表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

8・ホネホネロック

 残りのスケルトンB,Cはウィル・オ・高輝度LEDドローンに翻弄されてワチャワチャしている。

 多分魔法攻撃なのかそれ以外の何なのか判断がつかないんだろう。


 チャァアアンス!


 薄眼でスケルトンの足元だけを見ながらアタリを付けて鉄盾で体当たり(シールドチャージ)

 スケルトンBを薙ぎ倒す。

 転がったスケBの上から覆いかぶせる様に力任せに盾を振り下ろす。


 ベギバギッ!


 カキン!


 スケBの肋骨が砕ける音と共にスケBの振り回した短い曲刀が金属製の手甲に当たった、ありがとうルオハレート。


「ぃよぉし、いいぞ! そいつは任せたっ」


 背後からエミュの威勢の良い声がかかった。


 カチン!カキン!


 金属の撃ち合う音が響く、スケCと打ち合っているらしい。


 良かった、先にスケAを潰しておいて。


 この状態でもう一体自由に動ける敵が居たらこっちが詰んでた所だ。


 後は俺かエミュのどちらかが一体を先に倒し、もう一体を二人で力を合わせて倒せれば理想的展開だ。いてっ。


 スケBのホネホネキックが背中を襲う、流石に体柔らかいな。

 左右の腕もパコポコカキンカキンとやたらめったらに殴り切りつけられてる。

 ルオハレート装備のお怪我でデカイダメージは通っていないが流石にうざいわ。


「どおおっつせいっ!」


 全方位打撃に耐えながら隙を見て盾を振り上げ体重を乗せて下端の尖った部分を胸骨に叩き込む。

 二度三度と繰り返しているうちにびくびくと全身の骨を震わせながらスケBはガクリと力尽きガラガラと崩れ落ちた、コアが潰れたらしい。


 息が苦しい、酸欠だ、休みたい。一瞬よぎるが無理やりに己を奮い立たせて立ち上がる。


 エミュを助けなければ。

 あたふたとスケCの背後に回り込む。


「チャー」


 盾の縁を持ちながら肋骨の内部に守られたコアの辺りへ狙いを定め。


「シュー」


 クレオ選手、大きく振りかぶって。


「メェエエエエエエエエン!」


 外角高め、思いっきり水平に降りぬいた。カッキーーーーン! かっ飛ばせーク・レ・オ! スケCタッ・オッ・セー!オウ! 


 エミュに相対していたため後ろからの攻撃には対応できなかったようで。


 背後に重い一撃を食らわせたった。これで折れないのか?!なんて頑丈な背骨か。


 骸骨が器用に首だけ後ろへ回し、クワッと口を開いて威嚇してきた。はんっ無勢に多勢だ文句あっか?


 ガギィッ!


 こちらに気を取られたスケCの隙をついて胸元のコアにエミュの剣先が突き込まれた。


 骸骨は空虚な口腔を開いたままがくがくと二度三度全身を震わせると、各部骨パーツはバラバラと崩れ落ち、辺りに骨片をまき散らした。


 ふひぃ ふひぃ 死ぬかと思った。


 三体目のスケルトンを撃破したところで、何度も深呼吸を繰り返す。回れ回れ脳に酸素。


 流石にエミュもギリギリだったのか、その場に突っ伏して肩で背中で大きく呼吸して回復を図っている。


 二人で呼吸を整えていると、五分ほど経った頃だろうか周囲に散らばった骨の山からチロチロと陽炎の様な物が立ち上ったと思ったら。


 ドライアイスが溶けていくのを早回しで見ているかのようにサーッと空気に溶けて行ってしまった。


 ほーぅ。と、感心していたら。


 うっ……。


 なんだかゾワッと来た。ヤバい、風邪のひき始めか?そう思った途端、急に身体の芯が熱くなりジュワジュワと炭酸が滲み出るみたいに全身に広がっていく。


「ふわぁっ!」


 思わず口走った。

 鉄盾を取り落とし震える全身を抱き締めて押さえる。


「おっ、位階上昇だな?おめでとう」


「い、位階?」


 エミュが感慨深げな声で言った。


「ダンジョンでモンスターを倒していくと何処かのタイミングで身体能力の底上げがされると言ったろう?、今の感覚が位階上昇だ」


 レベルアップか!


