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第76話~…説明プリーズ~

いまいち、設定なんかを上手く書き出せてないと思う今日この頃。

 俺が寝てから恐らく2日。魔力枯渇状態からは1日もすればいつも通り全快したのだが、全身筋肉痛はまだ治っておらず、2日たった今でも動くたびに地味に痛い。前世ではこのくらいの時の痛みで確か、少し涙目だったはず。

今まで……父さんとの組み手、めった刺しにされて死んだ時、秋風さんの手加減なしの剣戟を受け止めて手首を捻ったついでに肘の関節も可笑しな方向に曲がった時、ヤタの魔力制御の練習に付き合った際の彼奴の魔力の暴発にもろに巻き込まれ、両腕が青痣だらけになった時、おっちゃんとの訓練で肋骨が折れ、血反吐を吐くほどぶん殴られた時……等々、他の人に比べちょいとばかし激しい事故や攻撃を受けたことが多かったせいか、俺はどうやら痛みに慣れた。もしくは、少し感覚が麻痺してしまったのだろうか。確かに麻痺してしまえば痛みで怯むことが少なくなって、もしかすると、生き残れる確立が上がるかもしれないから俺にとっては僥倖かもしれない。だが、もし痛みに麻痺したことで致命傷かそうでないかを見極め損ね死んでしまったらどうしようという気持ちもある。まあ、もう2回も死を体験している時点でなんとも言えない気分なのだが。

 


 ここまで言って分かる通り、今となってはこの程度の痛みになれば、ほとんどあってないようなものであるため…………

「それで、君はどうしてあんな所にいたの?」

「気づいたらあそこまで流されてました」

現在俺を介抱してくれた彼女と輪郭がかろうじて見える程度の暗さの中、対面している。そこらに転がっている岩を座りやすいように魔法でカットし、彼女がどこからか用意した柔らかな布をそれに敷いて座っているのだが、この彼女が住んでいる所は不自然なほど生活用品が揃っていない。というか無い。椅子、テーブルすら無いというのはおかし過ぎる。俺は本当に人間に保護されたのだろうか?

「……? こんな所に人間…? が迷い込むなんて珍しいね。ここは人間が生きづらい場所になってるんだけど……」

「そこはちょっと大変な事があったので……。あれ? ここが人間に住みづらい場所ならどうしてあなたはここに居るんですか? それにここは一体……」

ぼそぼそと呟く様に話す彼女の言葉に疑問を抱く。その言い方だとまるで彼女が人間ではないような言い方ではないか。


 そんな俺の疑問をあっさりと解消させる言葉を彼女はほんの近くにしか聞こえない程度、だがしっかりと俺の耳には届く声量で言う。

「ここは闇精霊の森。全ての生き物が闇精霊で構成されてあり、陽の光を決して通すことのない広大な森林では人間は目で見て行動することが不可能…………らしいよ? そして私は元闇精霊の王。前代の精霊王だよ。……今は上級精霊だけどね」

 


 驚きの事実がカミングアウト。なんとここはナナの故郷でしたー。闇精霊しか居ない場所とか……それなんて隠れ里? 一向に明るくならないと思ったらそういう理由があったわけだ。しかも、目の前の人? ……精霊か。元とはいえ同じ時に1人しか存在しない精霊王だった精霊だなんて、完璧に俺戦ったら瞬殺されちゃうんじゃないの? っていうか、精霊王が入れ替わる時って、死ぬ時以外にもあったんだね。

「そういう君は何者? 人間にしては私達に近い雰囲気を出してるし、だからと言って精霊と言うには少し違う感じがするし……」

闇精霊の森という、俺とナナにとってはそれなりに好都合かもしれない、種族上の仲間がいる場所に偶然ながらも辿り着いた事に内心歓喜しつつ、目の前の人物の経歴に驚きつつ、というように見た目の表情筋はぴくりとも動いていないのに中身はもの凄くハッピーなことになっていた俺は、彼女の言葉によって正気に戻された。

さて、ここはどう答えれば良いのだろうか? 普通に正直に「殺されて、あなたのお仲間さんに体を分けてもらって生き返らせてもらいました」と言うのか、「僕…………実は親が人間で自分のことを人間だと思い込んで生活していたので雰囲気が人間寄りの精霊になっちゃったんです」と言うのか。

……いつも通り真面目に答えるか。いまいちふざけるのはしっくりこないんだよな。

「あ、はい。僕は元々人間なんですけどちょっと殺されちゃった時に、首に掛けていた闇の精霊石から出てきた子が僕を生き返らせるために精霊の体を半分分けてくれて……。まあ、そうやって生き返った時には半分人間で半分闇精霊になってました。だからあなたが抱いている違和感って正にその通りの事だと思いますよ。ある意味ではどっちにも当て嵌まらないとも、当て嵌まるとも言えるので……」

俺がそう言うと、彼女はどこかすっきりしたような雰囲気を醸し出した……が、急に首を傾げ始めた。……気がした。俺にはこの暗闇の中で相手の動きを細かく判断出来る程の目は持っていない。



 「少しだけ精霊の肉体を貰って一部だけ精霊になる人も意外といるから、確かにそれだと納得出来るよ。半分も精霊になっちゃう人はいないと思うけどね。……だけど、その話を聞く限りじゃ君を助けてくれた精霊は何処にいるの?」

「ああ、それなら僕の体内の中で今眠ってますよ。呼んでみます?」

「うん。お願い」

なんとなく顔合わせさせておきたかったから、聞いてみるとすぐに会いたいとの返答が返ってきた。まあ、ナナが寝始めてもう2、3日は多分経っているだろうからもう起こしても大丈夫だよね……。

そう思いながら中にいるナナに呼びかけてみた。

(ナナー? 今、元闇の精霊王って名乗っている精霊に保護されたんだけど、ちょっと外に出て顔合わせしてくれないー?)

