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銀の光

おはようございます。

KURAです。


それは突然の事だった。

扉が勢いよく開け放たれ、ニコニコとした男が飛び込んできたのだ。


「やぁ!」


その音を聞いた三人はすぐさま行動へと移る。

寝ていた二人は体を跳ねるように起こし、己の懐にある武器へと手を伸ばした。

起きていた脳裏は驚きながらもゆっくりとした動きで懐にあった銃を喧しく入ってきた侵入者へと突きつける。

男は何故己に武器が突きつけられているのかわからぬまま叫ぶ。


「……な、何で俺を!? というか何故銃をもってる!」


三人は数瞬頭を回転させ、危険度が少ないと結論が出ると武器を下ろした。

脳裏はジッと入ってきた彼の体を見ている。

二人は欠伸をしながら体を伸ばしている。寝起きだからだろう


男はだらだらと冷や汗をかきながら口を開いた。

それは先程の仲間に挨拶するような軽いものではなく、腰が引けていて何かに怯えているようだ。

まぁ、この場で怯える対象など分かりきっている事だが。


「な、なんだね。人の体をそんな不躾に見る物ではないぞ」


「………………あ」


その一音で男は肩を跳ねさせた。

ゴクリ、そう喉を鳴らして緊張の眼差しで脳裏を見つめる。


対する脳裏は喉にひっかかっていた小骨が取れたかのような表情だ。

そして男を指差して言った。


「君アレだ。シルバーなんとか」


「シルバーマンだ! ……あ」


そんな言葉を聞いた二人はまた寝ようとしていた体を起こして彼を見る。

方や驚いたような目で、方や観察するような目で彼を見ている。

彼はそれはもう目を泳がせている。

今にも逃げてしまいそうだ。


「へぇ、ちったぁ暇つぶしになるかと思ったら意外と面白そうじゃねぇか」


「ふふっ」


鎖鬼は獰猛な笑みを浮かべ、鴉はオモチャを買ってもらう幼児のように笑った。

ダラダラと汗が流れる男。

ゆっくりと後退りをし、扉を開けようとした所いつの間にやら距離を詰めていた鎖鬼に肩を掴まれた。

男は懇願にも似た声をあげる。


「ちょ、ちょっと手洗いに……」


「そうビビるな。取って食おうって訳じゃあねぇ。しかも俺らは仕事じゃなきゃ殺しなんてしねぇよ。なぁ?」


「そうそう。僕たち面倒事嫌いだからね、やらないよ。しかも仕事の直前だぜ? ……あぁ、館長が言ってた追加って君かぁ。君も聞いてるだろ? 同僚だって」


そんな事をペラペラと喋る脳裏はニコニコと軽快に笑っている。

人のいい脳裏の笑顔が男からすると恐ろしい悪魔の笑みにしか見えないだろう。

鎖鬼はガッチリと肩を掴んで離さないし、なんならゆっくり部屋の奥へ体を動かされている。

彼の感じている絶望は計り知れないだろう。

彼の悲痛な叫びが博物館に哀しく響いた。

南無三。


「うわぁぁぁあああああっ」




男は結局座らされ、目の前には机を挟んで脳裏が座っている。

気持ちの良い笑顔を気持ちの悪いほど浮かべ、確実にコレが初対面なら好印象を勝ち取っていたであろう顔は男には口裂け女のように口が歪んでいる悪魔にしか見えないだろう。


そして机の左右、つまりは男から斜め右と左には順に鎖鬼と鴉が座っている。

彼等も寝ていた姿勢から体を起こし、鎖鬼は遠くのシマウマを見るライオンのような目で薄く笑っている。

鴉は無表情ながらも頬杖をつき、冷たくもじっくりと視線を送っている。


そして視線を送られている当の男だがその三つの視線で胃がやられそうですぐさま家に帰って缶ビールでも一気飲みしてベッドにダイブしたいと思っていた。

だが、その願いはどれだけ願おうと今日限りは叶う事はない。何故なら襲撃があるのは恐らく夜である。

つまりは長い長い、そして彼には永い夜の始まりを意味するのだ。。


「んで? 情報はどんだけ持ってんの」


「館長から聞いた事くらい……だな」


「ま、堅気ならそんなもんだろうな」


「僕は堅気があんなもん持ってることに驚きだけどね。ま、それなら別に伝える情報はないかな」


「……君達の情報網は優秀だろ?」


「なるほど? 調べてたか。堅気の癖に優秀だね?」


話しながら軽く挑発する、脳裏の悪い癖だ。

たまらず男はムッとするが、脳裏のニヤニヤとした顔を見て風船が萎むように息を吐いた。

無駄に入っていた力が抜けたようだ。

もっとも脳裏にそんな意図はなく、ただの癖なのだが。


「銀城」


そんな力を抜けた彼、銀城は真っ直ぐ脳裏を見つめてそう言った。

名前を名乗ったのだ。


「ん?」


「俺は銀城暁。銀で良い」


「おいおい、迂闊じゃねぇか? 俺らは悪党で、お前は自称ヒーロー。お前が良くても周りが良いとは限らないぜ」


「とっくに覚悟はしているし、天涯孤独の身でね。もしもそんなことやるなら……そうだな、んなことする前に俺が捕まえてやるよ。マジシャン」


「……ほう」


鎖鬼は一瞬の表情の弛緩の後腹を抱えて笑い出す。

脳裏も面白げに笑い、顎に手を当て、銀城を興味深げに見つめている。

鴉は一瞬目を大きく見開くと、クスリと少しだけ笑った。


「そりゃあ、また……懐かしい。くははっ……良いよ、良いだろう。有象無象っつって悪かった。撤回してやらぁ。お前は俺の敵だ、認めてやる。戦うに値する俺の敵だ。仲良くしようぜ?」


「仲良くしてやるよ。ヴィラン野郎」


仲良く、何て言っているが握手なんてせずに獰猛に睨みながら笑い合う。

そしてお前を殺す(捕まえる)とはっきり宣言した。

それを見ていた脳裏がクツクツと笑いながら話しかけた。


「珍しい事もあるもんだね〜。んで、銀くんよい。君はやれんの?」


「今ここでお前ら相手に事を構えたら負けるだろうな。だが、誰かの片目くらいは冥土に持っていく位は準備はしている、といったら十分か?」


そう銀城は真剣な顔で三人を前にして言ってみせた。

そこに虚勢などはなく、負けることを、死ぬ事を理解していると断言してもなお立ち向かうと宣言している。


それを受け、脳裏は満足気に笑った。

笑いが混じるような彼を見ていて彼を見ていないような視線が静かにゆっくりと彼を見つめ出した。


「ならいい。ココにはセンサーが張り巡らされてる。……あぁ、勿論館長が付けたのじゃなくて鴉のね? 中にも、当然外にも」


「凄まじい技術力だな……」


「天才にも学ぶことはある。虫の甲殻なんて面白い」


「さようで。負ける気もない事を理解しとけ」


長い付き合いの無い銀城が鴉の言葉の削がれた話についていけるのは彼の優れた頭脳を証明してるだろう。

頭脳優れた二人の会話はその後一瞬目を交わすだけで終了した。


「センサーが反応したら鴉が合図を送る。そしたら警戒態勢だ。わかった?」


「んな簡単な事覚えられない程馬鹿じゃないんでね。足引っ張んなよ悪党共」


「正義って面倒くさそうなことで。ま、今回は仲良しこよし、睨み合っていこうか。正義のヒーロークン」


そして日が沈み、全てを隠すような夜が来る。

だが忘れてはいけない。隠されたからといって、存在そのものが無くなるという訳では無い事を。

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