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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第四部——沼の主

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冷遇のパンデモニウム——冒険者パーティーとウェアウルフ化のゴブリン


『パンデモニウム』——

あの騒がしい魔殿の監視の眼は、いま、不均衡な冒険者パーティーを興味深そうに見つめていた。


地獄の群魔と諸天の神々は、マモンからの招待状を受け取っていた。


ヘラクレスは、まだ自分は狂っていないふりをしている。

イカロスは、敗者だけが知るため息をひとつ漏らした。

ユリシーズもつられてため息をつく。

彼はまだ、家族を置いて放浪する覚悟ができていない。


人ならざる存在たちは事象の地平線の外側に集まり、外へ漏れることのない光と影を観測していた。


『闘争関数入力』


f(実力配分の偏った冒険者パーティー、混成ゴブリン集落):D(古代宇宙船遺跡)=?


解を求めよ。


王畿学院の卒業式は、息が詰まるほど荘厳だった。

空気には高価なインクの匂いと、古びた呪文の灰が漂い、校長の温かな蝋燭のような声が巨大な講堂に響き渡る。


「十六歳——まさに奇跡の数字だ。」

校長は眼鏡を押し上げ、無数の凡庸な学生たちから視線を外し、壇上の小柄な少女へと向けた。


「シミリス、今年一年の君の成果は、学院百年の記録を塗り替えた。」


デレオは講堂の最後列の影に立ち、

隣では、革の装束に身を包み、退屈そうに短剣を弄ぶチェラーレが寄り添っていた。


彼は、金の縁取りが施された卒業証書を受け取るシミリスを見つめながら、

雛鳥がついに立派な翼を広げたのを見守るような、複雑で温かい感情に胸を満たされていた。


シミリスは、生まれながらの召喚者だった。


十六歳——多くの召喚士がまだ、たった一体の元素精霊と契約するために汗だくになっている年齢で、

彼女はすでに智慧の鷲ヴェズルフェルニルの認可を得て、

さらには世界樹の根に潜む毒竜ニーズホッグすら従わせていた。


「本当に、ここで深く学び続けるつもりはないのかね?」

校長の声には、わずかな未練が滲んでいた。

「学院の支援があれば、十年以内に最高位召喚士になれる。

君の才能を、泥と血にまみれた荒野で浪費すべきではない。」


デレオは息を呑んだ。

心のどこかで、シミリスに頷いてほしいと思っていた。

学院は安全で、最高の資源があり、尊敬される地位もある。

ここにいれば、彼はこれまで通り、彼女の背中を支え続けられる。


だが——彼は彼女をよく知っていた。

それが不可能だということも。


「やっと……ここから出られる!!」


シミリスの歓声が、校長の勧誘を一瞬で吹き飛ばした。


彼女は放たれた小鳥のように、

式が終わるのも待たず、証書を抱えて校門から跳ねるように飛び出していった。


その笑顔は真夏の太陽のように眩しく、

彼女を閉じ込めようとするすべての視線を焼き払うほどだった。


「行こう、デレオ!チェラーレ!」

星のように輝く瞳で駆け寄ってくる。

「これからは、私もあなたたちと一緒に冒険者ギルドで任務を受けられるんだ!」


「ふん、期待しすぎないことね。」

チェラーレは鼻で笑い、短剣を鞘に収めた。

校門で泣き崩れる普通の学生たちを冷ややかに見渡す。

「冒険者の金は、命と引き換えよ。」


彼女は知っていた。

妹を止めることはできない。

もし彼女を再び学園に戻したいなら、

社会の厳しさを身をもって知るしかない。


デレオはシミリスの頭を優しく撫で、

胸の奥にまだ残るわずかな寂しさを押し込めた。


写真を撮り合い、未来に夢を抱く学生たちを見て、

彼は少しだけ羨ましくなった。

——学園生活は、確かに眩しい。


翌日、三人は正式に冒険者ギルドへ足を踏み入れた。

ここは汗と安酒と血の匂いが混ざり合う場所で、

精緻な学院とはまるで別世界だった。


彼らの最初の任務は、笑ってしまうほど平凡だった——

下水道の巨大ネズミ退治。


「まあ、肩慣らしだな。」

デレオは腰のハンマーを確認しながら言った。


だが、戦闘は始まった瞬間に終わった。


マンホールを開けた途端、

シミリスは軽く指を鳴らし、注文でもするように言った。


「出ておいで、影の精霊たち。」


次の瞬間、

壁や石畳の隙間から黒い影が滲み出し、

無数の牙を持つ巨大な口へと変貌した。


巨大ネズミたちは悲鳴を上げる間もなく、

影の精霊に引きずり出され、

まるでゴミ袋のように路面へと積み上げられた。


完了時間——一分三秒。


ギルドの端末には、任務完了の表示が浮かんでいた。


二台の荷車を埋め尽くすほどのネズミの死骸を持ち帰ると、

喧騒に満ちていたギルドは一瞬で静まり返った。


「この量……街区ひとつ丸ごと掃除したのか?」

「新入りだよな?あの小娘?」

「どうやって……?」