(………)

(……ナナ、起きてる? 別にまだ体調が悪かったらまだ寝てても良いよ。俺からそう伝えておくから)

(……だいじょーぶ、一応体調は少し前に全快したからー。だけどその間テオ君の魔力を吸い続けちゃったから魔力はあまり回復しなかっただろうけどねー。…あはっ)

(魔力が妙に回復し難いと思ったらそれが原因だったのかよ。しかもしばらく音沙汰が無いと思ってたけど、もしかして……ただ、熟睡したかったっていうのも理由か? もしかして)

俺は少し肩をわななかせながら、ゆっくりと、努めて冷静にナナに尋ねてみる。出来れば俺がきちんと納得出来る様な真面目な理由が返ってくれば良いのだが。

(モチロンだよ! なにせ私の1日の生活の大半はテオの中で魔力を食べながら寝ることだからね! 毎回、美味しく頂いているよ!)

しかし、返ってきたのはナナが真面目な時にしか出さない、はきはきとした口調と、とっても不真面目な内容だった。非常に遺憾である。


 「……何してるの? …………自滅?」

目の前にいる元精霊王さんが不思議そうにこちらを見つめている様な気がするが、気にせず俺は答える。

「いえ、ただ中に住んでいる怠け癖のある仲間を引きずり出そうかと思いまして」

「……そう」

そうなのだ。だから俺は現在、自らの右腕を闇の魔力で軽く包んでから腹へと突っ込んでいる。手が無いとはいえ、右腕は手首まではあるのでそれでナナをかき出す所存である。……しかし、この光景をわけも分からず目撃したら間違いなく卒倒、もしくは強引に止めに入るだろうな。……もしかしたら現実逃避をする人もいるかもしれない。

誰でも、腹に手が肘まで入ってしまうほど突っ込んで、そこで内臓を掻き混ぜるようにぐちゅぐちゅとした嫌な音を出しながらその腕を動かしているような光景は見たくないと思う。やってる本人の俺だってあまり見たくないし聞きたくもない。だけど見た目に反して痛くもないし、内臓が傷つけられる感覚も無いんだから仕様が無いじゃないか。

 

 そう思いながらも中を掻き回す手の動きを止めないでいたら、右腕にナナらしき物体が左の肺辺りの位置で当たったと認識するや否や、躊躇無く右腕を包んでいる魔力でナナを捕獲し、一気に引きずり出す。

「きゃー」

そんな可愛らしい声での棒読みの悲鳴とともに出たナナは、勢いよく引っ張り出したせいか、一旦地面で倒れそうになるが、すぐに両手で地面を支えて体勢を立て直すと、すぐに俺の膝へと一直線に歩いてきて、そしてちょこんと乗った。身長差がほとんど無い所為で途端に前が見えなくなり、元から見難かった視界が更に悪化する。

「んしょ」

わざわざ掛け声を出して俺の太ももが座りにくいのか位置を探し、丁度良い場所が見つかったのか、動きがぴたりと止まった。


 「っや、久しぶりー。なっちゃん、私が居ない間にいつのまに精霊王なんて面倒くさいのになるなんて大変だったでしょ?」

どうやら初対面ではなく知り合い。しかも話し方からしてナナの方が気軽に話しかけている分、立場的にナナが上のような感じがするが、それは気のせいなのだろうか。

「っあ……あ……え? 嘘…………」

常に冷静で、ぼそぼそと話していた、なっちゃんと呼ばれる目の前の精霊は、俺と話していた時とは違い、目の前の事が信じられないことかのように動揺し、驚きの所為か口をぱくぱくと開閉させている。

 「そんなに驚いちゃって……なっちゃんは昔から変わっていないみたいだねー」

なっちゃんとは対照的にナナはニコニコと何故か包容力を感じさせる微笑みをしている。

「……王………」

「ん? どうかしたの。なっちゃん? 何か嫌な事があったら昔のように抱きついてきていいんだよ? ほら、おいで」

そう優しく言ってナナはゆっくりと両腕を広げる。

すると、なっちゃんはその場で俯いて何かに耐えるような素振りを見せたが、次の瞬間ナナへと勢い良く飛びき、抱きついた。


「っっ!! 王! よく御無事で! ……この日が来ること待ち続けてっ! 最早無いと思っていたのに……!!」

「はいはい。私はちゃんと生きて帰ってきましたよ。今は私の胸の中で思いっきり泣いちゃいなよ」

……頭上で何やら俺にはよく分からないが、感動の再会と思われる事が発生しており、今はなっちゃんの泣き声が洞窟に響いている。

俺は何をしているのかだって? 俺は、なっちゃんが抱きついた際の衝撃をもろにくらい、仰け反って椅子に座ったまま後頭部を床に打ち付けるっていう事を仕出かしたよ。感動の再会を邪魔しないために声を出さないようにするのが大変だよ。


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