「倒したモンスターがダンジョンに帰る時に起きるんだ、複数を相手にしているときは戦闘中に症状が出る事もあるから調子を狂わせるなよ?」


 確かに、戦闘中にコレが来たらリズム狂うわ。


「気を失っていたから自覚は無いだろうがクレオはボス級のビッグスライムにとどめを刺しているんだからな、多分10位階くらいまで一気に上がっているはずなんだ、位階が高くなればそれに応じて力も素早さも上昇するし、魔力も増える」


 おー、と言うことはこれで11位階(推定)。


 レベル11がどの程度の位置づけかは解らないけどずぶの素人よりは大分マシだろう。


「ちなみにエミュは?」

「23位階だ、同年代では高い方だぞ?」


 探索者として活躍しているエミュの半分あるんだからまぁまぁじゃないか?


「おーっ! 当たりドロップでた―――――」


 エミュの喜びの声に目を向けると。


「異文明の食料だっ!」


 あー……。オレンジと白のツートンカラーの眩しい、某道庁所在地名メーカーの一番味噌ラーメンじゃないですか。


 口の中に広がる味噌の記憶。

 今後はもう気軽に味わう事も出来ないかもしれない。


 ぐーーーきゅるるるる。腹が鳴いた。


 じー……。無言でエミュを見つめる。


「えっ?……まさか、だろ? 献上すれば相当の褒美が下賜されるんだぞ?金貨以上は間違いない」


「エミュ、そのラーメン食べたことあるの?」


 ジト目はやめてやらない。金貨がどの程度の価値のモンかは知らんけど。


「らぁめん……と言うのか?この食べ物は。これかどうかは分からんが、以前やんごとなき場所で小さな器に少し……」


 その時の味わいを思い出したのか少し目に迷いが見える、フフ、迷え迷え。


「エミュは異界人作る所の異文明料理って食べてみたいと思わないのかなぁ、一口どころかキッチリ一人前、味噌味だよ。日本人の心だよ」


 まぁ二人で分けて食べるんだけどなぁ。


「ニホンジンノココロ……ミソアジ……」


 ごきゅり、エミュたんのつばを飲む音、


「あーあ、このあと死んじゃったりしたら、金貨どころか折角の異文明の食料もダンジョンに食われちゃうんだねぇ」


 キュルルるるん。おや、淑女のお腹からも何やらかわゆげな音が聞こえて来ますか?


「折角手に入れた異文明世界でも大人気なラーメンの味も知らずに死んじゃったりしたら勿体無いよねぇ……食料も足りないんだし、食べても罰は当たらないと思うけどねぇ、黙ってりゃ誰もエミュがラーメン食べたなんて分からない訳だし」


 溜息をつきながら落とした鉄盾を拾い上げる、心なしかさっきより軽い気がする。

 まてよ?冷静に考えて日本に居たときの自分にこんなモンスターと戦って勝つなんて芸当。できると思うか?

 学校出てから碌に運動もしていない上に仕事、食う、寝るのローテーション。


 ルオハレートの重い金属鎧まで着けてダッシュでシールドチャージなんて俺に出来る訳が有るか?


 多分これは、位階上昇(レベルアップ)のおかげじゃないのかと思い至る。


 日本に居た頃の俺がレベル1だったとして。レベル11で11倍にはなっていないとは思うけど、レベル1で1割上昇したとして最低でも身体能力は倍ぐらいになっているんじゃないかと思う。これならマジで生き残れるかもしれない。


 明日への希望が湧きあがる中、がさりとビニールの擦れ合う音が聞こえた。


 ふと、見上げれば。白とオレンジのツートンカラーの小袋をおずおずと差し出すエミュの姿があった。





 さて、今回もお世話になります。

 鍋代わりのルレオハートの金属ヘルム(サレット)の内側を水魔法でよく洗う。


「いや、二人で共に倒して得たアイテムだからな、当然クレオの取り分も含まれている、半分だけ食べてという訳にもいかんだろうしなぁ」


 さっきから顔を赤くして盛んに言い訳をくりかえしているが、いいんやで?食いしん坊さん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