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9話~子供ゆえにヘタレ~

セリアの手の上には何処かの民族衣装のようなものを着た小人のような大きさの少年が眠そうな顔をして座っていた。

「…なんじゃこりゃ」

これは俺の言葉。思わず素で口に出してしまった。そしてその反応は俺だけじゃなくキアーラもしている。

「ねえ、お母様。魔力を手のひらに出そうとしたらこうなったんだけど…。どういうこと?」

そしてファイの方を見ると驚きが重なり過ぎたからなのか口までがぽかんと開いていた。




「セリア。もしかして最近宝石の原石みたいなものを拾わなかった?」

「え? うん。これのこと…―あれ!? 割れてる」

頷いてポケットから取り出したが、見事に四等分されていた。

「間違いないわ。それは精霊石。手のひらに座っているのは精霊石から出てきた精霊で見たところ風の精霊みたいね」

ファイはまじまじとセリアの手の上にいる風の精霊を観察しながら分析していた。分からんが精霊石を経由して精霊って出てくるのか。いや、まあそんなことより…だ。

「姉さん…。そんなのいつ拾ったの?」

「探検した時の帰り道に偶然キラッとしたのが見えて拾ったらそれだったのよー」

正直俺もそういうの欲しかった。というのはあえて直接口には出さなかったが、恐らくその意味を理解したらしくセリアは誇らしげに尻上がり口調で言った。








「私もそういうの欲しかった…」

あなたもですかキアーラさん。まあ同意するけど。

「それは難しいわよキアーラちゃん。精霊に会うためにはセリアのように精霊石を手に入れるか、偶然精霊に出会って契約をするのかのどちらかなんだけどね」

一息置いてまた話し始めた。

「その二つが難しい理由だけなんだけど、まず精霊石は少し輝いてるのかな? って思うくらいの石で、見つけるのは世界各地にポツポツと散らばっているから少し難しい程度で済むんだけど、問題はその後のことで、自分に合った属性の石じゃないとセリアの風の精霊のように生まれてこないのよ」

「どうして私の属性に合ってないといけないんですか? それに属性ってどうやって分かるんですか?」

キアーラは更に詳しく精霊についての説明を求めた。そんなに精霊が欲しいんですか…。





「キアーラちゃん。そんなに急がなくてもちゃんと教えてあげるわ。まず精霊石の属性は色を見れば分かるの。火は赤、水は青、土は茶、雷は黄、風は緑、光は白色になっているわ。そしてその属性と同じ属性の魔力をながしてあげないと精霊石という殻を破るための力を精霊は溜められないから同じ魔力を持っていないと駄目なの」

「分かりました。後、精霊に会って契約するのはどうやってするんですか?」

理解したキアーラが次の説明を求めた。意外とキアーラさんて聡いようにみえるから勉強とかしたら一気に博識になりそうだなー。



「精霊に会うには大精霊がいるところ。つまり精霊の谷で直接契約することが必要ね。だけどその周辺には魔物がうじゃうじゃいるから一人じゃまず無理よ」

「そうなんですか…」

その言葉で精霊を持つことが本当に難しいと思ったのかとうとう、ぴんと立った三角の耳はしょんぼりと垂れ下がりふさふさした尻尾も揺れることを止めていた。

ていうかその耳と尻尾の動きってその時の気持ちと連動してるのか。分かりやすいな。







「それよりこの子はどうするの? っあ。動いた」

今までずっと座ったままだった風の精霊はすっくと立ち上がると、セリアの周りをふわふわと飛び始めた。

「どうするって…。精霊石から生まれさせた人がその精霊の契約者になるのよ? これからは精霊石の中じゃなくてあなたの心の中に住むことになるのよ。そんなことよりまずはその子の名前を決めてあげなさい」




