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超音速の傀儡人形は冷たい戦争を俯瞰する  作者: あんきも
3章 進化を祝福する核の花火
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19.事務作業

「参謀長殿!基地から連絡だ」

 目的地に到着する前、ヘリのパイロットがシルバートンを呼ぶ。彼女が無線を受け取ると間もなく床に膝を付き項垂れてしまった。

 ヘリが到着しエンジンが静かになった後、シルバートンは皆の面前に出る。


「──皆に言わなければならない事がある。たった今、中部都市のスフォンシアで1発の核兵器の起爆が確認された。中央に位置する企業群はほぼ蒸発、被害は広大過ぎて確認が追い付かない状況だ……」

 口頭でそう告げられてもなんと言うか実感が沸かない、そんな事が本当に起こり得るのか。


「彼処は敵軍の攻撃を回避すべく、我々の伝手で秘密裏に米国との同盟関係を模索していた。その締結がされる前に先手を打ったと言う事か…… それにこの攻撃で先程の予告が嘘ではないと我々に伝えた訳だ……」

 説明を続ける彼女の表情は後悔の念を隠せなかった。


「私達に出来る事は何も無かった。今はここの防衛に注力する時ですシルバートン」

 マイメが彼女の立場を励ますように擁護する。都市の防衛…… その責任の一端は僕にものしかかっているのであった。


「マーティン君、キミはラボに行ってコギトの様子を見てきてくれ」

 トニーの指示でそこへ向かう、後ろにマイメが付いてきた。

「地下に来るのは初めてだったか」

「うん、責任者なのにね」


 雑然とした廊下を進みラボに入る、その場所を見たマイメは驚いた。

「ここがラボ?まるで書類のジャングルじゃない」 


 彼女の言う通りだ、整然とされてた場所は山のようにうず高く積上げられた書類で視界が遮られ、そこから設けられた隙間に職員が押し込められていると言った具合である。


「イテッ!!」

 奥の方に進もうとしたら足に何か硬い物が当たった。足元を見下ろすとそこに居たのは書類の布団から頭だけを出して床に寝転がってたナツメであった。


「ファーッ…… よく寝た…… あ、 査問会ご苦労さま。ねぇ見てよこの部屋!SSBFの採取したデータにそれと各部門毎の技術統合計画書やら、あのコギトがハッキングして入手した全都市の機密文章それに敵の研究データを全部紙に出力して精査するなんて役所が考えるような馬鹿みたいな仕事任されてんの!企業の石頭共は常時行動しか出来ない木偶の坊だし……!?」


 愚痴を一通り僕にブツケているとその背後にいる存在に気付く。

「──どうも始めまして。私はパルマリック社にてSSBF計画の担当責任者を任せられているマイメと申します。本日は優秀な研究者方に出会えて私は感激しております」

 彼女の役職を聞いたナツメは眠気顔を何とか繕い、笑顔を作った。

「は、始めまして! 私はここでトニー博士の研究を補佐してるナツメと言います! えー、この部屋はご覧の通り少しばかり散らかっているので、どこが落ち着ける場所を案内しましょう」


 だがマイメはその案内を拒否する。

「いや、私はここを自由に見回りたいと思ってる。この様な部署は幾つあるんだ?」


「えっと……まずコギトと、生物学、微生物細菌部門。情報処理関連の部署がここ含めて6つ、機体設計と空力の担当が3つ…… マテリアル関連と発動機開発の部門が4つ、その他装備開発部門の細かいのが5つ…… まぁざっと合わせて数千人のスタッフが働いてるね」


 この施設の全容は僕も正直把握していない。飛行場を中心にそれぞれの研究棟が分かれててよっぽどの事がない限りそこに出向く理由も無いからだ。ただ僕が乗るSSBF一機の為に途轍もない規模の人間が関わっている事を肝に銘じなければならなそうだ。


「そう…… 半日は楽しめそうだな」

 マイメはそう言い残すとそそくさと出ていってしまった。彼女は気掛かりだがこっちもここへは目的がある。


「──なんかデカい攻撃があったって聞いたけどここは大丈夫なのか?カミュメントはどうしてる?」


 「攻撃……?もしかしてアレを使ったのか。クソっブラフじゃ無かったって事か」

 ナツメは散らばった書類の中から一枚を取り出す。


「これは彼の国の極秘戦略計画書の一部だ。ここにハッキリと最重要破壊目標としてSSBFと書かれてある、そして前段攻撃として新兵器による人口密集地の戦略攻撃が計画されていたの」

「何で奴等は最初にこの基地を狙わなかったんだ?」


「多分正確な目標の場所が分からなかったんだろう。爆風は地下に対する効果範囲が薄いからね。だから最初の攻撃を実行した後に、第二弾を予告する事でコチラとしては対抗戦力としてSSBFを繰り出すしかない」

 「それとコギト…… カミュメントの事なら瞬間的に大量の情報処理を実行したせいで長い事睡眠状態だよ。多分そのうち起きると思うけど」


 「分かった、ありがとう」


 結局の所僕はただの雇われパイロットである。この計画に直接意見する事も無く淡々と与えられた任務をこなしてきた。だからこの件も蚊帳の外で傍観を続けるしか無いと思っていた。


「大丈夫かお前、死んだみたいな顔してるぞ」

 僕を心配して来たのはカルバスである。


「ああ、いつもの通り僕は絶好調だよ」

「正直言うとみんな心配してる」

「僕をか?」

「…… その、一職員として俺からは何も話せない。だけど、それぞれ負い目を感じてはいるんだ。だから…… これからの事に付いて皆を責めないでやってくれ」

 僕は自分の境遇に対して大凡の事では最早動揺しないつもりであった。今まで通り平静を保てばきっと大丈夫だ。


「私だ、トニーだ。皆集まってくれ」

 書類に隠れてた他の職員も出てきてトニーに集まった。

「先程の緊急会議の決定を伝える。SSBF計画を直ちにフェーズXに移行する。ナツメは手順に則り最高機密を職員達に開示してくれ。マーティン君、部署一同による技術戦術会議があるので一緒に来てくれ」


 また会議。いい加減飽き飽きしつつ会場に向かう。

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