シミリスは周囲の嫉妬と畏怖の視線に気づきもせず、

賞金を数えてはしゃいでいた。


チェラーレは冷ややかにそれを見つめる。

彼女には、もっと儲かるが、もっと汚れた「仕事」がある。

シミリスには絶対に触れさせたくない世界だ。


「一歩ずつ進もう。」

デレオは二人に微笑んだ。

「地道に階級を上げて、名を上げよう。」


「うん!次はもっと刺激てなのがいい!」

シミリスは拳を振り上げた。


その願いは、すぐに叶った。


高級装備を身につけた男が、

シミリスの前に現れた。


「君の戦いを見た。実に優秀だ。」

男はデレオを完全に無視し、チェラーレにも目を向けない。


「俺たちは『古代宇宙船遺跡』へ行く。

ウェアウルフ化のしたゴブリンを討伐するんだ。

君の多彩な召喚術は大いに役立つ。どうだ?」


シミリスは即座にデレオとチェラーレの手を掴んだ。


「二人も一緒じゃなきゃ行かない!」


男の視線がようやくデレオに向いた。

それは、余計な荷物を見る目だった。


「……まあ、人数は多い方がいい。

ゴブリンの雑兵も多いしな。

一体三百クレジトだ、稼げるだろ?」


チェラーレが小声で囁く。


「でもウェアウルフ化のゴブリンは一体二十万クレジトよ。

下水道ネズミの千倍。」


「二十万!?」

シミリスは目を輝かせた。

「大金持ちになれるじゃん!」


デレオはその視線の重さを感じていた。

自分が二十万クラスの怪物に太刀打ちできないことは、

誰よりも自分が知っている。


だが、期待に満ちたシミリスの瞳を見てしまえば——

拒む言葉は喉で溶けてしまう。


「……一緒にやり遂げよう。」


こうして彼らは、高等パーティーと共に

密林に隠された鋼鉄の墓——古代宇宙船遺跡へ向かった。


断線したケーブルが火花を散らし、

鉄錆と腐敗した生体組織の匂いが漂う。


ウェアウルフ化のゴブリンは、

ゴブリンの狡猾さと人狼の獰猛さを併せ持ち、

巨体で、素早く、再生能力まで備えていた。


「集落を発見!」

斥候の声に、リーダーは宝物を見つけたように笑った。


彼らは隠れることなく、堂々と入口へ向かった。


「全員、突撃!」

金属の回廊に、武器がぶつかり合う轟音が響き渡る。


デレオはハンマーを構え、

迫り来るゴブリンへ立ち向かった。


それは、苦しい肉弾戦だった。

爪が服を裂き、臭気が顔にかかる。

彼は全神経を集中し、

一瞬の隙を探し続けた。


十分後——

息も絶え絶えになりながら、

ようやく一体を倒した。


振り返ると、チェラーレがいた。


金属片の間を舞うように動き、

二本の短剣が死を告げる光を放つ。


彼女が動くたび、

一体のゴブリンが崩れ落ちた。


戦いがひと段落すると、

前衛の冒険者たちは彼女を囲み、

称賛と歓声を浴びせた。


そして、デレオの視線は前線へ向かう。


八体、いやそれ以上のウェアウルフゴブリンが

シミリスを取り囲んでいた。


リーダーが救援に向かおうとした瞬間、

シミリスが手を上げて制した。


「人が多いと、あのやつを呼びにくいから。」


地面が震えた。

金属床が液状化し、裂け目が走る。

イオと腐食臭を含んだ煙が噴き上がる。


「出てきて、ニーズホッグ!」


ニーズホッグは狂笑と罵声を撒き散らしながら姿を現した。


その瘴気だけで、周囲のゴブリンは痙攣し、倒れ込む。


緑色の腐食性の龍息が吐き出され——


八体のウェアウルフゴブリンは、

瞬きする間に咬み砕かれ、焼かれ、毒に溶かされた。


戦場は神聖な静寂に包まれ、

次いで、爆発するような歓声が上がった。


「強すぎる!十六歳でこれか!」

「この実力……パーティーなんて必要ないだろ。」

「任務後、うちのチームに来ないか?」


冒険者たちはシミリスとチェラーレを中心に押し寄せ、

英雄の凱旋のように持ち上げた。


二人は光に包まれたように見えた。


デレオは、遠くの影に立っていた。


彼のハンマーには、わずかな血が滴り、

身体中が痛んでいたが、

誰も彼に気づかない。


ニーズホッグに踏み潰されたゴブリンの方が、

彼の十分間の奮闘より価値があった。


『二人が必要とする限り、俺はそばにいる。』


彼は心の中で繰り返した。


だが——

冷たい声が、毒蛇のように脳裏に忍び込む。


ニーズホッグの毒よりも残酷な真実。


『デレオ……あの二人は、本当にお前を必要としているのか?』



———————————————



パンデモニウムの観覧席で、

神々はため息を止めた。


イカロスは目を閉じ、

落ちていく影を直視できなかった。


最も恐ろしいのは、敵の爪ではない。

仲間の背中が、少しずつ遠ざかり、

ついには視界から消えていくことだ。


マモンは、デレオの徐々に曇っていく魂を見つめ、

満足げに帳簿を閉じた。


カウントダウンのアラームは、すでにセットされていた。


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