69話~会議中~
何とか更新することが出来ました。
最近夏休みに入ったので更新することが難しくなってきています。
なので、夏休み中は不定期更新になりそうです。
さて、しばらくはむさ苦しい野郎共の戦いでしょうか?
「それで、作戦会議を始めるとは言ったものの、秋風さんとかメリッサさんは呼ばなくていいのか? 俺的には居てくれると大分心強いと思うんだが」
「ああ。それは我も思っていた。特に姐さんが居れば百人力だろう」
俺はふとわいて出た疑問をイルマにぶつけると、ヤタが何度も頷きながら同調してきた。
すると、普段から答えられないことなんて無いとばかりにドヤ顔で答えてくるイルマにしては珍しく、歯切れの悪そうに口を開いた。
「えーっとな、まあ、なんていうか……俺はある予想をしているんだがそれを最初に聞いてくれるか?」
「別に話していいけどなんの話だ?」
「それは、状態異常の治りのはやさについてなんだが、例えば魔物や魔法使いと戦闘をした時、何かしらの状態異常を戦闘中にかけられたとしよう。それで呪いにかかっていると認識している人と呪いにかけられているのに認識していない人の2パターンに分けられたとしよう。ここまではいいな?」
「ああ。それがどうかしたのか。結局どっちにしろ呪いにかかっていることには変わり無いじゃないか」
「まあそれはそうなんだが、その後が問題なんだ。その戦闘後、まあ分かりやすくテオが闇魔法を使ってヤタに徐々に筋力が衰える呪いを気づかれずにかけたとして。そのまま生活し、ヤタが他人にその違和感について言われながらも気づかずに一年経ったとしよう。そうすれば、ヤタは気づかぬうちに弱体化しているだろう?」
「ああ。それは理解した。で、結局話はそれで終わりなのか? この話と秋風さんたちを呼ばないのは全く関係が無いように思えるんだが」
「まだ話は終わっていない。ここで重要なのは、ヤタが自分の不調について他人から言われながらも自分ではその原因を解明することが出来なかったということなんだ。そしてこの世界の治癒魔法ってのは治癒する対象が何なのかをある程度把握していなければ、治癒が開始されることはない。更に他人の呪いを治癒するってのは怪我を治癒するのより遥かに難度が高い。さあ、ここまで言えば俺が何を言いたいかは分かるだろう?」
長めに話して少し息を切らしたイルマがこちらを見た。答えをこっちが出せと。だるいよ。
「えーと、つまりイルマは秋風さんやメリッサさんじゃ自力でこの【隷属】を解呪することが出来ないから足手まといになると。そう言いたいのか? それだと俺らも解呪出来るかどうか分からんだろう」
「いや、俺ら3人に自分のステータスを閲覧出来て、それ以外の人間にはステータスの存在なんか知らないだろう?」
「そうなのか? メリッサさんはともかく似たような状況でこっちに来た秋風さんなら持ってると思うんだけどな」
「持ってないぞ。それは俺も気になったからそれとなく確認したんだが無かった」
「え」
「っえ?」
「あ゛? 何か俺の言った言葉に不自然な点でもあったか」
「いや! わわわ我が申すことなどひひひひ必要なかろう!」
珍しくイルマが闘気のようなものをたぎらせながら、にっこりと微笑みかけてきた。この闘気のようなものさえなければ普段の30倍増しでイケメンなのだが、それの所為で非常に恐ろしいことになっている。お陰で俺より少し感情が豊なヤタは即時に何でもないという感じのイントネーションの言葉で凄い噛みながら言ってきた。おいおい。それは怯えすぎだろう。イルマはそんな簡単に人に当たったりはしねえよ。
「特に不自然な点ではないんだけど、何で秋風さんは無いのか? ステータス」
「ああ、その事か。これは只の勘でしかないんだが、多分このステータスは俺らみたいに死んで生まれ変わって、尚且つ記憶を引き継いだ人にある利点みたいなものじゃないかと思うんだ。だから、殺されてもいないし生まれ変わってもいない理沙さんがこのステータスを見ることが出来る能力を持っている道理もないということになるんだろうな」
