ep.12 社会通念上における膝枕の定義と、現状における角度及び深度、並びに頭頂部の違和に関する考察
膝枕。
地面・椅子等、座った状態の人物の腿部分に、もう一方の人物が横たわった姿勢で頭部を乗せている状態。
「腿枕じゃん」と、言いたくはなるが――
そもそも、今のオレの状況は「膝枕」に該当するのだろうか……。
オレは今、白井さんに対し垂直な姿勢ではなく、水平方向になっている。
いや、方向云々は「膝枕」であるか否かにおいて大した問題ではないかもしれない。
それよりも――
白井さんに対する「深度」の問題なのだ。
後頭部は当然として……いや、これを「当然」と呼ぶわけにはいかないが、今は置いといて――
問題なのは、後頭部だけでなく肩から背中上部にかけて白井さんの感触……か…感しょ…………んぐぅ。
「あ、熊田また起きた」
「熊田くん、大丈夫……?」
――いかん、また気を失っていた。
今回は「ちーちゃん」は出てこなかったな。
え……っと……。
そう、要は頭だけでなく肩まで乗っかってしまっているこの状態を、果たして「膝枕」と定義してよいものかどうか、ということだ。
最近では肩までカバーする枕も存在するらしいよ。
へぇ。
「なんか……熊田、表情ヤバくない? 固まってるし」
「う、うん……。さっきから瞬きもしてなくて……」
いや――この際、「膝枕」か否かすらどうでもいい。
どうでもよくはないが、それよりも考えなければならないことがあるのだ。
「後頭部及び背中、並びに頭頂部」。そう、頭頂部。
なぜ、頭頂部に柔らかい感触が――
待て。
位置関係をおさらいしよう。
オレは今、白井さんに対し水平方向に膝枕をされている。
頭部のみならず、肩まで白井さんの脚に乗っている状況であり、以上のことからもかなりの深度で白井さんの脚に乗っていることが想像できる。
――つまり。
この頭頂部に感じる感触は……。
……白井さんのお腹であると推測される……。
「あ。熊田、また気絶した」
「熊田くん…っ!」
ふ――姫滝、これは気絶ではない。瞑想だ。
磨き上げた鏡のように……さざ波ひとつ立たない水面の如き静かな心――
…………どうしよう……!!
白井さんは普段、お腹のことを気にしている……!
オレは全然気にしないし、むしろ全然アリだと思ってるが、それはさておき……!
オレがヘタに動けば、お腹にオレの頭頂部が当たっていることを白井さんに気付かせてしまう恐れが……ッ!!
恥ずかしがる白井さんは大好物だが、この薔薇の騎士たるオレ自らが白井さんに恥をかかせるわけにはいかないのだ!
……だが、どうする……?
オレの頭頂部がお腹に当たっていると、白井さんに気付かれないように起き上がらなくてはならない。
下方に体をずらしてから起き上がるのがセオリー……。
だが……!
オレが下にずれるということは、すなわち、白井さんのスカートを下に引っ張るかたちになるということ……!
白井さんの現在の体勢的に、スカートがずれるということはないだろうが……さも、スカートを下ろすようなテンションをかけることなど、薔薇の騎士として断じてあってはならない!
……いっそ、腹筋の力のみで起き上がるか……?
起き上がり方としては、かなり不自然にはなるが――
いや、ダメだ。
万が一、お腹の上の……その…………えー……だから……まぁ、ほら……。
とにかく、万が一にも頭頂部が掠めたりなんぞするわけにはいかない。
……どうしたらいいんだ……ッ!
「熊田、起きないね」
「だいじょうぶかな……?」
「……さすがに先生呼んでくる? うちらじゃ運べないし」
「うん……。でも……」
「ん~? もうすこし、このままにしとくぅ?」
「う…うん……」
姫滝、なんだ今の言い方は。
オレが今、どんな思いでいると思って――
――あ。
そうだ。これならば――
明鏡止水!(`・∞・´ )
膝枕はいいですよねー(´・∞・`*)




