57話~受験後①~
試験の後日、受験生達は様々な面持ちでソルリス学院の掲示板へと足を向けている。表情を改めて詳しく確認してみると、若干顔に影がさしている人や「ふはは! 我が不合格のはずがなかろう! 3年に入学は確実である!!」とか言ってる変な人や、超笑顔で話している……リア充と男のみの集団か。リア充は美男美女だったら目の保養に良いんだがなあ…見せ付けるように付き合ってますってしてもらっても客観的に見ても秋風さんの方が可愛いから特に何も精神的に来ないんだよなあ。まあ、近くの男のみの集団は揃って血涙を流して糾弾してるけど。あんたらは3年間の学院ライフより一瞬の欲望の方が重要なのかよ。確かに前世の俺なら気持ちは分かるけども。今は特にそんな気分になれない。
「くっそ。リア充め……創造でブサイクにしか見えなくなるような道具でも付けてやろうか」
「いやお前一応イケメンだろ。頑張ればリア充になれるだろ。多分」
思わず珍しくニヤニヤ顔を消して呪詛をぶつぶつと唱えているイルマに話し掛けてしまった。何で話し掛けてはいけなかったのかって? いやね。まあすぐに分かるんだけどさ。なんとなく分からないか?
「おお、リア充か。今は話し掛けないでくれないかなリア充よ。リア充はリア充らしく隣の女子達とリア充なりに最高のリア充を送るといいさ。俺みたいな偶然顔がイケメンに生まれ変わっても一生非リアの俺は放って置いてさ!!」
……非常に鬱陶しいのです。
イルマは普段はどんなことにも、例え女子の着替え現場や偶然の入浴シーンにばったり出くわしたとしても決して動揺することなく対応する素晴らしく頑強な精神を持っているが、何故かリア充のことに関するとマシンガントーク並に呪詛を吐き続けて、リア充とみなした者から話し掛けられると速攻で嫌味を返してくる。もうハンマーと五寸釘と『リア充の皆さん』と書かれたわら人形があったら迷い無くわら人形に五寸釘を打ち付けているだろう。多分嬉々とした表情で。
俺がうんざりとした表情で空を見上げていると俺の袖を引っ張られるような感覚がしたため引っ張られた方向を見ると秋風さんが何か言いたげな顔をしていた。少しだけ、本当に少しだけだが見下ろされている。むむ。特にいらつかないが少し屈辱だな。
「何? 秋風さん」
「えっとね、イルマ君ってあんな風になるの始めて見るんだけど……大丈夫なの?」
「うん。あれは前世から続いているからもうイルマ自身に春が来ない限り改善はされないと思うよ。多分あの性格さえ格好良くなればかなり春が来ると思うんだけどねー」
「うん…そうだね。凄く同意出来るよ」
それには秋風さんも思う所があったのかしきりに頷いていた。
「まあそんなことよりもう学院についたみたいだから自分の番号を探そう?」
「そうだね。ちゃんと受かってるのかなー?」
そう言った秋風さんの少し心配そうな表情を見て俺は昨日の兵士達との結果を思い出していた。
俺がおっちゃんに飛ばされた時、確かに10数メートルは飛ばされて意識が一瞬ぐらりときたが、気絶するレベルではなかった。父さんの衝撃が外に漏れない攻撃よりはかなり痛み的にはましだったから当たり前とも言えるかもしれない。まあ動けないから実際に俺の負けだけども。
「いっつあ~。降参です」
俺が苦笑しつつ両手を挙げると、おっちゃんは中々に驚いた顔をしていた。何故?
「小僧…。お前意外とタフなんだな。わしは気絶させるつもりで打ったんじゃが」
「……衝撃が全部体内に留まる攻撃ってくらったことあります?」
「………わしより強い攻撃を味わったことがあったのか。うむ、痛みになれるのはいいことじゃ」
何か満足気に頷かれた。何だろうこの複雑な気持ち。
とりあえず、その後は疲れたため、おっちゃんに元居た場所まで運んでもらったのだが、同じ時に戦っていたメリッサさんはタイミングよく力が使えたため何とか勝てたらしい。本当に武器に対して拳で勝っちゃったよ。しかもメリッサさん曰く、「私が勝った時の相手のあの絶望した表情は忘れられなかった」だそうだ。嗚呼…。ご愁傷様。
ちなみに秋風さんもしばらくしてから戦いにいったのだが、相手がイルマと戦ったあの女兵士というまたまた不幸な組み合わせでどうやら俺達3人は意外と幸薄らしい。まあその辺は実力でもぎ取るってことで。
実際に秋風さんはそれを実行してくれた。
結果から言えば秋風さんはあの女兵士に勝った。
その時に俺が思ったこと? これしかないよ。
――勇者様っぱねえ。
なんというか主人公補正というやつなのかな。なんとなくメガネを掛けたまま見てたんだけど女兵士と戦っている内にみるみる『見切り』と『剣術』の熟練度が上昇していくんだよね。ピンチになればなるほど強くなるのかな。もしかして秋風さんって。
まあそんなことを繰り返していけば勿論最後には女兵士の熟練度を超えるわけで、見事に勝ち星を手に入れていた。
まあそんな感じで勝ち星はメリッサさんと秋風さんで、負けたのは俺とイルマか。




