包庇のパンデモニウム——都市警備隊と女盗賊
パンデモニウムは再びチェラーレに視線を向けた。
マモンは金の杯を掲げ、地獄の群魔と諸天の神々を招き寄せる。
——今回は、彼女は捕まるのだろうか?
ティールは怒りに燃え、観覧席の中でロキを探し回っていた。
トールはロキの影を見た気がしたが、今回はなぜか躊躇している。
非人の存在たちは事象の地平線の外側に集まり、
外へ漏れることのない光と影を観測していた。
『闘争関数入力』
f(都市警備隊、逆光のチェラーレ):D(ノールールマーケット入り口)=?
解を求めよ:
都市警備隊の声がどんどん近づいてくる。
チェラーレは彼らを恐れていなかった。
所詮、近所のオジサンや若者で構成された巡回隊にすぎない。
争いがほぼ終わった頃に、
「ちゃんと仕事してますよ」という顔で現れるのが常だ。
チェラーレは黒い繭を使って影を呼び寄せ、
墨の一滴のように夜闇へと溶け込んだ。
都市警備隊とは何度もやり合ってきた。
彼らの足音も、癖も、
三つ目の角を曲がる頃には追跡を諦めることも、
全部知っている。
——だが、今夜は違った。
犬の吠え声、人の叫び、金属のぶつかる音……
都市警備隊はいつもよりずっと粘って追ってくる。
チェラーレの胸に、わずかな不安がよぎった。
彼女は逆光のチェラーレ。
このノールールマーケットで、
本気で彼女を敵に回す者などいないはずだ。
ここにいる大半の人間は、彼女を好いている。
彼女は彼らの物を盗み、また彼らのために盗み返しもした。
気に入らなかった宝石は、家賃に困っている隣人の玄関に放り投げた。
ギャングの葬式では、組長の銃を盗み出し、
三ヶ月間、街中の笑い話になった。
彼女はこの街の影であり、伝説であり、逆光そのもの。
——だが今夜の追跡は、あまりにも執念深い。
彼女は黒市を抜ける数十のルートを思い浮かべながら走り、
曲がり角に差し掛かった瞬間、見慣れない制服を目にした。
都市警備隊ではない。
——禁衛軍だ。
チェラーレは足を止めた。
「私……禁衛軍に何をやらかしたっけ……?」
彼女は小さく呟く。
市庁舎に潜入して消してはいけないデータを消したせい?
ある宴席の秘密録音を暴露したせい?
それとも、ギャングと政府の金の流れを掘り当てたせい?
……理由が多すぎる。
禁衛軍に目をつけられる理由など、いくらでもある。
考えても仕方がない。
チェラーレは深く息を吸った。
体内では、三分の一ほど残った呪いが蠢き、
三つの魂が、縛られた野獣のように互いを引き裂こうとしている。
逃げなければ。
禁衛軍が完全に包囲する前に。
「もっと……暗くしてやる。」
彼女は最寄りの電力中枢を見つけ、
ベスティジュから受け取った暴風鷲の尾羽を取り出した。
魔力のない者でも初級の雷撃を使えるようになる道具。
チェラーレに必要なのは——
ただの火花。
尾羽に火をつける。
雷光が炸裂した。
過負荷の電流が一瞬で電力中枢を焼き切る。
ノールールマーケットは全面停電に陥った。
街灯が消え、ネオンが二度瞬いて死に、
屋台の電球が破裂し、
黒市全体が深海へ沈んだような暗闇に包まれる。
「これで……十分に暗い。」
チェラーレは冷笑し、振り返った——
都市警備隊が、すでに目の前を塞いでいた。
「やっぱりここか……」
先頭のオジサンが驚いたように言う。
「禁衛軍の連中、よく当てたもんだな。」
隣の若者は不満げだ。
チェラーレは彼らを見据えた。
懐に残った最後の道具——
呪詛結晶に触れる。
彼らに使いたくはなかった。
悪人ではない。ただ運が悪いだけだ。
「逆光……本人を見るの初めてだ……」
若者の目は星のように輝いていた。
「こ、こないだ家のポストに入れてくれた……あれ……ありがと……」
言い終わる前に、オジサンが後頭部を叩く。
「おい!余計なこと言うな!」
チェラーレは一瞬きょとんとした。
何を渡したのか覚えていない。
だが、困っている人に物を投げ込む癖があるのは確かだ。
遠くから叫び声が響く。
「急げ!警備隊が先に見つけたらしい!」
「うわ、禁衛軍の偉いのが来るぞ……」
若者が焦り始める。
チェラーレは呪詛結晶を握りしめた。
傷つけたくはない。
だが、捕まるわけにはいかない。
彼女が動こうとした、その瞬間——
「逆光はあっちへ逃げたぞ!」
オジサンが突然叫び、若者の顔に拳を叩き込んだ。
「いってぇ!強すぎるって!」
若者は涙目で頬を押さえる。
「強くなきゃバレるだろ。ほら、お前も俺を殴れ。ここだ。」
オジサンは自分の頬を指差す。
若者はニヤリと笑い、思い切り殴った。
オジサンは殴られながらも、チェラーレにウインクし、
横の路地を指差した。
チェラーレは半秒だけ迷い、
すぐに理解し、
示された路地へと駆け込んだ。
風のように軽い足取りで遠ざかる途中、
二人の声が聞こえてくる。
「何されたか全然見えなかったのに、いきなり殴られたんだよ!」
「そうだよ!俺たちだって被害者だっての!」
チェラーレは思わず笑った。
——ノールールマーケットは、やっぱり彼女の庭だ。
チェラーレは闇の中を走り続けた。
呪いはまだ体内で渦巻き、
視界は時折二重にぶれ、霞む。
意志の力だけで意識を保ち、
長年染みついた街の地図を頼りに暗闇を駆け抜ける。
禁衛軍は諦めない。
今回の追跡はただの職務ではない。
背後に命令した誰かがいる——
そしてその誰かは、彼女に執着している。
逃げなければ。
呪いを扱える二人の友を探さなければ。
魂が完全に裂ける前に、生き延びなければ。
闇は味方。
混沌は庇護。
ノールールマーケットは家。
そして今夜——
この街全体が、彼女を庇っている。
チェラーレは笑った。
ティールはマモンの襟首を掴み、怒鳴りつけた。
「言え!ロキは今度どうやって逃げた!」
マモンは両手を上げ、無実を装う。
「無茶言うなよ。
逃げ足の速さで神々一のロキがどう逃げたかなんて、
私に分かるわけないだろ?」
そう言いながら、こっそりトールにウインクする。
トールは気まずそうに視線を逸らした。




