おねえさんとモフった犬がいなくなっている。



 あ、いた。


 かなり慌てた様子で、すでに遠くに走り去っていた。



「ふ~~ん。あーゆーのも好きなんだ?」



 走り去る後ろ姿を遠目に見ながら、姫滝がチャリを寄せる。


 普段着の姫滝って、こんな感じなんだな。

 なかなか、かわいいと思う。



「まぁ……モフってるのもいいけど、短毛種のほうがいいかな。短毛で、肉感でモフってるのはアリだけど」


「じゃなくて、おねえさんの方」


「……あんまり見てなかった」


「見た目気にしてない感じだったし細身だけど、系統的には、まどかっぽい感じだったよ?」

「マジか」



 マジか。



「あ~~っ、浮気だぁ~~」


「なっ!? オレは、白井さん一筋だっ!」


「あははっ! 知ってる。――んじゃ、そろそろ行くわ」


「……おう」



 いつものかわいい笑顔で笑った後、わざとらしくため息をついた姫滝がペダルをくるりと回す。

 右足で大きく立ちこぎしてから去っていく姫滝を見送りながら、オレは思った。



 おば…おねえさん――ちゃんと見ておけばよかった。



 断じて浮気とかではなく。


 ……参考までに。






 

おば…おねえさんとモフった犬は『チャウチャウは今日も忙しいっ。』の「センセー」と「チャウ吉」でしたー \(´・∞・`)/ わー

実は同じ町に住んでたんですねー ”(´・∞・` )

タイトルの最後が「っ。」で共通しているのは、そういう意味もあったんですよぅ(´=∞=`*)むふーん


「穴杯務・エレクトロニクス」に関しては、正直どうしようか悩んだんですけど、どうしても道を走ってる最中の熊田とテレビの内容を共有できる設定が必要で…(´=∞=`;)店名はもう、降りてきちゃったので…w


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