理由を全て話し終わったのか、イルマが一息吐いて、これでどうだ? と言うような視線をこちらに送ってきた。
勿論、ここまで理由を揃えられちゃ俺が応える行動も1つしかないわけで。
俺は神妙に首を縦に一度だけ振った。
……この3人だけでどうにか出来るのかなあ。全員パワーファイターじゃないんだけど。
「だが、この3人でどうにかすると言っても、何をすると言うのだ。今の話の流れから我が庭を下等種の呪いから解き放つというのは分かる。だが、それをするには我が民全員を解呪するか、下等種をここから弾き出すかだろうが、どちらも3人でするには骨が折れるだろう?」
この3人で作戦会議をすることになり、まず俺がヤタに今の状況を簡単に伝えると、ヤタは少しの間考え込み、質問をしてきた。そして、これは俺も思っていたことだ。ぶっちゃけ、さっきのイルマの話から全員を解呪することは全く現実的じゃないことは分かっているし、上級悪魔を倒す、いや、ぎりぎり追い払えたとしても、周囲にグリーヴのような敵が何人潜んでいるかも分からない。こんな八方塞がりの状況で何が出来るというのだろうか。
すると、イルマは口角をニヤリと吊り上げて言った。
「おいおい。誰が俺らだけでやるって言ったよ。子供は確かに全員呪われただろうが、呪われていない大人で、しかも俺らより遥かに強い人が身近にいるだろう?」
呪われていない大人で、俺らより遥かに強い人…? 先生の実力は確かに俺らより強いっちゃ強いが、それでもなりふり構わずに戦えば5分5分には持ち込めるだろうし……遥かに強い人………
「っあ。ギルベルトさんか」
あの人なら確かにこの条件にしっかり合致するはずだ。
「そうだよ。後、ルーティアさんもな」
そう言うと、イルマは顔を顰めて背中を擦りだした。別にこれといってイルマが背中を傷つけた事件なんて無いと思うんだが、何があった。
「どした?」
「いや……ちょっと入学試験の時のルーティアさんの足蹴が相当痛くてさ。あれ以来少しだけトラウマになって、その時のことを思い出すと背中が痒いような痛いような変な感じがするんだ」
「はあ、ご愁傷様です。っていうかあの強い女兵士さんの名前、ルーティアさんって言うんだな。初めて知ったぞ」
そう言うと2人から呆れられたような視線を向けられた。が、どこか諦めたような表情で溜め息を吐き、冗談はこれで終わりとばかりに表情を真剣にした。
「……それじゃ、その2人は試合場、今は訓練場か? そこで模擬戦でもしてるだろうから行くぞ」
「ああ」
「うむ」
ステータス解析用のメガネを装着して辺りを見回しながら訓練場へと向かうイルマの後ろを着いて行く。歩きながら周りの状況について説明してくれるが、ほとんど、いや、恐らく俺達も含めた全ての生徒が隷属状態にあるらしい。そして、イメージではなんとなく分かるが具体的にはどうなるか分からない【隷属】。解説を頼んだら、隷属にかけた者が命令をすると、魔法に対抗する力、レジストが弱い程それに抗い難くなり、最悪の場合『自害しろ』と命令されたらすんなりと自害してしまう程やばい状態にあるらしい。ちなみに秋風さんは俺の電気を至極簡単に通すことから、このレジストが非常に低いことが分かっている。
つまりこの状態を一刻も早く解きたいんだが、いまいち解呪方法が分からん。
(ナナ。これ、解呪出来そう?)
心の中でナナに呼びかけた。今は俺の中にいるはずだから俺の声は届いているはずだが、少し時間を空けて返ってきた。
(ん~…今ちょっとそれの途中だから、後少し待ってねー。これの所為でボクの家が少し過ごし辛くなってるんだよねー)
声の調子はいつものようにのんびりしたものだったが、どこかイラついたような、珍しく少し怒気を含んでいるように感じた。
(りょーかい。後、解呪出来たらやり方教えてくれないか?)
(いいよー)
「…よし」
「どうした。テオ?」
「いや、何でもない」
……さてと、この学院はどうなるんだろうかねえ。
イルマの疑念を適当に流しつつ、俺はこの学院の行く末をぼんやりと考えていた。




