第74話~プロローグ~
とりあえず、主人公が変わらないまま章が変わる時は最初に三人称視点で書くって決めてます。三人称視点だと思うように筆が進まないので早く上手に書けるようになりたいです。
今回から第三章。友人にこの章の内容を話したら「外道章だな」って言われました^^;
太陽が日光で地上を真上から照らしているような真昼。そんな時刻でもうっそうと生い茂るこの森の中には一筋の光も侵入することを許されず、まるで真夜中かと思う程暗く、じめじめとしている。
この視覚が全くあてにならない場所にも、勿論生命は育まれており、小鳥の鳴く声や狼の遠吠え、草むらには1本の角の生えたウサギなど多種多様な生き物がこの森の中の生態系として存在している。しかし、ここにいる動物はまるで全て同じ生き物であるとでも言うかのように、皆一様に目以外は黒一色であり、その目も輝きは見えず、ただただ濁りきった泥沼のような色をしていた。
そんな奇妙な森の中、黒い果実を食べる1匹の小ウサギを後方の草陰からこっそりと見つめる人影があった。
「……よし。いける」
その小柄な人影は全身を覆い隠す少し古めの黒いフード付きローブから右足を出し、足に装着された刃物を確認すると自分に言い聞かせるように1度頷き、口を開けた。
すると口を開けたすぐ目の前に漆黒の球体を出現し、すぐに周囲の闇の中に溶け込み視認出来なくなった。そして、それは小ウサギの頭上へと音も無く射出された。
「いけっ」
声の高さからしてこの黒のローブに全身を包んでいるこの人物は、まだ碌に年月を重ねていない少年なのだろう。その彼が息を潜めて小さく、そして鋭く呟くと球体が小ウサギの頭上で突然網目状に広がり、それは成す術も無く捕まった。獲物は網から抜け出そうともがくが、その抵抗もむなしく、すぐさま接近した少年の足に着いた刃物によって、その小さな命は今、静かに幕を閉じた。
「…よっしゃ! って、もう手は無いからガッツポーズは出来ないか。………それにしても、やっと1匹目………はあ。ここって動物が皆保護色してるから気づかれないように見つけるのも大変だってのに。何か効率良い方法は無いのかな……」
小ウサギを狩ることに成功した彼は、スキップでもしそうなほど嬉しそうな雰囲気を出しながらも何処か疲れたような感じを見せるという器用なことをして見せながら、ガッツポーズをしようとした。
だが、それをすることは叶わなかった。そこにあるはずの両手が無かったのだ。
少年が着ているローブから出てきた右腕には手首から下が存在しておらず、手首には何か凄まじい力で捻じ切られたような痛々しい痕が残っている。そして、もう片方の左腕には肘から下が何か凶暴な獣。ワニの顎の力を余裕で凌駕するナニかにでも噛み千切られたかのような痕を残して食われていた。
それでも、どちらの傷も不幸中の幸いと言うべきか傷口の痕こそ痛々しいものの、傷口からウイルスが感染する恐れがないレベルまでには回復していた。
右手首が腸詰めした端のような形になっていることと、左肘の半分がかさぶたで覆われている傷口が凸凹になっていることを除けば、この少年は活発な子どもとなんら変わりない状態だった。
その少年が目の前で絶命している小ウサギを見詰めながら数秒時間が経つと、不意に少年の腹から腕が飛び出し、その次に頭、胴体、最後に足がぬるりと音をたてずに出てくると、そこには少年と同じフード付きローブを着た者が現れ、少年とは違いフードを目深まで被るようなことはせず、顔をあらわにしていた。
それは、少年と同じような体格をしている、可愛らしい顔をした少女だった。
「初めての成功おめでとう、テオ。ようやく成長出来るね」
「そうだねー。2週間でやっと1匹目っていうのは些か難易度が高いんじゃないかな? それに皆ずるいよね。空気を吸ってれば、微量とは言え成長できるんだろ?」
すると、少女は苦笑しながら少し拗ねたような声音で文句を言う少年。テオを宥めた。
「ここは、人間には暗過ぎるから仕様が無いよ。それに私達精霊も空気を吸って成長することは出来るけど格が上がるのは早くても十数年はかかるんだからお互い様だよ。……それと、この小ウサギはここで食べる? それとも闇空間に入って食べる?」
