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辛い視線

こんばんは。

KURAです。

今回若干少ないです。


「あ? んだよ」


辛徒は自らの事務所でそう話す。

右手にはスマホがあり、電話していることがわかる。


「君ガラ悪過ぎない?」


その電話の主である涙頭はそう言った。

仮にも接客業である探偵である辛徒を非難するようだ。

同じく接客業である涙頭には何か思うところがあるのだろう。

……まぁ、ただの軽口かもしれないが。


「客いねぇしオメェって分かってんのに文句あんのかよ。んで、要件は」


「今度ウチの店来てよ」


数瞬目を上へと向けて考える辛徒。

涙頭の言葉の意味を考えてるようだ。

涙頭はたまに言葉の裏に真意を隠すことがある。彼はそれを疑ったのだろう。

結果は特に裏は無さそうというモノが辛徒の脳から出されたのだが。


「……んー、物は」


「石」


涙頭はそう簡潔に話した。

電話ということもあり、聞かれても良いように話しているのだろう。


「ケッ、めんどくさいネタ持ち込みやがって」


「やらないのかい?」


「ばーか」


「んじゃまた今度」


返事をせずに罵倒で返したのに会話を成立させているのに彼らの付き合いの長さを垣間見える。

電話を切り、スマホをソファに乱暴に投げ出すと、ため息を深々とつく。

暇してたから丁度良いが、今回はめんどくさそうだなんて考えている。


彼には大事な助手がいる。

視線を動かし、己の助手の姿を探す。

涙頭の店に行くには一日事務所を空けなければならない。

そして、場合によっては数週間もの間空けなければならない。

そのことについて話しておかなければならないだろう。

辛徒が見ると甘城は丁度コチラを見ていた。


「聞いてたろ。明日出かけるから来なくて良い」


「わかりました」


未だ甘城の視線が外れない。

辛徒は職業上もあるが、視線には敏感だ。

そしてその彼の目は甘城の視線から興味という感情を感じ取った。


「おい」


「……なんですか」


「日常って尊い物だよな」


「何を爺みたいなことを」


日常を奪う側の俺が言えたもんじゃねぇが、なんて辛徒は心の中で吐き捨てる。

だが、そんな事で後悔するような罪悪感は彼は持ち合わせていない。


「非日常はドミノみたいにやってくるんだぜ? 全てが押し寄せる。お前の目の前に、何があるのか。見えてんのか?」


「なにを……」


「お前がその足を出した瞬間。もう止まらねぇ。全部巻き込んで、変わっていく」


辛徒は真っ直ぐとした目で甘城を貫く。

甘城は動揺した目で見つめ返すことしか出来ない。


「別に辞めてもらっても構わない。俺にとっちゃソレが賢い選択に見えるがね」


「……」


甘城の目がゆっくりと静かになっていく。

その目を見て彼は思う。

そして小さくめんどくせぇと声に出した。


「私は止まらない。私の目は前に付いているから」


「そーかよ。勝手にしろ」


それは甘城の芯だった。

私はコレ以外の生き方はできない、曲げられないと辛徒に真正面から主張したのだ。

それに辛徒は呆れた声で返した。


すると彼らは各々の作業に帰っていった。

辛徒は背もたれによりかかり、明日の事や、次やらかす事を頭に思い描き始めた。


甘城は己の持っている本へと視線を落とし、ゆっくり目を縦へと動かしている。


二人の間には一つの線がある。

その線は無ければならないものである。

だがその線は朧げで、今にもぼやけて消えてしまいそうな物だ。

その線は境界を正確に分けている。


「あー、あとでお使いいってくれ。冷蔵庫の唐辛子類が切れそうだ」


「わかりました。いつも通りお釣りは頂きます」


そしてどこかゆるい事務的な会話をたまに挟む。

そんな日常へと帰っていった。

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