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Why done it?

こんにちは。

KURAです。

ラストで御座います。


「誰って……お前の事だろう……? 脳裏」


「だから、僕は脳裏だよ。君が呼ぶ通り」


「……は?」


放心状態、その言葉を体で表す彼にわざとらしくため息をついて脳裏は言う。

王手であると思っていたら机ごとひっくり返されたという衝撃は彼の思考を吹き飛ばした。


「鈍いねぇ。君その豊前? がいた高校どうやって行ったのさ。写真でも見た?」


「調べた情報……」


「その殺し本当に僕がやったやつ? 指紋でもあった?」


「DNAすらなかった」


「ソレと僕を紐つける証拠は一つでもあった?」


「……ない。情報のみだ」


「じゃあ質問。嘘をつく時本当の事はどうやって隠す?」


全くの上から。

遥か高みから見下ろすように彼は問う。

塵芥を見つめるように慈しみと冷たさを持った視線が彼に向かう。


「……まさか」


「人は信じたいものこそ信じる。君は思ったんじゃないか? 僕みたいな犯罪者に、人格破綻者に、変わってしまうような悲劇があって良かったって」


その言葉は佐藤の奥底へと目指しするりするりと彼の中に入っていく。

思考すらも止まった彼は停止したぜんまい仕掛けの機械のように簡単に言葉を受け入れた。

茫然自失、そのような佐藤は腑抜けのように口も聞かずに話を聞く。


「確かに初めての殺しは人殺しを解析する上で重要だ。でもその参考にする事件そのものを間違えてちゃ僕なんて見えてこない。つまりは全くの人違いって事だよ。なぁ、佐藤正義くん。哀れな哀れな探偵くんよ。もしかして性善説なんて信じちゃってるのかい」


