ぶぜんそう
こんにちは。
KURAです。
今回はとても短いものでございます。
前の話に入れるのも、後の話に入れるのも何となく気持ちが良くない。
よって生まれた話でございますゆえどうかご了承を。
脳裏は笑みを深め、佐藤を見つめている。
妹がいたという発言を聞いてワクワクしたかのように目を輝かせ、彼を見つめている。
「続けて?」
「……妹へ父親の暴力の矛先が向かないようにお前は自分自身を盾としていた。だが、ある時妹へ向いてしまった」
「だから妹を守るため殺した、と?」
「守るためじゃない。酒に酔って歯止めの効かない父親は妹の命を奪った」
「……」
「それを見たお前は怒りに身を任せ、殺った……だろ?」
いつも微笑みを絶やさない脳裏にしては珍しく高笑いを響かせて、手を叩いて佐藤を称賛した。
彼はその称賛を受け、彼を憐れみの目で見ていた。
「もう止まれ。孤独になったお前に帰る家はないかも知れない。だが、その道を進む理由も無いだろう」
「どこから知った? 情報は消してたろう?」
「近所の人間。お前の住んでいた家を探し出して、そのあと近所の人間を探し出した。お前にとっては取るに足らない隣人だったかもしれないが、情報は確かだろう」
「なるほどねぇ〜。ソコ、か。おめでとう。君は豊前奏の真実へと到達した」
「……やはり」
丸と告げられた佐藤は悲痛な表情を一瞬見せるが、そのまま眉間に深い皺の刻まれた険しい表情になった。
脳裏はその顔を向けるれているが、そんな事は気にせずに微笑み続けている。
「んで、どう思った? 悲惨な環境によって作られた殺人鬼?」
「化物と呼ばれたお前にも心は有るんだと思ったよ」
「……ちょっと待って僕化物なんて呼ばれてたの。心は有るさ。僕は心があるからこの道にいるんだよ」
「お前がそう進む理由はなんだ。もう罪を犯す理由もないだろう。お前の頭脳なら普通に暮らせるはずだ」
「罪を犯そうとは思ってないんだよ。ただ僕が僕らしく、一番楽しい道を進んだら、こうなった」
「ふざけるなぁっ!」
その究極のエゴとも言える言葉に佐藤は激昂した。
罪を犯す、人殺しの脳裏としての道が己の道だと言う彼を佐藤は許容できない。正義感を持つ彼はそれを理解できない。
常人としての、善人としての、豊前奏としての道は無かったのかと彼は激しく憤る。
「お前は……お前はぁっ」
「落ち着きなよ。どうしたのさ。過去を暴いたら改心すると思ってたのかい。事実確認で改心する馬鹿がどこにいるのさ。ここは探偵小説じゃないんだ」
「罪を償うという道はないのか。思いは、ないのか」
「償う……ねぇ」
「そうだ。刑務所へ入り、死の恐怖に怯えて毎日を過ごせ」
「それが償いになるのかい」
「少なくとも罪を重ねることはないだろう」
「……まぁ、この際はっきりと言おうか。嫌だよ。言われて刑務所に入ってるようならこんなになってないぜ」
脳裏は佐藤の目を見てはっきりと言った。
微笑みも鳴りを潜め、真剣な顔で見つめている。
珍しく本音のようで、それでいて真剣すぎて嘘くさい。
それを受けた佐藤は、怒りを覚えるが、それ以上に彼を染めたのは悲しみだった。
正しく人として生きてきた彼にはどうにも彼が哀れに思えた。
「なぜだ……何故なんだ。何故一つの不幸でそこまで歪める」
「歪んでたのさ。それはきっかけでしかない。多くの人殺しはそうだろう」
「違う。違う! 人は誰しも悪いものではない。生まれながらの悪人なんて一人もいるはずがない」
「……ふぅん」
怒り、そして悲しみ混ざり合ったその感情のままに佐藤は叫ぶ。
けれども脳裏には一ミリも届かない。
その言葉で脳裏の感情が揺らぐことはなく、ただ笑みを深めるだけだろう。
「さて、答え合わせといこうか」
そう彼はのたまった。
「…………は?」
「だから、答え合わせ。確かに君は豊前奏の真実へと辿り着いた。だが、それが答えとは限らない。だろ?」
突然突飛な事を言い始めた脳裏に全く佐藤はついて行けていない。
その言葉を飲み込もうとするが、頭がそれを拒否する。
「えーっと、誰の過去について調べてたんだっけ?」
「……お前だよ。豊前奏」
「豊前奏? ……誰それ。僕は脳裏」
「…………………………は?」
次がラストで御座います。
一気に予約投稿しているゆえ長くかけたこの話もすぐに準備が終わるのだなぁと思うと何とも布団に寝転がり寝る狭間のような気持ちで御座います。
小説というのは難しく、よくわからないものですがこの時は何となく良いものだなぁと感じさせてくれまする。
ではまた明日。




