ep.11 及び並びに
――ここは……どこだ……?
真っ白な空間……じゃない。
平地だ。野っ原だ。
「どこだ……ここ……」
「ねぇ、キミ」
「おぶ…っ!?」
突然の声に振り返るが、そこには誰もいない。
――いや、いた。
犬だ。
モフった犬が、こちらを見上げている。
「ねぇ。ボクと契約して、魔法チャウチャウになってよ」
あ、そうか。たしかチャウチャウ犬とかいう犬種だ。
この間、姫滝に聞いて始めて知ったやつ。
「ねぇ。ボクと契約して、魔法チャウチャウになってよ」
――しかし、なんだこの犬の瞳は……。
洞穴のような……深淵なる闇をたたえ――
「ねぇ。ボクと契約して、魔法チャウチャウになってよ」
まだ、言うか。
ちょっとしつこいぞ。
「魔法チャウチャウ」ってなんだ。
「魔法犬」じゃなくて「チャウチャウ」に限定していることになにか意味が――
「危ないでちゅのわーーーッ!!」
突如響いた声とともに走る、白い閃光――
次の瞬間には、白い閃光の直撃を受けたチャウチャウが、黒い霧となって散っていった。
何あれ。
「あなたっ! チャウべえの接近を許すなんて、なにを考えてるんでちゅのわっ!!」
白い「閃光のデチュノウェイ」がプリプリと怒っている。
いや――犬だ。
サモエドだ。
「んむぅ? あなた、人間でちゅのわ?」
なぜ、「サモエド」とわかったかというと――
書いてある。頭の上に。
RPGとかでよく見る、コマンドウィンドウのようなものがあって、そこに――
「サモエドプリンセス・ちーちゃん」
と、書いてある。
たしかに「ちーちゃん」はティアラを頭に乗せていて、プリンセスと言われればプリンセスに見えなくもない。
「人間ならば仕方ないですわ。――あれは『チャウべえ』といって、魔法チャウチャウを生みだしては美魔女たちとの終わりなき戦いに誘う悪いチャウチャウなの……」
――あれ? 「でちゅのわ」は?
キャラが定まっていないのか?
いや、それより「美魔女たちとの終わりなき戦い」とは……?
関わりたくはないが、大いに気になる。
「えっと……とりあえず、助けてくれて? ありがとう。オレは熊田――」
「ちょれーーーいッ!!」
「おぶーーーっ!?」
突然、オレに飛びかかる「サモエドプリンセス」。
視界が白いモフモフで包まれ――
――あ……なんだか甘い、いい匂いがする――
~・~~・~・~~・~~・~
「――んなぁ…っ!?」
水中から顔を出した時のように、大きく息を吸い込みながら目覚めたオレ。
ここは……教室だ。
見慣れた天井……ってほど普段見上げてもいないが、いつもの教室の天井だ。
「あ、熊田起きた」
「熊田くんっ、だいじょうぶ…っ?」
姫滝と白井さんの声。
姫滝は、横たわるオレをのぞき込むようにしているのが見えるが……。
白井さんの姿が見えない。
いや……声は真上……というか、正面? から――
「どこか痛くない……?」
オレをのぞき込む白井さんの顔は、上下逆さ。
近い。
そして――
オレの後頭部及び背中、並びに頭頂部に柔らかい感触が。
なんだ……これは……。
「ちーちゃん」に飛びかかられた時に感じた甘い匂い。
どこかで嗅いだおぼえがあると思ったら、今日の白井さんの匂いだった。
「熊田くん……?」
以上の状況を総合的に勘案し、導き出された答えは――
オレは今――
白井さんに膝枕をされている。
プリンひとつと引き換えに魔法チャウチャウになると、美魔女たちとのチアシードをめぐる終わりなき戦いに巻き込まれることになります ”(`・∞・´ )