脳裏は嘲笑う。

嘘は言っていない。だが、陥れようとしていないとも言っていない。

まんまと引っかかり、その落とし穴の下で達成感を得ていた彼を指を指しそうなほどに、あざけ笑う。


「だが……たがっ! お前も何かしらの理由があって殺したんだろう!」


「そう大声出さないでよ。理由ねぇ。でも最近の子は何となくで殺したりするとか聞くじゃん。知らないけどさ。……ま、僕は理由あるけどさ」


「あるんじゃないか」


その一筋の光明のような発言に思わず佐藤は顔を明るくしてしまう。

それを見て脳裏は一際笑いを深める。


「何だったかなぁ。……そうだ、あの日は雨だったんだよ。傘を忘れちゃってさ、盗んで帰ろうとしたら間が悪くて持ち主が来ちゃったんだよ」


「それからはもう罵倒の嵐だったねぇ。元々気の強い人だったんだねぇ。でも僕買い物帰りでねぇ。たまたま持ってたんだ」


「ナイフ」


「脇腹をブスリ。血がそりゃもうドバドバ出てねぇ。雨と血と油で散々だったなー。勿論すぐ逃げたさ。何か運が良かったみたいで捕まりはしなかったけど」


「……ん? どうしたのさ」


佐藤は何も言えなかった。

空いた口は塞がらず、目は揺れ動きながら脳裏を見つめる。

心拍が上がり、胃酸が口をめざして登っていく。

佐藤は吐きそうになるのを必死に我慢してなんとか言葉を紡ぐ。


「人間……なのか」


簡単に人を殺す。

思いつきで殺し、それを悪と認識するが、悪びれない。


「人間さ。例え誰一人理解者が居なくとも、人間だとも。理解出来ないから別種として排斥するのは人間の悪い癖だ。良かったね佐藤クン。刑事としてまた一皮剥けたね」


人間にはどう足掻いても、何回天地がひっくり返ろうとも理解出来ない出会いがいる。

佐藤はコレを思い知った。

目の前の生物が人間なのかも彼にとっては怪しかった。


「思い返すと僕低気圧に弱いからあの日も苛々していたからなのもあるのかな。仕方ないよね」


「……バケモノ」


「バケモノねぇ」


「死んだ人間にも家族がいるんだぞ。友達も……愛する人だってっ。悲しむ人間がいるんだぞ……?」


「知っているさ。悲しいね。けれども僕はソレを受け入れよう。恨みも、悲しみも、怒りも。自分のエゴがそれを上回ってしまった人間なんだから」


「殺される事も許容するというのか」


「勿論。死ぬ覚悟なんて何十年も前に済ましたよ。……あー、僕みたいなのを無敵の人って言うんだっけ? 言わない?」


佐藤は目の前の人物が完全に己と違う生命体なのだとその時初めて理解した。

そしてこのような全くと言っていいほど違う人間が存在する事を知った。

蒙が啓かれる、そう書いて啓蒙というが彼にとっては悪夢に近いものであった。


「さて、丸つけも終わり解説もしてあげた。僕はもう幕を下ろしたって構わないけど……君は?」


「…………考えさせてくれ」


「脳死で捕まえるとか言うと思ったけど、違うんだね」


「……今までだったならばそうしていた。だが今、俺は俺がわからない」


「あら、そ。まぁごゆっくりー。僕帰るね」


脳裏は立ち上がり、来た道を戻っていく。

そしてエレベーターの扉が閉まる直前扉を手で止めた。

何の変わりもない笑顔で彼は佐藤へと声をかけた。


「喉乾いたら上に来なよ。コーヒーくらいは奢ってあげてもいいよ」


佐藤は返事も顔を向ける事もせずにそれを聞いた。

それに反応せずにニッコリと一際笑って彼は扉を閉めた。







脳裏が自らの店に戻ろうと来た道を戻っていると、何故だか店が騒がしい。

どうした事かと疑問に思っているとスタッフの一人が走ってきた。

走っていることもあるが汗をかいており焦っていることや疲れていることが伺える。


「どうしたのさ。そんな慌てて」


「はぁ……はぁ……失礼、しました。妙な人が店内で騒いでるんです」


「妙?」


「はい。何か噂……流れたじゃないですか」


「うん」


「どうやらYouTuberの悪い連中が嗅ぎつけたみたいで、ありもしない真実を暴こうと沢山来てるみたいなんです」


「……」


ピシリと脳裏は固まる。

全くの予想外、まさに青天の霹靂。寝耳に熱湯。

明るい笑顔のまま固まった涙頭は思考が止まっていた。

が、それもすぐに復活して対処を考え始める。


「あー、シー呼んで?」


「かしこまりました!」


涙頭からの言葉を聞いたスタッフの彼は店内へと走っていった。

残された涙頭は久々に空白になった思考に焦りながらも壁に背をつき深呼吸をする。

焦る時ほど深呼吸。もはや本能的にやったその動作で少しは彼の明晰な頭脳が戻ってきた。


そこから数十秒もしないでシーは駆けてきた。

涙頭の前でピタリと止まり、息一つ切らさずに涙頭へと挨拶をした。


「お呼びでしょうか」


「状況を報告してくれるかな」


「はっ。現在三名の無名動画投稿者が店内に潜入しており、三名の中の一名に強引な者がいたようで私やスタッフが対応しておりました」


「無名……か。有名な連中は来てないの」


「ちらほら来ておりますが、潜入が発覚するのを恐れているのか長時間在席しておりません」


「……オッケーならやりようはある、かな。いやぁ、予想外だったよ」


