8・ホネホネロック【改稿版】
「察知が早かったからまだ距離がある、エンカウントまで魔法で削る。向こうの方が数が多い、接敵後は盾と剣でけん制してくれ」
「了解ボス」
けん制も兼ねてウィル・オ・LEDを、ガイコツちゃん達の前でふわふわと舞わす。
そーれそーれ。
お、よけた! 明かりナシで暗闇の中を歩き回ってんだ、視えてるわけじゃないよな?
なのに真っすぐこっちに向かってきて魔法を回避する?
『ファイヤ――アロー!』
エミュアが繰り出した炎の一閃。
先頭を進んできたスケルトンAは回避運動を始めている。
なるほど、あいつら魔法が見えてるな。
視覚には頼らず、どうやって俺たちを認識してるのか?
――試してみるか。
「エミュア! 眩しくなるぞ」
一応、警告しとく。
「?」
聞こえてるなら何とかなるでしょ。
『ウィル・オ・LED"太○拳"!』
思いっきり魔力を叩き込んだった。
爆発的に広がる閃光。
後方のスケルトンB、Cはたたらを踏んでその場で前進が止まり。
先頭を走っていたスケルトンAも、高輝度LEDドローンに気を取られたか突進が鈍った。
その一瞬が命取り。
「どおおりゃああああ!」
盾を構えたままスケルトンAへ突撃。
体当たりかましたった。
やっぱり軽い!
骨だけだから当たり前だけど。
でも理解したぞ。
こいつらは人間の魔力を感知してる。
魔力の大きさや速さで人間か魔法かを見分けてるんだろう?
ならば人間並みの魔力を発するドローンは十分に攪乱に使える、はずだ。
「胸内部のコアを潰せっ!」
背後でエミュアが叫ぶ。
俺のアドリブによく付いて来れるな。
「うぉおおおおおお!」
倒れたスケルトンAが起き上がろうとしているところへ、袈裟切りにエミュアの剣が走る。
砕けた肋骨の間、胸骨と脊椎の中間あたりにあった、ゴルフボールサイズの暗褐色に光る珠。
恐らくコアと呼ばれる部分がエミュアの剣ではじき飛ばされると同時に、ガイコツはガラガラと崩れ落ち骨の山となった。
なるほど、アレがスケルトンの弱点か。
残りのスケルトンB,Cはウィル・オ・高輝度LEDドローンに翻弄されてまだワチャワチャしている。
魔法攻撃なのかそれ以外の何なのか判断がついてないんだろう。
チャンス到来!
薄眼でスケルトンの足元だけを見ながら、アタリを付けて鉄盾で体当たり。
スケルトンBを薙ぎ倒す。
転がったスケルトンBに、力任せに盾を振り下ろす。
ベギバギッ!
カキン!
スケルトンBの肋骨が砕ける音と共に、振り回していた曲刀が金属製の手甲に当たって金属音が響いた。
ありがとうファルート、おかげで助かった。
「よぉし、いいぞ! そいつは任せたっ」
背後からエミュアの威勢の良い声がかかった。
カチン! カキン!
金属の撃ち合う音が響く、スケルトンCと打ち合っているらしい。
先にスケルトンAを潰しておいてよかった。
この状態でもう一体、自由に動ける敵が居たらこっちがヤバかった。
後は俺かエミュアのどちらかが一体を先に倒して、残りを二人で倒せば理想的展開だ。——いてっ。
スケBのホネホネキックが背中を襲う、流石に体柔らかいな。
左右の腕もパコポコカキンカキンと、やたらめったらに殴り切りつけられてる。
ファルート装備のおかげでほとんどダメージは通っていないが、流石にうざいわ。
「どおおっせいっ!」
全方位乱打に耐えながら隙を見て盾を振り上げ、体重を乗せてスケルトンBの胸骨に叩き込む。
二度三度と繰り返しているうちにびくびくと全身の骨を震わせ、スケルトンBはガクリと力尽きガラガラと崩れ落ちた、コアが潰れたらしい。
息が苦しい。酸欠だ、もう休みたい。
誘惑が一瞬よぎるが無理やりに己を奮い立たせて立ち上がる。
エミュアを助けなければ。
自分に鞭打ってスケルトンCの背後に回り込む。
「チャー——」
盾の縁を持ちながら、肋骨の内部に守られたコアの辺りへ狙いを定める。
「シュー——」
クレオ選手、大きく振りかぶって。
「メェエエエエエエエエ——ン!」
外角高め、思いっきり水平に降りぬいた。
カッキーーーーン!
かっ飛ばせー! ク・レ・オ!
スケCタッ・オッ・セー! オウ!
エミュアに向かっていたために、後ろからの攻撃には対応できなかった。
背後に重い一撃を食らわせたった。
ってか。これで折れないのか?! なんて頑丈な背骨か。
骸骨が器用に首だけ後ろへ回し、クワッと口を開いて威嚇してきた。
はんっ無勢に多勢だ、文句あっか?
ガギィッ!
こちらに気を取られたスケルトンCの隙をついて、胸元のコアにエミュアの剣先が突きささった。
スケルトンCは空虚な口腔を開いたまま、がくがくと二度三度全身を震わせた。
各部骨パーツはバラバラと崩れ落ち、辺りに骨片をまき散らした。
ふひぃ ふひぃ 死ぬかと思った。
何度も深呼吸を繰り返す。回れ回れ脳に酸素。
流石にエミュアもギリギリだったのか、その場に突っ伏して肩で背中で大きく呼吸している。
二人で呼吸を整えていると、五分ほど経った頃だろうか周囲に散らばった骨の山が、大ムカデの殻と同じようにすぅっとダンジョンの床に溶けて行った。
うっ……。
なんだかゾワッと来た。
ヤバい、風邪のひき始めか?
そう思った途端、急に身体の芯が熱くなりジュワジュワと炭酸が滲み出るみたいに全身に広がっていく。
「ふわぁっ!」
思わず口走った。
鉄盾を取り落とし震える全身を抱き締めて押さえる。
「おっ、位階が上ったな?おめでとう」
「い、位階?」
エミュアが感慨深げな声で言った。
「ダンジョンでモンスターを倒していくと何処かのタイミングで身体能力の底上げがされると言ったろう? 今の感覚が位階上昇だ」
おー! レベルアップか!
「倒したモンスターがダンジョンに飲まれる時に起きる、複数を相手にしているときは戦闘中に症状が出る事もあるから注意して」
確かに、戦闘中にコレが来たらリズム狂うわ。
「気を失っていたから自覚は無いだろうけれど、クレオは巨大スライムにとどめを刺している、多分10位階くらいまで一気に上がっているはずだ」
おー、と言うことはこれでレベル11(推定)か。
「位階が高くなればそれに応じて力も素早さも上昇するし、魔力も増える」
レベル11がどの程度の位置づけかは解らないけどずぶの素人よりは大分マシだろう。
「ちなみにエミュアは?」
「23位階だ、同年代では高い方だぞ?」
探索者として長く活躍しているエミュアの半分はあるんだからまぁまぁじゃないか?
「おーっ! 当たりドロップだ」
エミュアの喜びの声に目を向ける。
「異文明の食料だっ!」




