51話~受験⑦~ side Risa
「ねえイルマ君。テオ君大丈夫なのかな? いきなり5人組をターゲットにしてるみたいだけど。今のテオ君ってちょっと前より筋力が大分落ちてるんでしょ?」
今、私とイルマ君はCチーム。つまり、テオ君も参戦している試合を観戦していて、ついさっき試合開始の合図が鳴った。
「確かにテオは30キロをぎりぎり持ち上げられたのが20キロになってしまったけど……まあ、大丈夫じゃないかな。それにテオが元々力任せの戦い方をしないのは理沙さんがよく分かってるんじゃないの?」
イルマ君が真面目な顔で真面目に答えた。彼の普段の行動と表情はテオ君がいる時にされていて、テオ君がいなくなると急に表情が変わるから少しびっくりする。
いつかそのことを聞いてみたら「テオと俺は昔からキャラが被っていたからそれが嫌でこうしてるんだよ」って言ったけど、それでテオ君曰くイケメンオーラが相殺されているんだよね。……今の表情のまま生活していたらきっと私が居た学校でもモテモテになってたよ。意外と優しいし。
「うん、まあ。弟にしちゃいたいくらいだからありとあらゆるところまで把握してるけど、やっぱりあんなに体格差があると心配しちゃうでしょ?」
ちなみに私はテオ君のことが好きだ。だけど、恋愛感情としてではなくて弟にして愛でたいという言葉が最後に付け加えられるけどね。この気持ちを最初私は恋なのかもしれないとテオ君がいなくなるまでは思っていて、手が当たる度に少し赤面していただけど、テオ君がいなくなった時には心の一部がぽっかりと無くなってしまったような感覚――例えるなら家族に会えなくなってしまった私がここに召喚された時の絶望感に似ていたと思う。
その時に私はこのテオ君に抱くこの気持ちが家族愛に近いものだと感じ始め、3日後にテオ君が帰ってきたのを見た時に確信した。まあ、やってきた時は思わず泣きそうになるのと同時に少し怒りが込み上げてきたのも御愛嬌ということでテオ君には謝らなかった。
……その時に事故とはいえ見事に男の娘みたいになってしまったテオ君のあの魔性の微笑みと魔眼で魅了されてしまった後の行動についてはあまり触れないでくれると嬉しいかな。あの時の私の気分は意識はあるが、どこか夢心地というか勝手に体が動いているという感じだった。それに私自身これは夢なんだと勘違いをしてしまって、夢なら好き勝手しちゃおう、って考えてからの行動は……いや、もう何も言わないでおこう。あれが、私の初めての黒歴史になるとは思わなかった。
……テオ君への愛と私の黒歴史で話が逸れたけど、実際に私が一番剣で模擬戦をしていたから分かる―――テオ君は強い。しかも速さで翻弄してから突くっていう強引な方法じゃなくて、勇者になってからやたらと豪腕になった私の一撃を真正面から受け流してカウンターするくらい器用だ。
だけど、テオ君は何気に大抵のことは簡単に出来るイルマ君とは違って天才ではないということは言っておきたい。何故かテオ君に「あんたは天才か!」と言ったところ、若干怒ったがその顔に冗談を言っている雰囲気じゃなかったから毎日頑張っているのに天才呼ばわりされるのが嫌いなんだろう。多分本人が謙遜しているっていうのもあると思うけど。……それよりも私はあの時冗談で言ったんだけどなー。
まあテオ君が天才じゃないっていうのは戦っている私自身が身をもって理解している。
最初に私と模擬戦をした時はお互いに扱いも初心者でテオ君曰く「まだ剣術スキルが低い」らしく、ただの力押しや初心なフェイントの応酬だったけど、テオ君は戦いがある度に自分のスタイルを意識的に調整していって、何やら理論的にどんな動きだと動きに無駄がないとか力が無くても大丈夫だとかブツブツ呟いていている。その時のテオ君は目が少し虚ろになっていて少し怖いけど、それが済んだ後に戦うとさっきまで稚拙だった部分が若干ぎこちなく修正されていて、それを何度か繰り返すといつのまにか上手くなっている。具体的に言うと、私の突きは亜音速に少し近いレベルの速さなんだけど、それをテオ君は自分の剣をくるりと手首を中心に螺旋状に回転させて気づくと私の突きの方向がテオ君から大きく離れた所にある。というような感じだ。
何その手品。
「っあ、テオ君の鉄拳がとんだ。そして相手の2人が吹っ飛んだ。あっははは! あの残り2人の間抜け顔がやっべえ。っぶふ! ぷっくくくく。ツボ入った」
しかも正気にかえるとイルマ君が大爆笑してるし。
…確かにあれは笑えるよね。漫画みたいに目を丸くして顎が外れそうになってるんだもん。でもテオ君腕力ないはずなのになんであんなに正拳突きの時は威力が馬鹿みたいに高いんだろう。普通の拳骨はあまり痛くないのに。正拳突きだと絶対に石も割れるよね。テオ君。
あら? いつのまにか試合も終わったみたいだし、試合場にテオ君がいない。
私が疑問に思っていると、イルマがテオがこっちに来るのを発見したらしく、ニヤニヤ顔を貼り付けて手を振って出迎えていた。
「お疲れー。さすがテオ君。無傷で勝ち残ったね」
「あー、うん。まあ最後の一撃を除けばそうだね。ありがと」
「まあそれは私が助けたお陰でもあるんですけどね」
「……あなたは?」
今まで視界に入らなかったから気づかなかったが、見ると隣にスタイルがよくて水色の髪を後ろで1本に結んだ綺麗な子がいた。まあ目つきは少し鋭いけど笑っているからなんかいいとこのお嬢さんに見えるね。
なんか最近見たことがあるんだけどなー。どこだっけ?
「ああ、ごめん。紹介するの忘れてた。この人はメリッサ・ディルグランドさんっていって、さっきの試合で手を組んでたんだ」
「へー。そうだったんだ」
「ええ、よろしくお願いしますね。私のことはメリッサと呼んで下さい。それとテオ君の彼女ですわ」
「「え」」
………なぬ。
次回秋風の暴走!?
・・・すんません。冗談です。秋風さんはきっと自制できるはずです。




