10話~発覚~
「…さっむ」
早朝目が覚めて俺は目を擦りながら外に出た途端、知らず口に出していた。
朝の空気は肌を刺すように冷たいがそれを我慢して軽く動けそうな場所に移動する。昨日得た”空手”の練習をするためだ。まあ、そうは言っても基本の正拳突きと前蹴りくらいしかまだやり方は教わってないのだが――それでもちゃんと数をこなせば肉体的にも強くなるだろう。
「うん…。始めるか」
軽く息を吐いて精神統一をする。父曰く精神統一をするのとしないのとで練習の効果が違うのだそうだ。とりあえず、正拳突き、前蹴りを右左100回ずつすれば良いだろう。少なくとも昨日のトレーニングによる筋肉痛を我慢してそれ以上するのは個人的に我慢出来ないと思う。うん。
――昨日のこと…。そういえば母さんのあの答えは予想の範囲内を超えていたな。
拳を前に突き出しては引っ込めて元の体勢に戻る。これを繰り返し続けながら頭の中では昨夜あったことをもう一度思い返していた。
「この首飾りが闇の精霊石…?」
アレシアさんに貰ってから肌身離さず身につけている黒光りした丸い石を手に持ってみた。…どう見ても普通の綺麗な石にしか見えないのだが。
「そうよ」
ファイは俺の目をじっと見つめながら頷いた。ていうか、今日精霊石が見つけにくいものだって言ってたのに何でアレシアさん持ってたんだよ。
いや、それよりだ――。
「これって僕でも精霊に孵すことは出来る? それに他に隠してる属性があるんでしょこの流れだと」
まずは精霊を孵化できるかどうかを教えてくれよ。
だが、ファイは俺の気持ちを裏切り自分で判断して精霊ではないほうを話し始めた。
「ええ。あなた達に教えたの以外に私が知ってる魔法の属性は光、闇、時空、創造の四つよ。そしてそれを教えなかったのはその属性は使うことが出来ないと意味が無いからよ」
「使うことが出来ないとって、その四つの魔法は五属みたいに自分とは違う属性でも使うことが出来ないって意味?」
恐らく母さんは魔法としての格が違うとでも言いたいのだろう。
「テオは良い生徒ね。確かにその通りよ。…少し話は変わるけどテオ、自分の属性が何かは分かる?」
「うん。土属性でしょ?」
自信の魔法の属性の色は回復魔法を使う時にのみ反映されるはずだ。茶色に光っていたから土属性だけで間違いないはず。
「少し違うわ。あなたは土と闇属性の二つを持っているのよ」
「っふ!」
右手の次の左手の正拳突き百回目を終えたところで軽く休憩を入れた。
回想しながらだと、明らかに真っ直ぐ突けていないから回想は止めることにした。
あの話の続きをするとだ。俺には多少なりとも闇の属性があるが、今は精霊石を孵化させるために魔力を毎日流しても二年くらいかかるくらいの魔力しかないが上手くいけば魔力量が増えて少しはやくなるかもしれない。とのことだそうだ。後、基本的にあの四つの中で闇だけが人から嫌われているらしく使えるようになっても人前では使うなとも言われた。
ちなみに、その後にちゃんと光属性のことも聞いてみるとそちらは勇者や巫女などがそれになることが多いらしくその属性をもっているとむしろ歓迎されるらしい。なんて扱いに差があるんだろうね!
…なんか虚しくなってきたから前蹴りをしよ。
「っは! っふ!」
体勢を整えてもう一度練習を始めようとすると、近くから小さな声だが気合が入った様子で練習しているキアーラがいた。彼女も空手を熱心にしている。
「おはよー。早いねキアーラさん」
「! あ、おはようございます。テオさん」
背後から声を掛けたからか、多少緊張したように返事をした。というか母さんと姉さんには二日くらいで大分慣れていたのに俺が話し掛けると必ず一回固まるってどういうことよ。少し傷つくじゃん…。
勿論そんな気持ちは顔には一ミリも出さない。
「そういえばキアーラさんは今筋肉痛にはなってないの? 昨日の訓練はやたらときつかったけど」
「確かに筋肉痛にはなってますが、動くのに支障は無いので全く問題ないです」
「へー。僕は全身筋肉痛で動くたびに痛いのに凄いねー」
俺は微笑みながら褒めてみると、何故か少しキアーラは暗い顔をした。
「獣人は元々疲れや傷が他の種族よりも回復速度がはやいので。だからどれだけ強く叩こうが理不尽な労働をさせようが他よりもすぐに回復するので…」
「分かった。それ以上は言わないで。僕が悪かった」
「え!? い、いえ! テオさんは何も悪いことはしてませんよ! それに…。洞窟であの言葉を言ってくれてとても嬉しかったですし…」
そう言って少し顔を赤くして俯くキアーラ。
洞窟で言った言葉…。っあ!
「”もし君が困っていたら俺が助ける”?」
「!!?」
途端にキアーラの顔が真っ赤になった。一瞬怒っているのだろうかと思ったが、どうも違うらしい。尻尾が凄い勢いで振られている。
何故こうなった。
しばらく考えてみると結論に至った。っと、同時に俺の顔が少し赤くなった。
赤くなるのも当然じゃないか。この言葉は取りようによっちゃ告白にも取れるぞ。ってことは、今キアーラさんは照れてる! そして照れると全力で尻尾が振られるのか!!?
さすがにこの状態は精神年齢高くてもきついからもう家に戻ろう…。
「そ、それじゃもうそろそろ朝食の用意も始まるだろうから家に戻ろうか」
「う、うん! そうだね!!」
キアーラはさっきの雰囲気をごまかすようにいちいち声を張り上げた。
結局今日一日は俺もキアーラもトレーニングに集中できず、俺のみ父さんから叩かれる羽目になった。




