第90話 朝食にしては量が多すぎる
整備士、吟遊詩人、
殺し屋、格闘家、
真名師、死霊法師。
そして小さなびっくり箱がひとつ。
一夜が過ぎた。
この一行は、
一階層強くなった。
アバドンの脅威は
影のように心に重くのしかかっているが、
この清らかな朝の静寂は、
やはり立ち去り難いものだった。
屋外は霧が立ち込め、
鳥のさえずりが時折
途切れながら響く。
デレオの心には、
宇宙船の遺跡の方向から来る、
拭い去れない
重い予感があった。
「アバドンの活動が
ますます頻繁になっている気がする。」
彼は心の中でそう思ったが、
この得難い安寧を
破ることはしなかった。
アビスウズは
いつものように早起きだった。
彼女は軽やかな足取りで
近隣の村の小道を散策し、
早朝に出かける農夫たちと
挨拶を交わし、
ついでに焼き立てのパンを
買ってきた。
アペスは庭で
体術の稽古をしていた。
彼女の動きには
気迫が満ちており、
時折草むらを駆け抜ける小動物も、
その勢いに驚いて
足を止めるほどだった。
チェラーレは
いつの間にか
部屋から姿を消していた。
家の中にも外にも
その姿は見えず、
台所のテーブルの上に、
走り書きで
「午前中用事で外出」
と書かれた小さなメモだけが
残されていた。
カシアとシミリスの二人は、
昼近くまで怠惰に寝ており、
部屋に差し込む陽の光に照らされて、
ようやくもたもたと
寝返りを打った。
デレオに至っては、
朝早くに目覚めると
アレカを連れて
あちこち散歩に出かけていた。
小川沿いを歩き、
土と青草の匂いが混じった
空気を吸う。
アレカは水辺で
トンボを追いかけ、
時々振り返っては
デレオに向かって歯を見せて
大笑いした。
この日の午前中は、
まるで全ての不安が
一時的に彼らから
遠ざかったかのようだった。
一行が再び
食卓に集まったのは、
もう午前十時半になっていた。
陽光は窓格子を通して
テーブルの上に斑に降り注ぎ、
空気には朝霧の涼しさが
まだ残っていた。
「朝食には遅すぎるし、
昼食には早すぎる。
あなたたち二人の生活は、
本当に不規則ね!」
アビスウズは
買ってきたばかりのパンを
テーブルに並べながら、
カシアとシミリスに、
まるで母親のように
小言を言った。
テーブルのパンは
まだ微かに湯気を立てており、
隣には
淹れたての熱いお茶のポットが
置かれていた。
アペスは
汗だくで家の中に入ってきた。
額の汗の滴は
まだ乾いておらず、
健康的な肌が
朝の光を浴びて
キラキラと輝いている。
彼女は皆を一瞥しただけで
何も言わず、
足早にシャワーへと向かった。
皆が雑談をしていると、
戸口から
重い足音が聞こえてきた。
チェラーレが
巨大なオスのイノシシを
引きずって
戻ってきたのだ。
鼻にはまだ露と泥が付いており、
体にはどこから来たのか
わからない杭が
何本か刺さっている。
「このイノシシのオス……
まさか、私たちの朝食にするつもり?」
アビスウズは
目を大きく見開き、
手の中のパンを
危うく落としそうになった。
「朝食どころか、
昼食、夕食、
おまけに夜食を足しても
食べきれないわよ。」
アレカが冗談を言うと、
皆は笑い出した。
チェラーレは
額の汗を拭う。
彼女は
軽い口調で言った。
「ああ、こいつね。
林のそばで
新しい職業のスキルを試していたら、
邪魔されたんだ。
最初は無視しようと思ったんだけど、
執拗に追いかけてくるから、
仕方なく……」
彼女は仲間たちに向かって、
大げさに喉を切るジェスチャーをし、
口元には
得意げな笑みを
浮かべた。
アペスは
シャワーを浴びて出てきた。
髪はまだ濡れている。
その様子を見て、
彼女はイノシシの前に歩み寄り、
両手を合わせて
低い声で
いくつか祝祷の言葉を唱えた。
「生命への敬意から、
殺生をしたのなら、
しかるべく享受しましょう。」
そう言い終えると、
彼女はタオルで
再び髪を拭き、
向き直って浴室に戻り、
大量のスキンケア用品と
格闘を始めた。
デレオは
そばで戯れているアレカを見て、
チェラーレに笑顔で言った。
「後で一緒に庭に出て、
この猪を
しっかり解体しよう!」
陽光の下、
皆はナイフ、
ロープ、
そして大きな鍋の準備を始めた。
彼らはイノシシを担ぎ上げ、
庭の中央へ運んだ。
この猪の体には、
整備士が利用できる資源が
多すぎる。
デレオの頭の中では、
その毛、皮、骨、牙を
どのように加工しようかと、
思わず想像が
膨らみ始めた。




