8話~家族のひみつー~
魔法の事に関して友人から指摘があったので4属から5属に変更して雷を追加しました。
「うん、キアーラちゃんね。それじゃ次は私達からも自己紹介させてもらうわ。私の名前はファイ・ウィステリア。この家の主婦をしているわ。あなたはもうこの一家の一員なんだから遠慮せずに悩み事を持ってきなさいよ?」
ファイはキアーラの名前を確認するように反復した後に自らの自己紹介を始めた。そして次を目で俺たちに促しと、それにいち早く反応したカーンが話し始めた。
「俺はカーン。この一家の長男だ。よろしく」
いち早く反応した割には緊張した面持ちで手短に自己紹介を済ませた。あんたは人見知りか。
そして「次は俺だな」と呟きながらロイが立った。
「私はロイ。この一家の大黒柱だ。妻も言ったように君はもう私達の家族なのだから遠慮せずに甘えてくれ。困った時には手を貸そう」
「さっき一緒に帰ってきてたから分かるとは思うけど私はセリア。あなたのお姉さんになるし、女同士気兼ねなく相談をしてね。お母様に言えないことでも相談に乗るわよ」
「あ…はい。お願いします」
セリアが満面の笑みを浮かべながら元気よく右手の親指をぐっ! と突き立てながら言うと、その元気さに少し動揺したキアーラが戸惑いながら返事をしていた。
残るは俺だけか。自己紹介ってなんか苦手なんだよな…。
俺は何を言うか全く決まらないまま口を開いた。
「俺の名前はテオ。一家の末っ子だよ。そして同年代の友達はいないからよかったら友達になってくれたら嬉しいよ」
「あれ? あんた同年代以外にも友達っていた?」
「そんなこと…………あ、いないな」
セリアのツッコミに俺がしばらく考えて肯定すると、それをロイは呆れたように見ながら立ち上がって言った。
「まあそんなことはさておき、キアーラ。君もお腹が減ったろう? もうそろそろ夕食にしようじゃないか」
途端にきゅるるると小さくキアーラのお腹から音が鳴り、キアーラは顔を真っ赤にして俯いていた。
「ふふふ。体は正直なのね。それじゃ、すぐにご飯を作るわね」
その台所へと向かうファイの後ろ姿はどこか嬉しそうな雰囲気を出していた。
「あなた達に魔法を教えるわよ」
「…え?」
次の日。朝食を済ました後に、俺、セリア、キアーラがファイに呼び止められたと思ったら次の言葉がいきなりこれである。あまりの突然の出来事に3人とも目を丸くしていた。
「ファイ。少し話が急すぎるだろう」
この微妙な沈黙に助け舟を出したロイはどうやらファイの意図を知っているらしく、次の話を続けて言おうとした。
「あのな。お前達は昨日のこともあるし、キアーラちゃん。君も自分の身を守れる程度には力をもっていた方がいいだろう」
「えーと。なんとなくは理解したんだけど…。母さんは魔法が使えたの?」
「そうなのよ。今まで隠していたことなんだけど、私は昔ある王国の宮廷魔術師をしていたの」
「……は?」
今ファイから聞いた話をまとめるとだ。
ファイは昔ある王国で宮廷魔術師として働いていたが当時、同じ国の近衛騎士(階級は教えてくれなかった)をしていたロイを見て一目惚れ。そして二人してその職業を辞めて、どこか静かに暮らすことの出来る所はないかと旅をしていたところこの村を見つけて以来、ここで過ごしているのだそうだ。
ちなみにその時にファイは何か役に立つかもしれないと思い、実家にある本を片っ端から詰め込んで持っていったんだそうだ。
――だからこの家には大量の本が置かれてあったのか・・・。
「こんな感じでこんな感じで私が魔法を使えるのは分かったでしょう?」
「はい…。ですが、何で魔法なんですか? 体術を学んだ方が便利だと思いますが」
キアーラが真面目な口調でこの家族の中で最も信頼しているであろうファイに質問した。
「キアーラちゃんまだ話し方が固いね。後、私は魔法だけを教えるとは言ってないわ」
「え?」