「私も予想外でありました。時代は変わると言いますが厄介な時代になったものです」


「そうだねぇ。ま、良い経験になったよ」


ハハハと涙頭が笑いかけるとシーは礼を持って返した。

それから涙頭は対応の為に店内へ急いだ。





「店長呼んでくれって。話があるんだよ」


粗暴な見た目で、怒気を込めた声を張り上げる男がいた。


「生憎店長は只今席を外してまして……」


「あぁ? こっちは店長呼べって言ってんの。わかる? 呼び戻すなりなんなりすりゃ良いことじゃん。なぁ」


「お客様私に何か?」


わーわーと大きな声で喚き散らす男に背後から涙頭が話しかける。

その声を聴くと男は勢いよく振り返りニヤリと笑う。

なかなか同業者は動けていない為初めて自分が話を聞けそうだと確信したのだろう。

まさに取らぬ狸の皮算用であるが。


「店長さんよ。アンタ何かヤバいことしてるらしいじゃん」


スマホの画面を涙頭へと見せつける。

画面には涙頭の噂されたいた事が書かれていた。

何かの情報まとめサイトのようだ。

涙頭は感心してそのアドレスを後で見る為に暗記した。


「んで俺は心配になっちまったわけよ。まさかこの肉本当は牛肉じゃないんじゃないかってなぁ!」


そう男は喚く。

だが怒っているようで笑みが隠せていない。

唾が飛ぶ中涙頭は明るく人当たりの良い笑みを浮かべる。

生意気な子供を見るように慈しみすら持った視線を持って対応している。


「……店内で話していては他のお客さま方の邪魔となってしまいます。全てお話ししましょう。だからどうかこちらへ」


「お? おう。わかりゃいいんだよ」


男のニヤニヤはもう止まらない。

同業者が攻めあぐねている中、己は話を聞けて、しかも全てと言うんだから凄い。

男は脳内で銅飛んで銀もあり得るのではないかという無駄な期待をしながらも涙頭についていく。



男は店の裏へと連れられていく。

涙頭は見ている人間がいないことを確認すると懐からスタンガンを取り出し、男へと押し当てた。

男は対応する事も出来ず急に流れる電流により意識を手放した。


「はい、処理しといて」


「はっ」


涙頭は崩れ落ちる男を側に潜んでいた部下に任せた。

部下は男を抱えた何処かへと連れ去っていく。

ある程度の処置を終えたので涙頭は店へと帰ろうとすると彼に話しかける人影が一人。


「おい」


「……考え事は終わった?」


「まぁな。それよりもあの男、どうするんだ」


「洗脳して手駒にしようと思ってね。んで対処に当たらせようと思ってね」


「……そうか」


明らかに犯罪行為であるコレを見ても叱責しない彼をみて涙頭は首を傾げる。

このような人物であったかと。


「脳裏、俺はな。お前を捕まえようと思う」


「……ん?」


涙頭はこう予想していた。

折れるか、激怒して暴れ出すのではないか、と。

だが彼のとった選択は継続らしい。


「俺はお前を調べ上げる。今回みたいな曖昧ではなく。逃げられないほどに。そしてお前を捕まえる」


「……僕届きかけた刑事の話しなかったっけ?」


「そんなことは理由にはならない。覚悟しておくといい。必ず俺はお前を全て暴いてお前の目の前に現れる」


それだけ言うとさっさと佐藤は帰ろうと踵を返す。

それをみて涙頭は笑う。

声を上げて笑い、そして言う。


「面白い。圧力はかけないであげるから存分にやりなよ」


「……ひとつだけ聞かせろ。アレは本当か」


「へぇ……? 勘がいいね。嘘さ」


「……そうか」


佐藤はそれだけ言うともう何も言わなくなり、見えなくなった。

それを笑いながら涙頭は見送る。


「よろしいので」


側に潜んでいた部下が是非を問うてくるが涙頭は手を振り示す。


「面白いじゃないか。彼に捕まるようなら僕も年貢の納め時って事さ」


すると笑いも収まったようで、涙頭は店へと戻る。

店内は一番うるさかった男が連れて行かれたことにより静かになっており、完全な正常とはいかないがいつもの静かなら喫茶店へと戻っていた。


「お帰りなさいませ」


「状況は?」


「特に問題ございません」


「うん、オッケー。じゃあ話している体だし、僕は裏に引っ込むよ」


「分かりました」


エプロンや帽子をつけながら涙頭は思う。

今回の余興は大成功だったと。

見つけた人間は自分の予想を見事裏切って見せたし、この事件の影響と予想していなかった。

だからこそ彼は笑う。


「いやぁ、やっぱ人間って面白いなぁ」















恥ずかしながら今話は自分としても納得がいっていないのであります。

もっと良い終わり方があったのではないか、もっと良い書き方があったのではないか。

ですが終わりを付けねば投稿はできません。

故にこうなり申した。

日々精進で御座います。


話は変わりますが、この次の話の事です。

次のお話はまっっったく思いついておりません。

故に未定ではあります。

また発作のように書く事でしょうから、更新が来た時にはまた作者の病気が始まったようだと考えていただければ。

それではまた何処かで。

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