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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第四部——沼の主

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代行のパンデモニウム——聖獣使いと毒竜ニーズホッグ


パンデモニウムの眼は林冠にとどまり、

今日、彼らが注視しているのはシミリスだった。


いつもどこか気まずそうで、

それでいて信じられないほど強大な少女。


地獄の七君王が再び集い、

ロキはにやにや笑いながらこの狂宴に紛れ込む。

まるで最初からそこにいるのが当然であるかのように。


皆が期待していた。

——今回、世界を滅ぼす任務を託されたのは、一匹のリスだと。



非人の存在たちは事象の地平線の外側に集まり、

外へ漏れることのない光と影を観測していた。



『闘争関数入力』

f(精霊使いシミリス、毒竜ニーズホッグ):D(ユグドラシル国立パーク)=?


解を求めよ


シミリスが聖獣使いの資格を得るには、

ただ力が強いだけでは通れない試練だった。

召喚者集団から正式な認可を受けなければならない。


彼女の力はすでに精霊使いの範疇を超えていた。

ウティアテスの烈火、冬の精霊の氷結、

さらには時間と影の精霊を同時に呼び出し、

世界そのものを静止画に閉じ込めかけたことさえある。


召喚系の術者なら誰もが知っていた——

彼女をこれ以上、精霊使いの段階に留めておくわけにはいかない。


より強大な聖獣が彼女の魂を導かなければ、

彼女はいつかこの悪意に満ちた世界で迷い、

その巨大な力と共に堕ちていく。


「お前には聖獣を押さえ込む力がある。」

老いた召喚師の長は威厳を帯びて言った。

「だが、彼らを従わせるかどうかは、お前自身が聖獣に求めねばならぬ。」


彼は一枚の案内図を差し出した。


「……ユグドラシルパーク?」

シミリスは首をかしげる。


「樹頂のヴェズルフェルニルを訪ねよ。

彼はお前の本質を見抜く。

きっと最初の聖獣となるだろう。」


しかしシミリスは困った顔をした。


「何か問題でもあるのか?」

老召喚師が眉をひそめる。


「……入場料が……」

彼女は小さく呟いた。


老人は固まった。

まさかこの程度の障害でつまずく者がいるとは思わなかったのだ。


王畿学院の学生で、国立パークの入場料すら払えない者などいない。

周囲の若い召喚師たちがざわつき始める。


「これ、使っていいよ。」

二十代の女性が、彼女に一枚の職員証を差し出した。


「俺、あそこでバイトしてるんだ。

ついでに、あのうるさいリスをどうにかしてくれたら、

この証明書、しばらく貸してやる。

ユグドラシルパーク、いつでも無料で出入りできるぜ。」


シミリスの目が輝いた。


ユグドラシルパーク——

彼女は写真でしか見たことがない。

それでも、その写真だけで胸が締めつけられるほど美しかった。


本当は姉さんとディレルを連れて来たかった。

だが職員証は一人分しか使えない。


彼女は深く頭を下げた。

「頑張ります。」


ユグドラシルは重要な観光地だった。

巨大な幹だけでなく、

樹頂に棲む「鷲の中の鷲」——ヴェズルフェルニルの存在が、

人々を惹きつけてやまない。


召喚師はその力を求め、

一般人はその智慧を求める。


シミリスが樹の根元に着いたとき、

観光客でいっぱいだった。

子どもたちは写真を撮り、

大人たちは土産物を買い、

ガイドはユグドラシルの伝承を語っている。


彼女は樹頂を見上げたが、

枝葉が濃すぎて何も見えない。


そのとき——

誰かが彼女を罵る声が聞こえた。


シミリスはびくっとして振り向いた。


「バーカ!こっちだよ!なんでこんなに頭悪い女がいるんだ!」


声の方を見ると——

欄干の上に、一匹のリスがいた。

極めて挑発的な表情で、彼女を睨んでいる。


「……どうして私を罵るの?」

彼女は戸惑いと悲しみを隠せない。


「どうしてって?」

リスは挑発的に笑った。

「罵れるから罵るんだよ。お前、罵られ慣れてないだろ?」


「やめてほしいの。私、急いでるの。」


「はぁ?お前が何様だよ?