「んー…闇空間で食べることにするよ。ここで火を出すと周りにいるかもしれない何かに襲われちゃうかもしれないし。……まあ、あっちで焼くのは少し面倒くさいけど仕様が無いよね?」
「うん。まあ焼く手伝いはするから頑張ってね。それじゃ、行こ?」
そうして、少年少女の2人組は少女が作り出した円状の暗い闇の中へと、少年が小ウサギを蹴り上げてくわえながら入っていった。
少年少女が闇空間と称した場所は、ただ、ただ、真っ暗で何も無かった。地面すらなく、まるで、水圧を限界まで無くした水中や空気のある宇宙空間のようであるため、移動手段が泳ぐようにすることしか出来なかった。
そんな真っ暗で上下左右が何も分からない空間でも互いの存在は何故かはっきりと、明かりを当てられたかのように見えていた。
そこでテオは、口にくわえた小ウサギを首を振り子のように振って頭上へと、飛ばし…。
口から火を吹いた。
正確に言えば、口の目の前に朱色の球体が浮いており、そこに息を吹きかけた時に火炎放射よろしくとばかりに炎が発射されているのだが、最早見た目はサーカスの火吹き男そのままである。
だが、ここは足場の無い宇宙空間(みたいな所)。このように勢いよく火を吹けば、当然の如く作用反作用によりテオは後ろへと後退するし、焼かれている小ウサギも力を加えられたことで上へと上昇し始める。
そう物理的法則に従ってなる筈なのだが、一定距離。小ウサギとテオの距離がおよそ10メートル程離されると、何か見えない壁にでもぶつかったように、障害物の何も無い場所で、ガツ、ガツと小さく跳ね返りながらその場に留まるとう奇妙な動きをしている。
「んー……。テオ、良い感じに焼けたよー」
テオが遠距離から小ウサギを加熱していると、その小ウサギが焼かれる様子を間近で観察していた少女が少しの間、眉を吊り上げて悩んでテオに声を掛けた。
「分かったー。ありがと。ナナ。お礼に3分の1くらいあげよっか? 一緒に食べよう」
「本当に? それじゃ、私早速切り分けておくね」
テオにナナと呼ばれた少女の声音はいつもと変わらぬ平淡な話方であったが、どこからか出した漆黒の鎌を手に持ち、それで小ウサギを綺麗に1対2の割合で切り分ける姿は非常に嬉々とした姿であった。よほど食べたかったのだろう。口元からは少しだけ涎が出ている。
「それじゃ、2週間振りの肉に感謝をこめて、いただきます」
「いただきまーす」
「そういえばさ、俺って結構見た目グロテスクな食べ物って全く食べれなかったんだけど、何で違和感なく食えるのかな?」
テオは右腕で小ウサギだったものを抱えてそのままかじりつくが、血抜きをしてあるとはいえ、ただ足につけた刃物で殺した小ウサギを丸焼きして、鎌で切り分けただけという、お世辞にも綺麗とは言えない形の見た目の料理であった。地球の、特に日本人が見たら卒倒しそうな光景と料理である。
「んー…あれじゃない? 私昔から精霊石の中でテオ君のことを見てたんだけど、野ウサギとか狩って解体してたよねー? 涙目で吐きながら」
「………そういえばあったね。すっかり記憶から抹消していたよ」
「しかも、それを不憫に思った付き添いのおじさんに背中をポンポン叩かれて慰められてたもんね」
「人の恥ずかしい所を晒さないで! 一体それとこれとが何の関係があるんだよ!」
意地悪そうな笑みを浮かべながら話すナナに、悲鳴をあげてテオは何とかこの話を中断させようとしていたが、2人ともどこか楽しそうにしていた。
「……それでも、あの時に念のためと思って狩りの仕方を教えてもらっといてよかった。今まで村を出ても、特に狩る必要はなかったし、学院でもそういったこととは無縁だったからすっかり安心しきってたけど……まさかこうなるとはねえ」
ようやく落ち着いたテオが思い出したように話し出した。
「そうだねー。まさかあの闇空間でなんとか見つけた亀裂から出た先が、なんと私の故郷の闇精霊しかいない闇精霊の森に着いてしまって、実力不足で出るにも出られない状況で……」
「ついでにどちらかというと精霊は俺ら人間寄りのはずなのに、ここにいる闇精霊のほとんどが魔王側になっているという事実」
テオは大きく溜め息を吐いて遠い眼をしていた。
「っあ。テオ。体がグニャグニャしてるよ」
「っえ?」
今回は、少し時系列を先に進めた状態で書いてます。
次からは2章の続きです。