「私があなた達の適正に合わせて回復魔法から五属の魔法、精霊魔法を教えて、ロイが素手と武器での戦い方を教えるのよ」「母さん…。それをして僕らを何処に旅させる気なの?」
つい愚痴を言ってしまう程、自己防衛するための力を身につけるにしてはやりすぎな気もする。
「そうねえ…。近所の学園の主席でも狙わせようかしら?」
ファイが笑いながら冗談を言った。
ちなみに俺は本を読んで知っているのだが、ファイのいう学園で近所といえば、ここらで武術、学問ともに最難関と言われる学園のことを指しているのだろう。セリアとキアーラは何処の学園か分からないから俺はそのまま黙秘することにした。だって面倒くさい。
「………ま、まずは書斎に行くわよ!」
ファイが説明するうちになにやら変な空気になっていることにようやく気づいたらしく少し焦ったように先導し始めた。意外とノリだけで動いてるなあ。この人。
そして書斎に移動し、ファイは”魔術書 ~中級編~”という題名の本を本棚から引っ張り出してから机に広げた。どうやら内容を見る限り、まず回復魔法の初歩を教えるようだ。
セリアとキアーラは文字が読めないらしく二人とも眉間に微かにしわが出来ていた。
「っあ、セリアとキアーラちゃんは字が読めなかったのね。でも大丈夫よ。そんなに顔をしかめなくても私が実践するからそれと同じようにすれば出来るわ」
「…テオは文字が読めるんですか?」
文字が読めない人の中に俺の名前が挙がらなかったことを不思議に思ったキアーラが尋ねてきた。
「うん。俺は一応4歳頃に文字の読み書きは習ったから大体の本は読めるよ」
「4歳・・・」
「ああ、キアーラ。あなたが出来ないんじゃないわ。4歳から既にそういったことに興味をもつテオが変わり者なのよ」
4歳という言葉に唖然としていたキアーラにあっけらかんとした様子でセリアがフォローした。しかし、変わり者とは失礼じゃないかな?
「なら二人は今日教えてもらった後にテオから文字の読み書きを教えてもらったらどうかしら? とりあえず、私の暇も無限じゃないから手っ取り早く教えるわよ。まず、頭の中でこの傷を癒せる光を手に具現化させるイメージをしなさい。魔法はほとんどがイメージで出来るものが決まるからイメージは大切よ」
そう言いいながら手のひらをナイフで軽く傷つけた。
そして俺は火の魔法を作り出した時と同じように魔力を体の中に取り込み、今回は頭が痛くなる前に取り込むのを中断し、次の段階であるイメージを構成した。すると、手の平から少し黒が混じった茶色の光の玉が出来ていた。
「母さん、これ?」
「そうね。あなたは魔法の才能があるのかしら? 一回で出来てこの大きさの玉はさすがに始めてみたわ…」
さすがのファイもこれには驚いているようだった。反応から察するに、この回復魔法は玉の大きさが大きければ大きいほど回復量が増加するというような仕組みなのだろうか?
「ファイさん…! 私も出来たよ」
弾むような声がするので隣を振り向くと少し汗をかいてはいたが、キアーラからの手から白い光を放つ先ほど俺が出したものよりも少し小さな玉が出来ていた。
そしてファイの方を見ると、絶句していた。
「キアーラちゃん…!! その色の魔法はもしかして…。あなたは光の属性を持っているみたいよ」
普段からは信じられないほど動揺しながらもキアーラの頭を撫でながら褒めていた。そしてキアーラは褒められた嬉しさでその様子にも気づいていないようだった。
対する俺はというと、目の前の出来事を理解するべく頭脳をフル回転していた。
光の属性? 五属は火、水、風、土、雷で光はなかったはずだ。ということはこの世界に五属以外にイレギュラーの属性にあたるものが光ということか? 後でこっそり聞こう・・・。
そして更にキアーラの隣から少し言いづらそうにセリアが口を開いた。
「あのー。母さん? 私のこれって回復魔法っていうの?」
そしてセリアの手の中を三人が覗くと皆同じように何か反応に困った顔をしていた。