入場料も払えない三流の貧乏人が。」


——どうしてそれを知ってるの?


シミリスの胸がきゅっと縮む。


「ウティアテス!」


反射的に、彼女は火の神を呼び出した。


灼熱の炎がリスへ向かって噴き出す。


だがリスはひょいと避け、

さらに煽るように言った。


「ほら見ろ、怒ったら思考停止。

そんな頭で“智慧の鷲”と話せるのかよ?」


「黙って!!」


炎が次々と放たれ、

リスは走り回りながら、

わざと同じ場所へ誘導する。


シミリスは気づかない。


ウティアテスの炎は、

ユグドラシルの根の中でも最も脆い部分——

毒に侵された跡のある根を、

何度も何度も焼き続けていた。


ゴオン——!


ついに根が焼け落ち、大穴が開いた。


「助かったぜ、ラタトスク——」


毒煙と共に、

地の底から響くような声が漏れ出す。


「よぉ、ニーズホッグ!久しぶり!」

リスは満面の笑み。


「ニーズホッグ……?

ヴェズルフェルニルじゃ……ないの……?」

シミリスはようやく冷静さを取り戻した。


彼女は強い。

だが、あまりにも無知だった。

もし“ニーズホッグ”の名を知っていたら、

とっくに逃げていた。


リスは鼻で笑う。

「最近あのクソ鳥の説教ばっか聞かされてさ。

そろそろ人間に刺激を与える頃だろ?」


その瞬間——

穴から巨大な竜の頭が現れた。


毒竜ニーズホッグ。

ユグドラシルの根を喰らう災厄そのもの。


毒煙が潮のように押し寄せる。


シミリスは慌てて後退し、

近くの水蒸気の精霊を呼び出して冷気をまとわせ、

なんとか最初の毒息を防いだ。


幸い、ここはユグドラシル国立パーク。

原生の地形と精霊の力が満ちている。


周囲の観光客は逃げるどころか、

スマホを構えて写真を撮り始めた。


「えっ?今回は樹の上の鷲じゃないの?」

「ガイドに書いてあったよ、たまに召喚士や聖獣使いが任務に来るって。

ラッキー、実物見れた!」


シミリスは目を丸くした。

まさか自分が“ショー”になるとは思わなかった。


「小娘ぇ……」

ニーズホッグの声は金属を腐食させるように耳障りだった。

「よくも俺を根っこから引きずり出してくれたな……!」


「ち、違うの!わざとじゃなくて!」

シミリスは慌てて叫ぶ。


「いや、わざとだろ。」

ラタトスクが横で叫ぶ。

「俺がずっと誘導してたんだからな!」


「あなた……!」

シミリスは怒りで顔を真っ赤にした。


ニーズホッグが口を開き、

第二波の毒息が襲いかかる。


シミリスはすぐに風の精霊を呼び出し、

旋風を盾のように立ち上げた。


「くっさ……!」

毒息が散らされ、観光客たちは鼻を押さえて逃げ始めた。


「お前の力……こんな短時間でこれだけの精霊を呼ぶとはな。」

毒竜は牙を鳴らす。

「だが、まだ俺を楽しませるほどじゃねぇ。」


巨体が跳ね上がり、

巨大な爪が地面をえぐる。


シミリスは不器用に転がって避け、

腕や膝に擦り傷が増えていく。

姉のように身軽には動けない。


それでも、彼女は再び叫んだ。


「ウティアテス……!お願い、もう一度だけ力を貸して!」


火の精霊が背後に現れ、

炎が腕を走り抜け、

火蛇となって毒竜の脇腹を叩きつけた。


轟音。

ニーズホッグが苦痛に吠え、

鱗の隙間から炎が侵入する。


「このガキィ……!」


竜は地面を転げ回り、炎を消した。

その尾が無造作に振られ、

シミリスの身体を直撃する。


彼女は吹き飛ばされ、

