48話~受験④~
テオにカメラ交代した途端に進行度が急に遅くなるという^^;
「おーう。お疲れさんイルマ。無双するって言った割にはあまり動かなかったね」
先ほどの試合から戻ってきたイルマに声を掛けるとイルマは眉を少し顰めた。
「うん。まあちょっと思い出しニヤニヤを抑えている内に寄ってきたのを適当に場外にしてたらいつのまにか終わったんだよね。それに魔力量はあってもコントロールが雑なのが多いからちょっと不満だったかな」
「へえ」
「あ。でも、あのやたらと派手な容姿をしたのは魔力量が俺レベルだからコントロールさえすれば良い修行相手になってくれるかも」
それでもあいつは訓練をするようなタイプには見えないけどね。とイルマは苦笑していた。
くそう、そんなイケメン風に笑うなよ。一応お前は顔はイケメンなんだから勘違いをする人がいつか出てくるかもしれないぞ? まあその性格で大分緩和されると思うが。
俺のそんな思想が顔に漏れ出ていたのか、秋風さんが恍惚とした表情で頬をつついてきた。何故だ。
「あの…秋風さん? 何で俺の頬をつついてるのかな? しかもそんな表情で」
「なんだかテオ君がイルマ君の顔を羨ましげに見てる気がしたけど、別に格好良い顔じゃなくてもいいと思うよ? それよりもテオ君にはこのマシュマロみたいなほっぺたを無くさないで欲しいな? これ凄い病みつきになるんだよ?」
ああ、そうなんですか。もう好きにつついちゃっていいよ……。
嬉々としてふにょふにょと俺のほっぺたをいじくり続ける秋風さん。
俺は抵抗することを諦め、脱力して背もたれに寄りかかった。
そしてイケメン風笑顔を取っ払いいつものニヤニヤ顔に戻ったイルマ。なんか腹立つ。
あいつだけ成長する兆しのようなものが見えてきやがって。
そんなこんなで3人でいつも通り楽しく過ごしているとBチームの試合が終了したようだった。そして次のCチームに出る受験生への呼びかけが聞こえてくる。
「あ、俺の出番がきたっぽいから行ってくる」
「頑張ってねテオ君。いじめられないようにね」
「テオも無双してくるのかい?」
2人が俺に対称的なことを言ってきた。イルマは普段通りの表情だが、秋風さんには若干不安の色が見て取れる。前から思っていたが、他人に関しては少し心配性な気があるな。しかし、そんな事には気にせずに手だけ上げて返事を返した。
「あ、テオ少し緊張してるなあ」
はなれていく俺の後方からこんな言葉が届いた気がした。
今俺は大きな壁に囲まれている。
「おやおやあ? こんな所にやってきて迷子なのかなあ?」
俺を囲む壁のうちの1つから舐め回すような響きをもった声がしてくる。生理的嫌悪感に反応し、右側の眉がピクリとつり上がる。
それを見た壁の連中がニタニタと笑い始めた。
「うんん? 黙っちゃって泣いちゃうのかなぼ・う・や? 子供は大人しくママのおっぱいでも吸ったらどうかなあ? ぎゃはは!!」
俺はなるべく嫌悪感を表に出さないためにこいつらと目を合わせないように俯いて、この感に触るような下品な笑い声をBGMに黙考していた。
何故試合場で5人の歳の割には体格のがっしりした男達に囲まれているのかというのは、正直よく分からない。なんとなく予想はつくが、見た目幼いガキの俺を脅して戦意を消失でもさせようというオチなのだろう。とりあえず、前世ではこのように絡まれることなど1度もなかったから少し新鮮だとだけ言っておく。
そもそも精神年齢的に俺の後輩にすら及ばないこいつらに何を言われても特に癪に障ることなんかない。ただ、何かを言われているくらいにしか感じない。
多分これは俺の元々の性格が堪忍袋の尾が非常に切れにくかったというのもあるんだろうな。
そしてこいつらは多分冒険者とか傭兵とかそういう乱暴な部類の仕事に将来は就くんだろうな。こんなやつが貴族とか商人だったら色々と終わっている気がする。もうちょっとそういった地位の人はマナーや観察眼を身につけているだろう。ついでにこいつらは頭も悪そうだから勝手に乱暴な職業に流れ就きそうだ。
更に5人で囲ったところも見るに、ありがちな1人だと上手く踏ん切りがつかないで何も出来ない人間だとかそういう人なんだろうな。そしてねちっこい。
……こういった人達と一緒に学院生活をしていたら精神的に異常をきたしそうだから、ここで早々に場外になってもらうとするか。
俺はそう決心して審判をしている先生のところへ他の受験生と同様に集合しにいった。
審判からルールの説明を聞いた後、試合場で適当な場所に20人の受験生が散らばった。
形は20人が自由に走り回ってもある程度余裕があるくらいには広い円形で、試合場とそれ以外では多少の段差がついている。この段差が境界線となっており、ここから落ちて、地面に触れてしまえば即不合格となるそうだ。
そうやってルールを頭の中で再確認しているとまだ試合開始の合図がなってきていないというのに、後ろからぽんぽんと肩を叩かれた。一体誰だろうかと後ろを振り向くと目つきが鋭く冷たい雰囲気を与えるような女子がいた。
そして俺が振り向くとその顔に微笑を浮かべ、その口を開いた。
「ねえ。ちょっとこの試合中私と手を組まない?」




