正義か悪か
こんばんは!
KURAです。
あけましておめでとうございます。
今年もこの小説をよろしくお願い致します。
「……また珍しい」
涙頭の店の中の個室にいる辛徒は驚きの顔と共にそんな声を出す。
前にいるのはその原因となる発言をした涙頭であり、横には僅かに目を大きく開いている零がいる。
二人の顔からは少しの驚きが見られる。
「まぁねー。でも無いわけじゃないだろ?」
「表の連中が俺らを頼るなんて、しかも表の仕事をなんていつぶりだ?」
「……四年前くらいに大統領サンから来たような気がするよ」
「あー、俺が降りたやつか。となると俺はもっと前か」
二人が記憶を探っていると零から声がかかる。
零は興味がなさげな顔で進展しない話に少しばかり苛ついているようだ。
「いいから詳細」
「はーい。依頼主が博物館の館長なのはいったね? 今度有名な宝石が飾られるあそこさ。アレを守って欲しいんだとさ」
「……めんどくさい場所に無かったっけ」
「だね。金は三千万。……やる?」
涙頭はそう問いかけた。
意味のない声を数秒出した後辛徒は返事をした。
「暇だし俺はやる」
「僕も」
「んじゃ決定ね。日程は明後日からイベントの終日まで」
零は返事をして端末を操作し始めた。
己が誇るデータベースにより情報を調べているんだろう。
涙頭は近くにいた店員にコーヒーを頼んだ。
「あ、俺ナポリタン」
「金はキチンと取るよ」
「手伝ってもらうくせに生意気じゃねぇか?」
「報酬はあるだろ?」
「手間賃だよ。どうせ一人じゃ無理なんだろ?」
「無理っていうか……僕自身あんまり防御に向いてないし……」
「あぁ、そうか。お前マスクとかしてねぇと全方位に攻撃するしな」
涙頭の得意とする戦法は毒であり、毒ガスなんて使おうモノならガスマスクをしていないもの全てを冒し尽くす。
こんな表の仕事をする場合とても使いにくい。
ガスマスクには数に限りがあるし、そこまでするほどの労力を人にするほど涙頭は博愛主義者ではない。
「……あ」
「どうしたの?」
ナポリタンを食べようとした辛徒が突如声を上げた。
それは気付きの声である。
涙頭は怪訝そうな顔で辛徒へと問いかけるが、零は眉を片方上げるのみでもはや雑音としか感じていないだろう。
「いや、そういや多分盗む側の奴この前依頼受けた奴だわ」
「なんでわかるんだい?」
「俺はお前みたいに依頼人を信用してねぇんだよ」
「なるほどね。調べたんだ」
「だからこんな風になるだろうなって事も読んでた訳よ」
二人の口が歪む。
全てを馬鹿にするような、可笑しくてたまらないようなオカシイ笑いだ。
辛徒の席の後ろから何かが砕ける音が聞こえる。
「ありゃ、容赦ない。前までもっと慈悲なかった?」
「いや、この前気付いたんだよ。民間人とか、そんな関係ない奴らならともかく敵に慈悲をかける必要あるか? ってな」
「違いない」
にこやかに涙頭が席を立つ。
「コーヒー冷めるぞ?」
ぐいっと飲み干し、彼は辛徒に空になったコップを見せた。
そして辛徒をみて肩をすくめる。
それを見て彼は苦笑いをする。
店員におかわりを告げ、言った。
「大丈夫。五分で終わらせるから帰ってきたら熱いコーヒーが飲めるさ」
「相変わらずえげつないな」
涙頭はそうしてレクター博士のように体を棒のように固定され、転がされていた男を裏へ引きずっていった。
呻く事しかできず運ばれていく後はひどく哀れで……そして滑稽だった。
そして暫くして、詳しく言うのならば辛徒がナポリタンを半分ほど食べ、新しいコーヒーが運ばれてくる頃には涙頭は戻ってきた。
「残念。鉄砲玉だ」
「名前は?」
零がそう問いかけた。
「えーと、須藤かいきだったっけ」
「オッケー」
数分零が端末を弄るとまた口を開いた。
「うん。辛徒合ってる」
「だろうな。さて、どうする?」
「仕返し? めんどくさくない? この程度でさ」
「ま、そうか。ってかどうせ奴さんは博物館にくるだろうしな」
殺されかけたことは彼らにとってこの程度らしい。
涙頭がコーヒーを一啜りして言った。
「それにしてもコレで殺れると思ってたのかな?」
「そりゃカエルだからなぁ? アレ程度で俺らを頼る位だぜ?」
「誰が紹介したやら」
「有名だからな。どうせそこらへんの俺らのことよく知らないバカだろ」
辛徒が視線を感じて涙頭の方を見るとジトリとした目を向けていた。
信用等と言うくらいなら仕事を選べと言いたいのだろう。
「なんだよ」
「よく僕のこと言えたよね」
「バカ、金さえ貰えりゃネズミだろうと虎だろうとやるわ」
「どうせ面白そうとか思ってたんでしょ?」
「否定はしねぇがな」
二人の携帯が同時にピコンと音を出した。
二人が訝しげな顔をすると、零が説明を始めた。
「博物館の間取りわかったから送った。あとソレに防犯が脆弱なとこ書いてるから見といてよ」
「りょーかーい」
「おう」
「んじゃ僕は帰るね」
「あー、俺も食い終わったし帰るわ」
「じゃ、明後日会おうね」
「……」
「おー」
零は背中越しに手を挙げて返事をし、辛徒は気をつけた返事をした。
何の変わりもない仕事風景。
正義も悪も二人にとっては見分けすら付かない。