「はーい。どうする名前? ――――うん。決まったよ」

「「「はっや」」」

精霊としばらく向き合ってたかと思うとこれだ。名前は最初から決めてたのかという。

「どんな名前にしたの姉さん?」

「ふふふ。あなたに教えることはできませんね」

試しに聞いてみるとセリアから変な口調で返された。なんだかあまり近寄りたくないテンションになってきたな。



「まあいいわ。これで魔法の授業は今日は終わりだからロイの所に行ってきなさい。武器の扱い方や素手での戦い方を教えてくれるわ」

「分かりました。それでは行ってきます」






父さんはどこにいるのかな――とか思ってるとなんと居間でカーン兄さんの教師をしていらっしゃる。ていうか兄さんは何で来ないかと思ったらこっちで勉強してたのか。

「父さん。母さんからは一段落ついたから次は父さんから教えてくれない?」

「ああ。よし、カーンはもう自由にしていいぞ」

「はい」

手短に言うとカーンはそそくさと外に出て行った。

「それじゃあ、少し準備をするから外に出て準備体操をしておきなさい」






その後、父が出てきてからの特訓は普通に辛かった。というか訓練中の父さんの性格が180度変わって非常に恐ろしかった。

まず、三人にショートソードを持たせてから素振り100回を命じるが、力が足りないのと体力が足りないのとでセリア46回、俺58回、キアーラさん70回で腕が上がらなくなった。いや、子供が持つにはショートソードでも十分重いんだよ?

それを見た父さんは根本的な所に気づいたらしく基礎体力トレーニングから始めるという。


部活の時を思い出したね、あれは。一時間山の中をランニングさせられた挙句その疲れた状態のまま父さんが急に「素手での戦い方を教えるぞ!」とか言い出し始めてその動作を見たら空手を教えてるってことが判明したから驚いた。しかもその名前を聞くと「手」とか言い出すもんなあ…。




結局、3時頃に始めて訓練が終わった夕方には父さん以外全員が立っていませんでした。




そして簡単に体を洗ってから夕食をとって自室でぼーっとしている現在に至る、と。


「今日が転生してから一番疲れて一番収穫が大きかったわー」

なんとなくぼやいてみたが実際に収穫は自分だけでするのより数倍は効率が良かっただろう。魔法に関しては本だけだと分からない部分もあったし、武器の扱い方も知らなかった。

それでもなにより大きかったのは俺のスキルに”空手”が追加されたことだろうか。これがスキルになったということはこれを熟練させることによっていざという時に便利になるかもしれない。まあ力が関係してたら残念な感じになるかもしれないけど。



「…まだ寝るには早いかな?」

外を見ると暗闇しかないが体内時計では10時頃だろう。この時間ならもしかしたら母さんに光属性のことについて教えてくれるかもしれない。

「少し下に下りるか」

階段を踏み外さないように魔法で火を出して下りると予想通り母さんは起きていた。


「あら? テオ、どうしたの。こんな夜遅くに」

母さんだけがいるところを見ると父さんも寝ているようだ。

「ちょっと母さんに魔法のことで質問したいことがあったから来たんだけど…。父さんは?」

「ロイは珍しくはしゃぎすぎて疲れてしまったからもう熟睡よ。後、魔法のことならここで話すより書斎で話しましょうか」

「うん、分かったよ」






「それじゃ、何を聞きたいの?」

「今日の昼にキアーラさんが魔法を使った時に母さん光属性とか言ってたでしょ? 僕が知ってる限りだと魔法は火、水、土、雷、風の五種類しかないって本に書いてあったんだけどなんで光属性があるの?」


俺は寝ようにも寝れなかった原因を話した。すると母さんは少し顔を険しくした後にため息を吐いてゆっくりと口を開いた。

「あまり、このことは子供たちにも言いたくはないんだけどね…。まず、光属性のことを知る前にテオには知っておくべき事があるからそっちから話すわよ」

俺が知るべき事? 戸惑いながらも首を立てに振った。



「…あなたの首にかけてる首飾り。きっちりと視なかったから気づかなかったけど、それは精霊石よ。しかも闇の精霊が宿っているもの」


体力と力の無さが見事に歳の大きさと逆になってしまった(汗)


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