樹根に叩きつけられ、胸が焼けるように痛んだ。


「おいおい!その調子じゃ死ぬぞ!」

ラタトスクが跳ね回る。

「こいつはユグドラシルの根を喰う怪物だぞ!逃げろよ!」


だがリスは気づいてしまった。

——もしかしたら、この少女は本当に竜を倒せるのでは?


「……黙って。」

シミリスは震える足で立ち上がった。


卒業するためにも、

姉とディレルの負担にならないためにも、

ここで逃げるわけにはいかない。


深く息を吸う。


風、土、草木、光——

周囲の自然精霊が一斉に彼女へ集まる。


魔力が潮のように満ちていく。


「職員証を貸してくれた人が言ってたの……

あなたを“ついでに”どうにかしてって。

まさかこんなに面倒だとは思わなかったけど。」


「はぁ!?俺をどうにか!?

ま、まさか俺の計画がバレて……!?」

ラタトスクは跳ね回りながら悲鳴を上げる。


「……あなたが何を考えてるかは知らない。」

シミリスは静かに言った。

「でも、ここは私が片づける。」


両手を掲げる。


火、氷、影、時間、風、土——

あらゆる精霊の力が渦を巻き、

巨大な魔力の塊となって背後に形成される。


ニーズホッグの瞳孔がすぼまる。


「な……なんだこの魔力は……!」


シミリスが一歩踏み出すと同時に、

魔力の塊が竜へ叩きつけられた。


「——止まりなさい!!」


いくつもの精霊力が光柱となり、

毒竜を地面へ押し潰す。


ニーズホッグは動けず、

毒霧は蒸発し、

鱗が砕け散った。


「くそ……ガキが……!」

竜はもがくが、もう立ち上がれない。


シミリスは息を切らしながらも、

しっかりと立っていた。


「これで……樹の上まで行く方法を考えられる……」


その瞬間——

樹頂から巨大な風圧が降りてきた。


ヴェズルフェルニルがついに降臨した。


翼が広がると、

パーク全体が静まり返る。


彼はニーズホッグの背に降り立ち、

まるで悪事を働いた犬を踏みつけるように押さえつけた。


「久しぶりだな、ニーズホッグ。」

ヴェズルフェルニルは嘲るように言った。


「助かったぞ。

おかげで私は、この少女の危険な試練に手を出さずに済んだ。」


「てめぇ、このクソ鳥——!」

ニーズホッグが吠える。


「黙れ。」

鷲は爪で竜の頭を押さえつけた。


そしてシミリスへ向き直る。


「少女よ、召喚師どもに伝えよ。」

風が雲を裂くような声で言う。

「お前は聖獣使いへ昇格できる。」


シミリスは目を見開いた。


「そして、お前の最初の聖獣は——」


ヴェズルフェルニルは口元をわずかに吊り上げた。


「私ではない。」


彼は足元の毒竜を指し示した。


「——こいつだ。」


「なっ……!?!?」

ニーズホッグの悲鳴がパークに響く。


ラタトスクは地面を転げ回って笑い転げた。


ロキの“世界滅亡計画”はどう見ても失敗だが、

この惨めな毒竜の姿を見られたのなら——

それだけで十分だった。


トールは地獄の狂宴に飛び込み、

弟の顔面に拳を叩き込んだ。


「お前というやつは!

本気で世界を滅ぼすつもりだったのか!」


マモンは軽く肩を叩きながら言う。

「まあまあ、落ち着いてくださいよ。

ただの冗談ですよ、お客様。」


「そうそう!

リス一匹で世界が終わるわけないじゃないか!」

他の魔王たちも、どこか後ろめたそうに笑った。


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