渦に舵なぞついていない、故に
こんばんは。
KURAです。
えーっと、はい。
定期更新難しいですねー。
遅れた分は頑張りますけど~。
嫌になることだけは避けたいのでゆる~くいきます。
ゆる~くご贔屓にお願いしまーす。
「……」
深い沈黙が場を支配する。
ここはあるホテルの一室。
いるのは二人の男。
ご存知脳裏と鴉の二人である。
「尾?」
「……虎どころじゃないかもね」
「後悔?」
「……キミ本気でソレ言ってる?」
「……」
沈黙を破ったのは鴉だった。
文ではなく単語でしゃべる彼と少し体がダルそうに話す脳裏。
鴉の技術で処置を施したとはいえ、鴉は医者ではないし、もしも医者であったとしても身体へのダメージは軽減することしかできなかったであろう。
「まさか」
「……だろうね。もうちょっと表情筋使った方がいいよ? 冗談に見えない」
「能力でも持った?」
「あは、そうだね」
彼ら二人は自室てこう話しているときでさえ片時も警戒を解くことはない。
二人の顔を隠している仮面かそれを物語っている。
「勝てる?」
「さぁねえ。でもねー、ちょーっと、やる気出てきたかも」
「あーらら」
鴉は目の前に手を合わせた。
まるで誰かを弔うように。
「それ誰に向けて? この国のやつら? 千変万化? ……それとも僕?」
「全部。これから死ぬ方」
「なるほど。理にかなってるね」
二人は見えもしない笑顔で通じあった。
小学生のイタズラを企む悪い笑顔のような、中学生の悪ふざけでバカばかりやっている悪友たちのような、高校生の落ち着いて気を置かない中の親友のような、大人の悪どい笑みのような二人。
彼らはそして動き出した。
「じゃあ、あとで」
「地獄かな?」
「かもね。天国かもよ?」
「天国って地獄みたいな所の事言うんだね」
「あは、珍しく饒舌だね。テンション上がってきた?」
「……当然」
二人は部屋を出た。
そして、ホテルから出て、二人は、別れた。
顔に獣のような獰猛な野心を宿す笑みを貼り付けながら。
それから……1日も経たない内だ。
二つの国に妙な気配がはり付き出したのは。
ただ、そこで暮らしているだけで、何も起こっていないのに腰を抜かしそうな、謎の気配。
腰を抜かす、というのは表現として不適切かもしれない。
何故ならばそれは地面を這い、そして足をつかみ、そして愛の抱擁の如く包み込む。
赤子の霊でもいるのではないかと錯覚しそうな気味の悪い気配。
この国の王様ルートヴィヒが報告とその気配のタブるパンチにより、膝を折り、うなじを晒し、刃を迎え入れるのも良いのではないか。
そんな下らない考えが脳裏に生まれ始めた頃。
ソレは来た。
「やぁ、流れの傭兵なんだけど。雇うかい?」
いつもなら失笑で済まし、鼠のように追い出す彼だが、そんなことも言ってられない。
そして言えない。
「……礼儀知らずな面は……傭兵という事で目をつむろうか」
何故ならルートヴィヒ、彼は己の自室に居たからだ。
そして部下に守らせ、誰も、部下すらも入れないように指示をしていた、筈だったのだ。
「アハハ、ゴメンねー? 貴族様みたいな教養は持ってなくてさ」
ニヘラと笑う少年。
彼が不思議と恐ろしかった。
コイツと一緒にいては、ダメだ。
コイツと話してはダメだ。
関わってはダメだ。
背骨よりも前にあり、そして肺よりも奥にある。
なんだか、わからない胸の奥にあるナニカがそう叫んでいる、そうはっきりとルートヴィヒには思えた。
「僕の力は強いよ?」
いつのまにかルートヴィヒに接近していた少年に耳元からそう囁かれた。
彼は不思議と少年が怖くはなかった。
逆にひどく落ち着いた。
酷く何かに怯え泣いている幼子の背を母がさするような、絶対的な安心感。
ルートヴィヒをソレが包んだ。
「……あ、あぁ」
「それでいいんだよ。僕は君の味方だ」
ゆっくりと反抗する娘を諭す坊主のような優しい声に、神経をピンと張り巡らせ、力を入れて、一秒もの時間ロスを惜しんでいた彼の体から絵の具が落ちるように力が抜けていく。
「……頼む」
「うん、うん。それでいいよ。それが良い。疲れただろう? ゆっ……くり休みなよ。起きた頃に、また来るよ」
「……」
ルートヴィヒが数年ぶりではないかという程の安らぎの中静かに寝息をたてている。
少年はそれを見届けると、扉の方向へと向かいながら一言だけ呟いた。
「久々したナァ、このロールプレイ」




