67話~あなたは一体誰ですか?~
最近になって「あれ?これってもしかしてほのぼの路線から外れていってる?」
って気づき始めた。っていうかぶっちゃけプロット通りに進んでくれない。
朝の校長、もとい上級悪魔の演説が終わった後、各々の教室へと解散し、そこで銀製の十字架が配布されることになった。っていうかそんなに銀製の物を配布して銀は枯渇しないのか。それに、銀製の武器で心臓を刺して首を刎ねなければ死なないとか本に記されてるんだから銀製の十字架程度じゃどうにもならないと思ってるんだけどなあ。
「やあ、テオ君。そんなに辛気臭い顔をしてどうしたんだい? もしかして貧弱な君のことだから吸血鬼の話を聞いて怖くなったのかな? ハハ! 吸血鬼は僕が華麗に退治してあげるから君はその辺の隅にでも震えながら隠れるのがお似合いだよ!」
ふと嫌いな声がした方向を見ると、人を見下し嘲笑っている表情を顔に貼り付けた金髪碧眼のイケメンがこちらに向けて何やら言葉を発していた。そして何故か急に俺を貶し始めた。何故だ。
もしかしたらあの校長が吸血鬼の対策をしたように見せかけて、実は全く効果が無いというオチがついてくるのではないかと考えて、暗くなった表情が吸血鬼に怯えている表情に見えて勘違いをしたというのが一番有効そうだが、ぶっちゃけこいつはうざいと思う。
だから――
「あーはいー。そーしますねー。それではー、隅の方からホルストさんがーかっこよーく吸血鬼をーやっつけるのをー楽しみにー見てますねー」
「そうだな! 矮小で愚かな君達の為に勇敢で高貴にして今代勇者と呼ばれる僕がすぐにでも敵を排除し、学院に平和を取り戻してやろうじゃないか!!」
適当にこいつの話を肯定し、調子に乗らせる。そしてこいつが勝手に上げた周りのテンションにその場は任せてこいつ、ホルストのもとから離れる。
………ぶっちゃけホルストよりも俺の方が絶対に強い自信はあるんだけどね。ま、そこは俺の強さをステータスで判断したからとでも受け取っておこう。
「……テオ。お前昔からああ言った言葉には全く反応しなかったよな…。正直羨ましいよその嫌いな相手への無関心さは。無関心な相手だったら何を言われても何も思わないんだろ?」
少しホルストから離れた所、教室の窓辺に移動すると、先程の出来事を一部始終見ていたらしいイルマが羨むような視線をこちらにやりながら話し掛けてきた。男がそんな物欲しそうな表情すんな。きもい。
「そうか? 少しはイラっとはきたけどな。っていうか俺ほとんど前世のこと覚えてねえよ。昔のことを整理することなんかしなかったからほとんど忘れてる。覚えてるとしたらあの死んだ日が俺の16歳の7月15日ってことと、明のことと…後はクラスの皆の顔を親しい人なら朧気にって感じと、現代の知識を少々思い出せる程度かな?」
とりあえず、死んだ日が何時かっていうのを正確に思い出せる辺りが気持ち悪いんだが、と付け加えてみる。実際にこの日付だけは覚えようとしてなくても、頭の中に昨日起きた出来事のように刻まれている。
「それ。俺だけじゃ無かったんだな。死んだ日の事を鮮明に覚えているのは。これって何かある……わけないか。そんな変な設定あったら笑える」
「だな。…んで、吸血鬼に十字架って効果あると思うか? 俺はあの校長が自分達に不利な事なんてするわけないと思うから8割方効くわけがないと思ってるが」
「俺もそう考えてる。どこに描かれてる吸血鬼は弱点に差こそはあっても、強敵としているけど、この世界の吸血鬼ってのも大概、種族的にチートな立場らしいんだよ。なんでも下級、中級は銀製の武器で斬りつけるだけでもそれなりに傷が残るらしいけど、上級。つまりボスクラスの吸血鬼になると一瞬で銀の武器で首と心臓を攻撃しないと勝手に再生してるとか、それこそ隕石が直撃、つまり塵1つ残さないレベルで破壊されるかされない限り再生しちゃうとか手に負えない。だから、下級、悪くて中級の内に殲滅しておこうと考えた奴がたくさんいるんだそうだ。ほら、無茶苦茶だろう?」
「全く以ってその通りだ。っと、もうそろそろ先生が来る時間だと思うから」
そう言って離脱する。イルマの解説癖は中々便利なもんだが、偶に理解が追いつかなくなりそうになるから大変だ。まあ、あれだけの情報があるから創造で多種多様なものをつくっているのかもしれないけどね。
席に座ってまったりとしていると、担任が教室に木箱を1つ持って入ってきた。どうせ、あの効果があるかどうか分からない、あの胡散臭い十字架でも配布するつもりなんだろう。
「よーし。それじゃ十字架を順番に配っていくから名前順に俺の前に並べー」
何故そのまま列ごとにまとめて配布しないのかとどの生徒か忘れたが聞いていたが、なんか、魔法を1人ずつ掛けるからとか言っていた。俺が聞いたことの無い魔法って時点で既に警戒すべき状況なんだが、まあいいや。掛かった後でイルマかナナにでもなんとかしてもらおう。
「次はお前だな。……ったく。何でこんなだるい事を校長はさせんのかねえ。魔力を消費するこっちの身にもなれっつの……。いつか魔力枯渇で干からびちまうぞ」
「っていうか、普通に25人分の魔法を連続で行使出来て余裕がある先生が言ってもあまり説得力はありませんが」
見たとこ、この魔法はそれなりに魔力消費は大きそうな気がするがこの先生、普通に何でもないかのように連続で使っている。多分半精霊になって格段に増えた俺より魔力量多いんじゃないかな。
「へえへえ。まあそれは褒め言葉として受け取っておくぞ。ほら。はやく十字架を首に着けろ。じゃねえと魔法が掛けれん」
「分かりましたー」
そして魔法を発動するための詠唱を始めるが……多分所々省略している。そんな適当で良いのか先生よ。そう思っていたのだが、思ったよりは速く発動し、首に掛けた十字架を中心に少しの間蛍光灯のような光が灯り、そして消えた。
「これで終わりだ。それじゃ次!」
「ありがとうございましたー」
さて、この魔法にどんな効果があるかは知らんが、どうやって魔法の効果を調べようか。
……試しにステータス画面でも覗いてみるか?
すぐに頭に思い浮かんだ方法を実行してみると、脳内に俺のステータスが表示され、銀色の文字、新しく追加された状態が記されていた。
【隷属】……と。
「……oh」




